最期の懺悔
「主文、九つの希望が1人、時操のセリガムは次期騎士団長就任の式典を妨害に留まらず、ノエル・イルセリアへ罪を着せた。
この罪は国家反逆として非常に重く、弁護の余地はないとされる。
判決、時操のセリガムを極刑とする」
平静を装うも動揺を隠しきれない私を見抜いたのかセリガムさんは声に出さずとも、その口の動きは確かにそう言っていた。
「それでいい」と。
今まさに連行される次の瞬間、周囲の動きが完全に止まった。
その原因に心当たりしかない私は正面へ問いを投げる。
「セリガムさん、これはいったい……」
「ごめん、最後に話しておきたかったんだ。
僕の本当の気持ちを」
「本当……の?」
彼の正体は九つの希望の1人、罪を着せたの私を強くするため。
ここまでも明かしておいて彼にはまだ隠してることがあるとでもいうの?
思わず身構えるも、それは組織の繋がりとはなんら関係のない彼個人の思いだった。
「君に背を向けた日「僕はもう疲れた」と言ったのを覚えてるかい? あれ、本心なんだ」
「え……?」
「実を言うとね、この街の便利屋を追い込んだのは僕だった。 盟主から希望を奪う支持を受けてね」
「あの事件、セリガムさんが?」
ルミナスシードを運んできたのがセリガムさんだったという事実に私は言葉を失った。
「自分達の希望のために誰かの希望を奪うことに僕はもう疲れたんだ。 彼らには君の方から謝っておいてよ」
セリガムさんの苦しみはこの一言で全て伝わった。
だからこそ、1人で抱えて1人で終わった気になってるその姿に私は苛立ちを隠せなかった。
「そんなの……謝るのなら自身の口で言ってくださいっ。
どうして、どうしてもっと私達を頼ってくれなかったんですかっ」
「それは無理だ、リズィが騒ぎを起こしてしまったから」
「だからって……セリガムさんはそれでよかったのっ?」
「仕方なかったんだ。サイラの事件をリズィが起こしてしまったからね」
「だからって、どうして……」
「穏便に協力を申し出たところで、君は警戒して決して首を縦に振らなかっただろう?」
セリガムさんは静かに、しかし確信に満ちた目で私を見つめた。
「けれど皮肉なものだ。あの事件のおかげで、白銀の解放者である君に気づくことができた。あとは、君に託す」
そう言いながらセリガムは後ろ手で指を鳴らす。同時に、彼の身体から霊素がこぼれ落ちては消えていく光景が映し出された。
「これは、時間逆行?」
自分自身に術をかけるということは、蓄えた知識をなかったことにするのと同じ。まさか……。
「これで僕は時操のセリガムではなく、ただの国家反逆者だ」
「待って、まだ話は終わってな……」
セリガムさんの立つ場へ身を乗り出すも、私の言葉は届かなかった。時間停止が解除されるのと同時に、彼は力なく微笑んだ。
「僕を捕らえてくれたのが君でよかったよ」
直後、クロノス・フリーズが解けると、二人の兵士が彼に掴みかかった。 連行される間際、私の方を向いた彼の口は声を出さずとも確かに言っていた。 「ありがとう」と。
駆け寄りたい衝動に駆られるも、ここは法廷、この状況下で彼に友好を示す素振りを見せたら私以外にも弁護してくれた人にも疑いの目がかかるに違いない。
私は、処刑室へ連れて行かれるセリガムさんをただ呆然と見送るしかなかった。
そして、陽が落ちた夜7時。刑執行を知らせる鐘が鳴り響いた。




