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リベレーター・元生贄と絶望から咲いた希望たち  作者: モッフン


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感情と公正の狭間で

「これより、式典妨害を行った真の犯人、時操のセリガムに対しての審議を始める、被告人前へ」


「……はい」


「先の件の被疑者、ノエル・イルセリアよ、前へ」


「はい……」


 裁判官の声にセリガムさんに続き私も壇上へ上がる瞬間、肩が震えるのが自分でもわかった。

 以前のことを思い出してじゃない、この後セリガムさんの身に起きる結末に対する自身の無力感から来る震えだ。


 周囲の人達が審判の行方を見守る中、審議開始を告げるための槌を叩く音が響く。


「主文、時操のセリガム。 貴殿はノエル・イルセリアに式典妨害の罪を着せた、間違いはないか?」


 裁判官の言葉にセリガムさんはコクリと頷きながら言葉を紡ぐ、そこには一切の虚偽を交えることなく。


「間違いありません。 この僕、時操のセリガムが白銀の解放者、ノエル・イルセリアに式典妨害の罪を被せたことに嘘偽りはありません」


「ノエル・イルセリアよ、それは真であるか?」


「……はい……」


 私は裁判官の問いに頷き、理性と感情の間に揺れながらも直線上に立つセリガムさんを指し示した。


 ***


 遡ること開廷3時間前、私達のもとにルーシーを始めリバーンのメンバー達が駆けつけた。

 ロクスさんとリゼットさんの言葉に私は力なく耳を傾ける。


「ノエルさん、聞いたぞ犯人を捕まえたって……これでようやく無実を証明できるな」


「当たり前さ、あたしらの恩人に罪着せるなんて罰当たりもいいとこ、然るべき判決が必要よね」


 彼らの言葉にエイミーが割って入った。

 まるで私を気遣うように。


「2人ともよしてあげて、ノエルとあの犯人の間は一言じゃ言い切れないほど複雑なものなの」


「アンタは?」


「あたしはノエルのマブ」


 エイミーの言葉を聞くとヒューイさんが納得したようにロクスさんリゼットさんを諭し、ティールさんがそれに賛同した。


「なら、僕達が間に入る余地はないな。

 彼女に任せよう」


「そだね、ノエルさんと親友なら心配いらないね」


「それもそうだな。 エイミーさんだっけか、ノエルさんの気も知らず悪かった」


「ううん、ノエルのこと思っての言葉ってのは伝わったわ、ありがとね。

 ルーシー、あと頼むわね」


 それだけ言い残すとエイミーはリバーンのメンバーが下がるのと入れ替わるようにルーシーが前へと出てきた。

 私に気をかけて優しく語りかけるも、この時の私にはなにも刺さらなかった。


「ノエルちゃん、気をしっかり」


「どうしっかりすればいいの? 式典の犯人はあの子を気にかけた優しい人で、やっぱり優しい人で1人で背負って犠牲になろうとしてて、でも私はなにもしてあげられない」


「それでもノエルちゃんは正しい選択をしてきたから罪が晴れてる、違う?」


 ルーシーの言葉に対し私は論理もなにもないことを言っていた。

 この時の私の言い分は思えば本当に支離滅裂だった。 それほど、セリガムさんに死が迫ってることに動揺をしていた。


「正しい選択……それなら、セリガムさんの減刑を、だってそれが正しいって私が思うから、いいでしょ? 正しい選択だも……」


 私が全てを言い終えるよりも速くルーシーの平手が飛んだ。

 それはこの時の私を目を覚ますには十分過ぎるものだった。


「私はセリガムという人と繋がりがないからあなたの気持ちはわかってあげられないけどこれだけは言っておきたい。

 感情に流されるようなことだけはしないで」


「流されてなんか……」


「今のあなたの正しさは、公正さを欠いた独りよがりなものよ。それは彼を救えないばかりか、あなた自身の立場や未来、そして支えてくれた人たちまで破壊してしまうかもしれない」


 ルーシーの言葉で私は正気が戻り、今までどれだけ危うい言動をしてるか思い知り恐ろしくなった。


「ルーシー、私……私そんなつもりじゃ……」


「辛いわよね。 それでもあなたは罪を晴らさないといけない。

 シェイナちゃんをうちの経理として迎えるんでしょ?」


 そうだ、もし早まって私に改めて国家反逆の判決が下りたらエイミー達まで共謀者になりかねない。


 そしたらハート・ユナイティスは瓦解、そんなことになったらフェイス君とシェイナちゃんはどこに行けばいい?


「ありがとうルーシー、頭冷えたよ。

 もうこれは私1人の問題じゃなくなってるんだね」


「そうよ、今のあなたにはイリスさんを始め、あらゆる方の想いが乗っかってる。 それを無下にしないで」


「行ってくるよ」


 ***


 決意して上げた手は頭では理解できても心が追いつかず尚も震えている。

 私がなにを言ったところでセリガムさんの罪は覆らない。 


 それなら、彼の覚悟を受け入れよう。

 私は、セリガムさんへ人差し指を向けながら淡々と言い切った。


「間違いありません。 私を陥れたのは、そこに立つ時操のセリガムです」


 静まり返る法廷で、想いと裏腹に出た言葉に私は自身でも言い知れぬざわめきに苛まれた。


 どのくらいの静寂が続いたか、裁判官の持つ槌がついに降ろされた。

 そう、セリガムさんへ判決が下る。

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