「彼の名とセリガムの真意」
港に着くと聖都からの船が停泊していた。
後で聞いた話だけど、どうやらセリガムさんを捕らえ次第いつでも私達が帰ってこれるようにイリスさんと市長さんが騎士団に掛け合ってくれたらしい。
途中セリガムさんは目を覚ますが私も彼も口を聞ことはなかった。
剣を交えたからとかじゃない、大事なことは然るべき状況がいいと思ったから。
そう感じてたのは私だけではないはず。
「では、このまま聖都付近の港まで直行する。
セリガムは私に任せて3人は休ん……」
騎士団からの派遣だけあってウィルさんが監視に回るのが適任、それを承知の上で遮るように私は前に出た
「私がやります、当事者ですので」
「なんとなくだが理由はわかった。
エイミーは、どうする?」
「あたしは……ノエルその、後でね」
「うん、ありがと」
独房の扉が閉まると船が動き出すと私とセリガムさんはほぼ同時に「あのっ」と言い、譲ってもらう形で私が先に問いを投げた。
聖都に着いたら彼には厳しい判決が待ってるだろうから、今の内に聞いておきたい。
「どうして、私を強くしようなんて思ったんですか?」
「それはね、『彼』が君に組織を打倒できる可能性を見出していたから、と言っておこうかな」
「教えてください」
ノフィスの彼、あの人は私の中になにを見たというの?
食い下がるように聞くとセリガムさんは「そうだね」と言いながら横向きの身体を仰向けに変えた
「彼も、組織を倒そうと動いてるんだ」
「……彼、言ってました。 「僕は自身の罪を償うため」って。 それが彼の償いですか?」
「そこまではわからないな。 ただ、君が解放者と知られるようになって間もなく彼が僕にお願いしてきたんだ。
あなたのことを組織から引き離してほしいって」
「けどそうしたところで私は止まりません」
私の言葉にセリガムさんは「だろうね」それを見越してたかのようにハハッと渇いた笑いを浮かべるも、その表情はすぐに真剣そのものへと戻った。
「彼は君の諦めの悪さを知っていたのかな……もし式典の件以降も組織を追いそうなら君が強くなるための壁になるよう頼まれたんだ」
「それは、どうして?」
セリガムさんはまるでなにかを思い出すかのように瞬きをしてから私の問いに答える。
「彼は「もう自分は動けなくなるかもしれない」と、きっと君に託したかったのかもね。
ナインホープという誤った希望を壊すことを」
「彼は何者で、どこにいますか?」
ノフィスの時はなにも知らなかったけど少しずつ知りつつある今、もう一度会ってちゃんと話したい。
可能性を願って問いかけながら私は息を呑んだ。
「きっと会うことは難しい、彼は遠いところに行ってしまったから。
けど、彼の名だけは知ってる」
セリガムさんの言葉に大きく身を乗り出した。
ノフィスで出会った青年が全てを任せようとしてるのはノエル・イルセリアなのかそれともそれとも白銀の解放者なのか。
彼の真意と名前を、私は知りたい
「っ! 教えてっ」
思わず詰め寄るような問いを投げるとセリガムさんは決心したように深く息を吸い込んで答えた。
「リュカ、リュカ・ヴェルムン。 それが彼の、君を想う人の名だ」




