本気の詠零術
雪原へ飛び出した私達はできるだけ街への被害を遠ざけるためこちらから魔物達へ接近することにした。
本来なら私とエイミーは指示に従い連携することになるけどサイラの件の渦中にいたことからか、ルーシーの提案で私が2人に指示を出すこととなった。
「ノエル、とりあえず距離を詰めるのはいいとしてその後はどうするの?」
「1つ考えがあるんだけどさ、エイミー弓構えながら最前線に立って」
私のそんな提案に対しエイミーは思いっきり「はっ!?」と意義を込めた表情を浮かべた。
「ちょっと正気っ? あたしの弓術が後方支援なの知ってるでしょっ?」
「わかってる。 けど、今だけはエイミーが前に出るのが大事なんだよ」
私の意図が伝わったのか、エイミーは「なるほどね」と笑みを浮かべ、走りながら弓剣に矢を装填した。
「なにか考えがあるってことよね、だったらいっちょ乗っかってやろうじゃないのっ。 んで、どうすりゃいい?」
「矢に炎を付随したら氷の球体を目の前に出す。 そしたら思い切りそれを撃ち抜いちゃって」
「撃ち抜くって、あたしは火でターゲットが氷なら溶けちゃうんじゃ……」
「それが目的だよ」
「それなら遠慮要らないわね。 んじゃあとよろしくーっ」
エイミーが先頭を切って先へ行くのを見届けつつ私は次の動きに考えを巡らす。
眼前の1頭1頭全てが依然交戦した大蛇やさっきのブルガスと同等の変異種ならルーシーの座標転移をフルに活用しないと勝機はない。
「ルーシー、エイミーが矢を放って少ししたらに私と位置を入れ替えて」
「あの大群に1人で突っ込むの? 無茶よっ」
「大丈夫、今の私には詠零術があるから」
断言する私にルーシーは「もぉ」と呆れというより心配でならないといった表情を浮かべている。
無理もない、本気の詠零術はセリガムさん以外誰も見ていないのだから。
「危なくなったらすぐ合図送りなさいね?」
「気持ちだけ受け取っておくよ」
ルーシーの世話話が終わるのと同じく大勢の魔物が迫る中、私はエイミーの目の前に青い球体を生成して号令を叫ぶ。
「今だよ、撃ち抜いてっ」
「任せときなさい、そりゃあぁぁぁっ!」
射抜いた氷塊は瞬く間に融解を始め、集団のちょうど真ん中の位置に来たところで大爆発を引き起こした。 実はこっそり雷素を練り込んでおいた。
私がエイミーのいた場所に立ってる時点で魔物という魔物は混乱に陥ってる動作をしていた。 牽制としては充分、次はこっちから仕掛ける。
冷静さを取り戻したフロストグリズとグランドブルガス、その他無数の変異種が一気に私に狙いを絞り走り向かってきた。
「いけない、魔物たちかなり興奮してる。 逃げてノエルッ」
「今転移かけるわ。 それまでどうにか……」
「平気だよ、今の私にはこれがあるから」
そう言いながら振り返ると2人はまるで異形なものを見るような眼をしていた。
そっか、いざ自分でやってみるとこういう感覚かぁ。
記憶頼りの真似事だけどやってみますか。
そして私は霊素が足元から放射状へ広がる感覚を意識しつつ神経を研ぎ澄ませた。




