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休暇・手がかり調べに知の街へ

 事務所に帰って早速報告を告げると店長は『まさか』といった様子で驚きを露わにしていた。


「話は概ねわかった。 まさか村人どころか村の霊素まで抜かれていたとはっ」


 この出来事は幸か不幸か村人への危機感を一層強め、より強固で複雑な術式の結界が張られることになった。

 本来なら事件が解決して一安心と言いたいが、事件の首謀者に逃げられ、そのことを懸念しながらルーシーが考察を始める。


「あのレビィって男、『あのお方と同胞』って言葉からして間違いなく『九つの希望』の1人ね」


 なんの目的で人々を衰弱させてたかまではわかりかねるけど 」


「ヤツの背景になにかがあるってことも気になるんだけどさ、あたしはそれ以上に依頼書の送り主が気になるわ」


「そうだよ。 なんで彼はそんな回りくどいやり方をわざわざしたの? まるで素性を隠したがってるみたい」


 私達の疑問に対してルーシーは人差し指と中指を立て2つの可能性を提示した。


「レビィやその裏にいるものに狙われてる、それかその組織と実は繋がっていて便利屋を消すため誘導した……どっちとも取れるわね」


「ル、ルーシーそんなっ……村人たちの憂いに応えてくれたのに?」


「だとしても、それが身の潔白を証明するものとは限らないわ。 事実、依頼書が届くまでの日にちから逆算すればレビィと共謀してたっていうことも十二分に有り得る話よ」


「た、確かにそうだけど……」


 張りつめた空気の中「まぁまぁ」と言いながら店長が両手を叩いた。


「そのあたりの話はおいおいとして、みんな疲れてはいないか? ちょうど残った依頼もサイラと聖都の便利屋に持ってかれてな、ここはしばし休暇ということでどうだろう」


「休暇かぁ、どれくらいぶりかしらね。 ルーディにでも行こうかな。 ノエルとルーシーどうする? 一緒に行こうよ」


「ごめんねエイミーちゃん、私は残るわ」 


 エイミーの誘いを遠慮しつつルーシーは踵を返しながら事務所内の書類を取った。


「いつも誰かさんが依頼を安請け合いしちゃうからそろそろちゃんと依頼料のレート決めたいなと思ってね」


「ってことは俺も残るの?」


「当り前じゃない。 ほら、ミーティング開始っ」


 ミーティングかぁ、お説教もついてくるんだろうなぁ、店長ご愁傷様。


「しょうがない。 んじゃノエル、あたしら2人で行こうか?」


 せっかくの休暇でエイミーもうれしそうだけど、それはいつでもできるから。 今私がしたいことは……。


「ごめん、私ノフィスに行ってくるよ」


******


 久しぶりに休暇を利用し、知識の街『ノフィス』へ向かうことにした。

 ゆっくり骨休めとかも考えたけど、この休暇を逃したら個人的な時間で手がかりを探す暇は当分なさそう。


「それにしても休暇もらえた日が快晴だなんて日頃の行いがいい証拠かしら」


 屈託なくはしゃぐエイミーのお陰で疲れずに済みそう。 ピオスから3時間の距離を1人で歩くのはさすがにこたえる。


「そうだね。 でもいいの? せっかくの休みなのに私に付き合うなんて」


「5年の付き合いで今更なに言ってるの。  それに昨日の聖堂の件もだけどノエルってばあたしがいないとすぐ無茶するんだから放っておけないわよ」


 私は小動物ですか? まぁ聖堂の件もあるから否定のしようもない。


「あれは自分でも無茶したなって思う。 とんでもない破壊力だったもんね。 正直な話、レヴィの拳が当たる瞬間『あ、死んだ』って思ったよ」


 笑い話っぽく話したがエイミーは珍しく眉を寄せていた。


「そこなのよねぇ。 なんであの時ノエルはあいつの攻撃無事だったのかしら」


