森に棲む毒蛇・近道は遠回り?
「エイミー、ロカムまであとどれくらいで着きそう?」
「厄介な魔物と出くわさなければあと40分で着くわ。 」
あの後どうにかロカムへ急ぐため私達は今とても危険な森を近道として突き進んでいる、毒蛇の出る危険な森だ。
***
「どうにか落盤歩いて進むの、無理かな?」
「無謀過ぎるわ。 崩れた足場を走って進むなんてそれだけでもバランスを崩してケガする危険性があるってのにもし魔物まで現れたら」
「けどそれじゃ村のみんなが……」
どうにかしたい、その気持ちは同じみたいでエイミーは苦肉の策と言わんばかりに唇を噛みしめながら分かれ道の反対側を指さした。
「気は進まないけど、さっきの分かれ道に進むしかないわね」
「行くんだね、フォレジアの森……」
魔物が棲みつき今や聖都指定危険区域に認定されてる危険な森、そこに踏み入ることは死を意味する。 たとえそうだとしても……。
「下手したらあたしもノエルも今日が命日かもだけどそれでも、腹括れそう?」
「聞く必要ある? 助けられる可能性があるならそこに賭けるだけ」
「決まりね。 それじゃ行きましょ」
私達は覚悟を決め鬱蒼とした茂みの奥へ足を進めた。
国の兵はもちろん、騎士団も避けると言われるほどの危険が潜む森に。
***
「ここって、大蛇が出るんだよね?」
「噂では、けど騎士団からもハンターからも実体験としてはそんな話聞いたことないわね」
大蛇は10メートルという噂もあれば20メートルという噂まで幅が広い。
けど街の人はともかくエイミーやルーシーからも実際の目撃談は聞いたことがない。 なにごともなければいいけど……。
「もう2時間は出てないから大丈夫じゃないかな」
村人全員が同時に期間の長い倦怠感にかかるなんて普通じゃない。 この事件間違いなく何者かの手が加わってる。
「それにしてもこの一件、まさか九つの希望とか絡んでないでしょうね?」
「それってここ近年世間を騒がせてるあの?」
「えぇ、人殺しこそはしなくてもよくわからない騒ぎを起こしてるっていうもっぱらの噂が立つくらいだから用心に越したことはないわよ」
「そうだね、急ご……えっ?」
茂みになにかが、影の形状からして3メートル幅の蛇、大きいっ、このままじゃエイミーがっ。
「どしたのよノエル」
「危ないっ」
噛まれたら毒が回り死は避けられないことを直感で感じた私は思わずエイミーを突き飛ばしてしまった。
「ごめん、なんとなく危険な気配がしたから……」
「平気、むしろ助かったわ。っていうかなんでヴェノムヴァイパーがこんなとこにいんのよっ?」
「『こんなとこ』だからいるんじゃないかな? この森の生物って元々街道が森だった頃から棲みついてたらしいし」
思わぬ場所で思わぬ魔物に出くわしちゃったけど、武器構えた盗賊とかに比べたらこの程度は問題じゃないかな。
「面倒だけどしょうがないわね。今から引き返すにも時間もないし、サクッと片付けるわよ」
「連携だね……ってわわっ、ちょっとなにしてんのっ? 危ないんだけどっ」
剣を構えるもあろうことかエイミーは毒蛇が私の方向へ誘導するように矢を撃ちこみまくってきた。
顔が私の方を向くと同時にとぐろを巻きながら飛びかってきた。
「ごめんって、そいつ炎で真っ二つにしないと死なないからあたしじゃ誘導くらいしかできないんのよ」
それなら仕方ないか。 背後に回って熱素を付随した刃を一気に叩き込めば……けどこれあまり使いたくないんだよなぁ。
「熱素……熱っ」
よし、綺麗に真っ二つに斬れた。 単に胴体から頭落としただけだとこの手のものは頭だけで噛み付いてくるからね。 やっぱ毒イズ、デンジャラス。
「おぉ、これはかなり派手に焼き斬ったね。さすが霊剣士ノエル」
「エイミー、おだててもなんも出ないからね……あ、ゲンコは出るか」
「だからごめんってば。 いくらあたしの弓術が正確でもあの厚さの蛇じゃ心臓まで到達しないしあれを仕留められるのはノエルだけだったから頼りにしてたんだってばぁ」
まぁ、そういうことなら仕方ないか。 それにしても……。
「誰もここを通らない理由、改めてわかった気がするよ」
「えぇ、たとえ時間がかかってもロカムのみんなが街道を選ぶ理由がこれよ」
あちこちに街や村ができると元々獣道の場所を巣としていた魔物達は住処を失い、当然手付かずの森林に集まって棲みつく。
その場所には大きな生態系ができあがる、そこに私達人間が踏み入る余地はない。
「だからみんなここを避けるんだ。 急ごう、暗くなったらもっと魔物が増える」
「そうね、まだ魔物の気配はそこまで多くないから今の内に森を抜けましょ」
それからしばらく走り続けて見慣れた果物の樹が見えた。
「あれは、ロカムの? 近いよっ」
この距離なら15分くらいあれば到着する。
もう村までは目と鼻の先、長かったぁ……なんだろ、村は近いのに変な感覚が……。
嫌な予感がして立ち止まると背後に異様な生暖かさを感じる。
「あのさエイミー、一応効くけど、後ろになんかいるよね?」
「はは、奇遇ね。あたしもそれ言おうとしてたとこよ」
振り返った先には大きい蛇、10メートルは優に超えてそう。
眼前には大きい蛇、背後数キロにはロカム。
進むことも下がることもできないこの状況、さてどうする?




