鍛錬開始っ
「……ハァッ! ……どうでしょうか?」
「全くなってないな、もっと腹から咆哮を起こすかの如くだっ」
オルフィナさんに最寄りの街へ転送してもらった私達はあの後一晩休み、その後イザヤの里を目指して進み始めて2日、ロウさんによる鍛錬は想像してたよりもだいぶキツいものだった。
「ちょっとロウさん、いくら急ごしらえだからってスパルタ過ぎよ」
「大丈夫だよエイミー、ありがとね」
オルフィナさんの想いを背負って……そうでないにしても組織の怪しい画策は止めるにはレビィやリズィ程度軽くひねれるくらいの力をつけないと……そのためにもこんなことでヘバッてられない。
「しかし、楽なものではなさそうだがよくロウ殿の鍛錬に食らいついてこれるな」
「ノエルってば普段のおしとやかさから想像できないほどの負けず嫌いなのよね
お客さんから差し入れのプリンが余るとモニカとだって本気で取り合うくらいだから」
もぉ、エイミーってばこの状況で余計なこと言わないでよぉ。 食べ物関係の話は食いしん坊認定食らうんだからねぇ?
「霊波がたるんでるぞ、集中しろっ」
気を引き締めなきゃ、これをものにできればもっと多くの人を守れる。 そのためにも……。
「集中ですよね。 ハァ…………とりゃあぁーっ!」
私が掌底から放った霊素は目の前の岩石を半分は優に抉り取った。
ウソでしよ? これが……これが私の底力なの?
「やりましたっ。 霊素を限界まで撃つとこうなるんですね……ってロウさん?」
はしゃぐ私とは対照的にロウさんは「うぅむ」と顎に手を添えて難しい顔をしていた。
「喜んでいるところですまないが、まだ総量の半分しか出し切れていないな」
「そ、そんなぁ」
「限界の量で放った一撃ならその岩は爆散するだろう」
な、そんなことが……けどアーシェスで10数メートルの高さから私を担いだまま着地できた辺りあながちウソじゃないのかも……。
「そういやあたし達まだロウさんの本気見たことないわね。 ちょどいい機会だから見せてよ」
「そうしてやりたいところだが、今それをやったら私とノエルは24時間使い物にならなくなるな」
「げ、マジ?」
「マジだ。 万一そうなった状況で魔物や組織の者に出くわしたらエイミーとウィル氏でどうにかすることになるぞ?」
ロウさんが釘を刺すとエイミーは「それはキツイわね」と引き気味な笑顔で後ずさった。
事実この2日間、遭遇する魔物は霊素を駆使しないと対応の難しい魔物ばかりだった。
いくらも霊素が残ってない状態の私やロウさんじゃ相手取ることをしようものなら返り討ちは必至、それどころかエイミーとウィルさんも揃って全滅にもなりかねない。
「根源からの霊素解放は慎重に、ですね」
「そういうことだ。 ところでノエル」
「なんです?」
不意に呼びかけてくるロウさんに返事をするとこれまで気づくことのなかったことが判明したことを告げられた。
「君の霊波なんだが……放とうとする一瞬だけ流れが一定ではなくなっている」
「それって、乱れているということですよね? どうして……」
ロウさんから指摘されるまで霊波が安定してないなんて考えたこともなかった。
これまでだって組織の者と対峙した時も実力差以外で不安な要素はなかった。
「考えられる原因としてはそれ、だろうな」
「ペンダントが不安定の要因?」
ロウさんが私の首元を指し示すとエイミーが納得いかないといった表情を露わにした。
「ちょっと待って、それならサイラの解呪は力技でやってのけたってこと?」
「そうだ。 これまでノエルはペンダントの霊素に頼りながら戦っていたのだからな」
「はぇ~……「すごく力んだ」っての本当だったのね」
「確かにノエルの霊素の使い方はフィオラ達のそれとは違う。
そうだな、繊細なコントロールというよりは大味な扱い方といった方がいいか」
雑ということですねはい、まぁウィルさんの言葉には思い当たる節しかない。
よくよく思い返すとこれまでは霊素を制御するというよりはペンダントの中の総量をぶつけるって感じだったからロウさんのいう『奥の手』はそれだけ高度な技術が必要なのかも。
「それなら早速教えて下さい、霊波のコントロールを」
「いや、今日はやめにしよう」
「そ、そんなっ」
「さっきので根源を半分消費してしまったからな。 明日万全の状態で挑んだ方がいい」
正論過ぎて返す言葉もない。 しかし、明日休んだとしてロウさんの言ってる『10日』まで残り1週間……奥の手の習得、間に合うかな?
果たしてノエルはロウの宣言した『10日』で奥の手を習得できるでしょうか?
見守りください\(^o^)/