「やっぱり、気になるよね。 私が受けた時はとても痛いゲンコツって感じでしかなかったんだよね。 もしかしてハッタリ?」


「それが本当ならあんなに狼狽えてない。 それに、あらゆる物質が粉砕されるのに生身の人間であるノエルが無傷だなんて明らかに矛盾してるわ」


 どう考えてもあり得ない状況、心当たりといえるものは1つしか思い浮かばない。


「やっぱりこれが鍵なのかな……ダメ元で外してみるね」


 ペンダントが私の霊素を底上げしてるんだとしたら外せば……。


「やっぱ無理そう?」


「うーん、やっぱ外れないや」


「なんにしてもそれがノエルの力の根源なのは間違いないから一度調べる必要があるわね。 試しに霊素を分けるイメージしながら手握ってみて」


 1割未満で完全に回復するエイミーに全霊素はキツいだろうからせめて4割程度で。


「どうエイミー、結構霊素多そう?」


「これ、かなりの量……くぁっ!」


 次の瞬間エイミーは急に脱力して地面に両手を付いた。 たった4割、それだけでもうこんなになるのっ?


「だっ、大丈夫っ?」


「大したことない、ただ……」


 私でもわかるような痩せ我慢を口にしながら膝の土を払い落とすとエイミーは深い溜息を吐いた。


「これで本当に4割なの? 常人の2、30人分の霊素を感じるんだけどっ」


「に、2、30人!?」


 エイミーが口にした数量に思わず大声を上げてしまった。

 聖都に名を残す聖騎士でさえ人一人が有せる霊素の量は良くて6,7人分って話なのに?


「4割で30人相当ってことは10割で80人分相当の霊素がこのペンダントに備わってるってことよね。 1割未満で間に合うわけだわ」


 この装飾品に霊素が蓄えられてるということは解った。 しかし新たな謎が……。


「ペンダントの霊素、枯渇しないのかな?」


 もし生贄の人から抜き取った思いや記憶を霊素に変換して蓄えてるのならこの装備の効力もいつかは、とか。 

 私の疑問を余所にエイミーはあっけらかんとしていた。


「使っても減らないってことは無尽蔵ってことだろうから、細かいことは気にしなくていいんじゃない?」


「それもそっか、でもそれだけこれが頼りになるのならこの先も心強いよね。


「でもさ、記憶の一部が欠けてるかと思えば膨大な霊素を使えたり、私ってほんと何者なんだろうね……」


 聖堂でのあの言葉が耳から離れない。 反逆……いつ、誰に私はそれをしたというのだろうか……。

 つい視線を落としたとこを見透かされエイミーから心配の声がかかる。


「アイツの言ったこと、気にしてるの?」


「してないといったらウソになるかな。 7年前、私は塔でなにかをしでかしてレビィ、いや……『あのお方』と呼ばれる思想の者を生み出しちゃったのかもしれないし」


 妙な罪悪感に襲われ視線を落とすも、エイミーの空気を読まない言葉が飛んできた。


「断言する、ありえないわね」


「なんでそう言い切れるの?」


「記憶が一部欠けても本質となる人格は変わらないわけでしょ?」


「まぁそうだけど……」


 確かにそうだ。 私は塔の出来事を覚えてない以外はなんら変化はない。


「それにノエルって……」


「私が、どうしたの?」


「お人好しだからいけないことしでかすほどの悪事できなそう……というより悪事してもおっちょこちょいだからなにも起こらなそう」


「あーーーーっ、ちょっとエイミーそれどういう意味? バカにした? 今バカにしたでしょ?」


「してないっ。 バカになんてしてないからねぇ信じて? ノエルぅ」


 エイミーは誤魔化すように顔を作ってるけどバレバレ、こうなったらもう遅い。


「絶ーーっ対バカにしたっ、待てーー」


「わぁーーっ、ストップ。 加速の術は反則だってーっ」

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