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リベレーター・元生贄と絶望から咲いた希望たち  作者: モッフン


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暴走する変異種・駆け抜ける一太刀

「来るわよっ。 前方にルガン3頭後方ボア―2頭、ルガンはやっぱり昨日見た変異種ね。 ボア―は……」


 エイミーは魔物の情報を遠目で分析するも、ボア―の特徴を掴みかねていた。


「もしかしてあれだけ通常の個体なの?」


「いや、変異種と行動を共にしてる以上それはないと思う。 ただなんて言うか、見当たらないのよ。


 変異種と決定づけるだけのものが」


 見当たらない……理解できない分なおさら脅威を感じる。 接近して確かめてみるか。


「水素分けるからなにかあったら躊躇なく撃って」


「え、まさかあの群れに突っ込むの? ちょっとノエルっ?」


 前方のルガン3頭が後方のボア―を護る形で陣を組んでるのが気にかかる、力でならボア―の方が上なのにこれはいったい……。


「あれやるか。 寒いから本当はやりたくないんだよなぁ」


 両手に凍素を発生させた状態で反対の手首を掴む態勢のままギリギリまで引きつける、その後ルガンが一瞬下がったのと同時に後方から飛び出してきた2頭ボア―が飛び出してきて私は牙獣に囲まれる状態となった。


「あぁもうっ、言わんこっちゃない」


「大丈夫、勝算あるから」


 輪の中で両手を地に付けると体内で凝縮させた冷気が一気に上昇を始めると共に魔物たちは完全に凍り付いた。


「うぅぅぅ、寒ゔうぅぅーー」


 やむを得ないとはいえこれは地獄だ。 いくら夏場とはいえさすがにエイミーも心配してる、冬じゃなくてよかったよ。


「ちょっ、大丈夫っ?」




「平気、それより熱素分けるから私が紫電放った後に撃ち込んで」


 今の内に地面の形状を変化させる。 きっと着弾と同時に爆風に乗って石とかいろいろ飛んできそうだから対処しなきゃ。


「ちょっとノエル、なにそれ?」


「盾を作るっ、レビィの時ほどじゃないにしても結構な衝撃だと思う」


「ちょっと、衝撃ってなんのこと……」


 とエイミーが次の言葉を紡ぐ頃には既に矢は放たれていた。


 すかさず地面をせり上げた直後、物凄い爆風が巻き起こり、牙獣はもちろん私達諸共5メートルは吹き飛ばされた。


「ちょっと、ノエル―っ?」


「あはは、やりすぎちゃったね。 けどあれだけの威力なら」 


 そう安堵したのと同時だった。


「ノエルっ! 危ないっ」


 煙の中から1頭ずつの牙獣が眼前に迫っていた。


 エイミーを突き飛ばし安全を確保しながらルガンの爪を剣で受けるもそれが決定的なあだとなった。


「どうしよ、刃が折れちゃった」


 最悪とも言える報告にエイミーは


「見りゃわかるわよ。 あれできないの? レビィにぶち込んだやつ」


「ちょっときついかも、あの爆破で頑丈で剣まで折ったってなるとレビィの時の倍の霊素を練ることになる」


「というと?」


 その考えはあったけど、あれはそう易々と実行できるものじゃない。


 霊素を体術に転用する場合、消費する量に比例して身体にかかる負荷が比例する。 それは当然筋力と体力がある程多く使うことができる、つまり……。


「私の身が持たないってことっ」


「ど、どうするんよー!?」


 こうなったら術だけでしのぐしかない。


「エイミー、弓構えて」


「雷素での爆破は効かないんじゃっ」


「鋼素を付随してみる。 あのやり方ならっ」


「あのやり方……そうかっ」


 私達と魔物の間合いは0距離。 けどそれでいい、あれが変異種ならコアがあるはず。


「私が時間を稼ぐから準備しといて」


「待って、術だけでやり過ごすつもり? 無茶よ」


 エイミーの言う通りだ。 ペンダントは無限に近い霊素があるためいくらでも術を撃てるが大きな欠点がある。


「でもやるしかないよ。 ここでなにもしなかったら私達も街も無事じゃ済まない……頼んだよ」


 そのまま私は凍素を宿し前方に出て両手をかざす。


「お願、止まってっ」


 詠唱と同時に牙獣は足から徐々に氷ってやがてその動きを止めた。 そして私はさっきと同じように雷素を放つと距離を取りながら紅い霊素を練る。


「お願い、効いてっ」


 次の瞬間爆破が起こるもそれはいつになく弱弱しく、その威力は威嚇程度にしかならないものでむしろ彼らの怒りを買った。


「無茶よノエル、リチャージなしでなんてっ」


 そう。 英霊術は連続して撃つごとに威力が弱まり再び最大限の威力を出すには時間を置かなくてはならない。 


 これが危険な愚策なのは百も承知だ。 けど、それでも退けないっ。 


「近くまで来たら打ち上げる、そしたらお願い」


 憤慨しながら近づいて来る魔物をギリギリまで引きつける。


 一瞬でも判断が遅れたらあの牙に、どう動けばと判断しかねていたその時だった。


「ボケっとすんなっ、死にてぇのかっ」


「その声、まさかっ」


 エイミーがその声に気付くと深紅の髪をした男性は強い踏み込みの後、身の丈ほどの剣をルガンとボア―の腹を同時に斬り割いた。


「ヴェ、ヴェルクさんっ?」


 どうしてここが……そうか、さっき打ち上げた光。


「話は後で聞く、早くトドメをっ」


「はいっ、いくよエイミーっ」


「いつでもっ」


 露わになった心部に狙いが定まるように地面をせり上げるとエイミーの放った矢は2つの心臓を通り越し、コアを正確に打ち貫いた。 


 直後、紫色に怪しく光るコアはまるでガラスが割れるかのように砕け散り、魔物は力なく倒れた。


 今度こそ倒せたか警戒しつつ様子を見ていたが、彼は戸惑う様子も足を進めた。


「ちょっ、不用心過ぎよっ」


「大丈夫だ、もう息の根は止まってる」


 制止しようとするエイミーを気に留めずにヴェルクさんは足を進める。


 そして横たわる牙獣の前へ進み、触れようとしたところでやはり消滅した。


「やっぱこいつもか……」


 今「こいつも」って? ヴェルクさんの言葉が気になり私は前へ歩み寄った。


「あの、この魔物についてなんですけど……」


 話を切り出そうとするも、途中で遮るようにヴェルクさんは手をかざした。


「まぁ待て、お前たちなりに聞きたいこともあるんだろうがまずこっちの質問に答えてもらおうか」


 あちゃぁ、これ完全にお小言言われる流れだ。 ルーシーの説教とは違う意味で嫌だなぁ。

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