戻りし日常、希望の連鎖
「店長おはようございます」
「おっはよーっ、依頼なんかある?」
「おはよう。 エイミー君はその、今日も元気そうだね」
「なぁによその困ったちゃんを見るようなリアクションはぁ」
再審から2週間が過ぎ、私も日常もいつもの穏やかさを取り戻していた。
まだ手を付けてないとある謎が残ってるという点以外は……。
***
「本当にノエル君の無実を証明出来てよかった」
「そうね、モニちゃんに釣られてお姉さんも泣けてきちゃった」
「大げさ……ではないけどみんなありがとう。 そうだロウさん、1つ気になることがあって聞いてほしいんだけれど……」
食い気味に聞こうとするもロウさんは拒むというよりは気を遣う様子で勢いづいた私を「まぁ待て」と制止した。
「答えることは構わんがノエルはまだ自分が思ってる以上に身も心も疲弊してるはずだ。
まずは休息に努めよ、話の方はそれからでも遅くはないだろう?」
「彼の言う通りだ。 店はルーシー君とモニカ君で工夫して回すから君達は数日は休暇を取るといい」
「あ、じゃあ早速アーカイブで調べごと……」
セリガムさんの声らしきものについてなにかわかるかと思って行動しようとするもあっさりとエイミーに止められた。
「そういうのもナシ」
「うっ、ダメ?」
「ノエルは休むってことを知らなさすぎるのよ。
記憶や故郷の帰り方だけじゃなく、組織との件も含めて道のりは長いんだから、休むのも戦いよ?」
ここまで本当のことを言われると反論のしようもない。
時間は惜しいけど、確かにセリガムさんの件にしても気持ちの整理は完全にはついていない。
「それも、そうだね」
休む、かぁ……オブリヴの頃はともかく今の私には性に合わないなぁ。
***
……と少しばかりの休暇と明けの任務の日々が過ぎ今日も出勤したわけだけど……。
「確か新しいの何件か来てたな。 どれ、見繕ってっみよう」
「ではロウさん、待ってる間お話しいいですか?」
「そんなに改まってどうした」
「実は……」
セリガムさんの刑執行直後の出来事を話すと「そんなことが……」と驚きの様相を浮かべた。 その反応からしてロウさんに思い当たるフシはないみたい。
「心当たりもない。 私も一度盟主によって殺められはしたがすぐ意識が戻ったからな」
「組織が絡んでるかそうでないかとか?」
私とロウさんの疑問に答える様にエイミーが口を挟む。
「なんとも言えないわね。 ロウさんに関しちゃその時点でノエルと接触ない訳だし、セリガムさんはペンダントも絡んでるわけでしょ? オカルト的な要素が多すぎるわ」
「アーカイブにも形容できそうな情報なさそうだし」
「ノエルちゃん、今まで似た現象が起こったりはしなかった? 聞く限り想いが霊素に変換されて吸収されてる風にも聞こえるわ」
思いを霊素に、そういえばアーシェスで……。
「それだよルーシー、アーシェスにすぐ行こうっ」
私は自分でもわかるくらいに興奮しながらリーナさんの件を話した。
ルーシーはそれに対し納得した顔をするも、そのお願が通るかは別の話みたい。
「待ってノエルちゃん、ただ行くだけじゃ赤字になっちゃうわ」
「やっぱりそうなっちゃう?」
「移動してる間も依頼は溜まるわけだからね」
流石プロフェッショナルというかリアリズムというか。
確かに依頼捌けなきゃその日の実入りは0だからルーシーの言うことは正しい。
「だそうです店長、アーシェスに近い場所の案件あれば」
「それなら今のノエル君にちょうどよさそうなのが、ただ……」
「どうしました?」
「危険とかそういうんじゃなくて結構特殊な依頼なんだよ」
目を通してみるとそれはアーシェスからで『村復興につき、農地再開拓の助力者求む』と記されてあった。
そうだ、灰は降りやんだけど村の環境そのものは依然として……。
「ねぇルーシー」
「そうね、事件解決は始まりに過ぎない、助けたら助けっぱなしは私達の理に反するわ」
「んじゃ早速……って言っても助力となる人を探さないとねぇ」
数年もの間アーシェスの人々は経験が断絶されていた。 それ故天候や土壌に対する勘だって鈍ってるのは明らか。
それを元の状態まで導ける経験者はあの村にしかいない。
「それだったらロカム、ロンドさんに相談しようよっ」
こうして私達はアーシェスへ向かう前に転移でロカムへ跳ぶこととなった。
徒歩で近道にフォレジアの森? もうあそこはまっぴらですっ。




