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リベレーター・元生贄と絶望から咲いた希望たち  作者: モッフン


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任務の達成、されど……

「事情はわかった。 色々と大変だったな」


 解放者としてとかそういうことはどうだっていい、ただ私を頼りにしてくれる人の想いに応えられなかったことが申し訳なかった。

 調査という任務を達成してもこれじゃ……。


「アゼルさん達やヴェルクさんの故郷、取り戻せませんでした……ごめんなさい」


 非難されても仕方がない……そんな想いで頭を下げるもかかってきたのは意外な言葉だった。


「謝るのはなしだ、ノエルさんはよくやってくれた」


 アゼルさんに続きラウムさんとシェスカさんからフォローの言葉がかかる。


「信徒は切実だった、人の心を持つ者ならあの状況を押し通すことはできるはずもない」


「割と軽薄なアタシでもさ、あんな涙見たらさすがに押し通せないよ」


 みんなが冷静な中、エイミーだけが絵に描いたように怒り心頭だった。


「リズィのやつ、信徒のみんなに余計なこと吹き込んでっ」


 怒り狂うエイミーにヴェルクさんは即座に訂正を入れる。


「いや、ヤツがみんなを騙してる様子はなかった。 それどころか信徒の境遇を憂いてるふしすらあった」


「じゃあなに? 信徒はリズィを純粋に慕ってるってことなの?」


「そう見て間違いねぇな」


「悪意がない分タチ悪いわね」


 エイミーの言う通りだ。 この間の野党みたいに明確な悪意なら躊躇なく詠零術や剣を駆使して無力化を図れるけどただ安息を渇望する人に手を出すなんてことは……できない。


 事務所が神妙な空気に包まれる中、ルーシーが沈黙を破る。


「ヴェルク達はこの後どうするの?」


「今回はサイラへ戻る。 俺の雪辱戦は一度幕引きだ。 こりゃ帰ったらアイザックのじいさんからどやされるな」


「まったくだよ、ヴェルクったらあたしとフィオラが止めても構わず行っちゃうんだもん」


 セレスさんから文句を言われながらもヴェルクさんは私に向き直った。


「ノエル、今回の撤退は負けじゃねぇ。 最後に取り返せりゃそいつはただの過程に成り下がる……後は任せたぞ」


「はい、アスヴェインは必ず取り戻してみせます、必ず」


 誓いを立てるように返事をし、ヴェルクさん達を見送ってから私はアゼルさんに尋ねる。


「この後はどうされますか?」


「今日は遅いから明日にでもノーザンレイスへ帰ろうと思う」


「それでしたら護衛、させてください」


 私の申し建てが意外だったのか、ラウムさんがキョトンとした様子で返事をする。


「いいのか? 追加の報酬は払えないぞ?」


「私が好きでやることだから大丈夫です。

 故郷の件もあったので、これくらいさせてください。 店長、いいですよね?」


「やれやれ、今日まで入ってきたスタッフで君以上に俺に似てるお人好しさんはいないな」


「店長……ってことは」


 私の言葉に店長は溜息を吐きつつもなぜだかどこか嬉しそうな顔を浮かべた。


「行ってきなさい。 彼等はあくまで調査隊、安全に国に送り届けるまでが任務だ。」


「っ! ありがとうございますっ。 エイミー、ロウさん明日も引き続き……」


 2人にそう声をかけようとするも、食い気味にルーシーが私の言葉を遮る。

 ノーザンレイスへ行くことになってからどこか様子が違う。

 どうしたのかと思うも束の間、珍しく同行の提案がかかった。


「待って、北へ行くのならロウさんと代わってほしいわ」


「ルーシー?」


「私もそこには用があるの」


「ルーシー君……」


 踵を返し店長に向き合うとルーシーはある条件を申請してきた。

 それは、いつもの理知的な様子から想像つかないなほど感情を交えたものだった。


「休暇扱いにしてほしい。 私用だから報酬はノエルちゃんとエイミーちゃんの分配で構わないわ」


「君がそうまでするということはやはり……」


「これ以上答えるつもりはないわ」


「だろうな、まぁ君にならみんなを安心して任せられる。 なにとは言わんが、その荷物しっかり降ろしてきなさい」


 ひょうひょうとしながら言う店長に小さい声で「言われなくても……」と呟くルーシーの声が私には聞こえた。


 事務所内に再び沈黙が流れ、穏やかじゃない空気が流れていた。

 それに気づいたのか、誤魔化すようにルーシーはいつもの明るいトーンに戻る。


「さて、明日も早いわ。 調査隊のみんな、今日は英気を養いなさい?」


「んじゃノエル、あたしらも今日は帰ろうか」


 こうして、事務所に新たな任務の空気が満ちる中、ルーシーとエイミーに促され、私も明日の出発に備えて事務所を後にした。ロウさんとモニカは店長と一緒に残り、留守番をしてくれることになった。


アスヴェインを取り戻すにはいたらなかったけど、ヴェルクさんの「後は任せたぞ」という言葉が、私の心の中で強く響いていた。仲間たちは誰も私を責めず、むしろよくやってくれたと励ましてくれた。その想いに、私は必ず応えたい。


 ノーザンレイスへの旅。アゼルさんたちを無事に送り届ける護衛の任務と、ルーシーの抱える「私用」の目的。この二つを果たすことが、アスヴェイン奪還への新たな一歩になる。

 私はそう信じて、北へ続く空を見上げた。


 必ず、アスヴェインを取り戻す。そして、今はわからなくても、ルーシーの抱える荷物も一緒に降ろしてあげたい。

 そう誓いながら私は自宅への帰路についた。

 


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