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14話


 殺陣は日本の忍者の中でも下から数えたほうが早い位の家に生まれた。


 親は何としてでも家の位置づけを上げようと、子供にあまりに理不尽で横暴な、自分たちでもできるはずがない修行や任務をやらせた。殺陣がやりたいことは何もできず、欲しいものは何ももらえず。やりたいことが何かも分からなくなっていった。


どういうことをやっても自分には意味がないと、考えても意味がないと考えるようになっていった。

 親などとっくに殺せるというのに従うこと以外をしなかった。

 そういう性格の殺陣が選択死という技を使うと言うのは、ある種似合いも似合ったりと言った所なのかもしれない。


「ニャハハ・・・・・・そろそろ限界に近いニャね」


 エルハは地面に倒れながらそれでも気丈に喋り続ける。喋らないほうが、生存時間が長くなるはずなのにそれでもペラペラと喋る。

「普通の人間だったら死んでいますよ。人間サイズなのに畳3畳を染めるような量の血を吹いて死んでない化け物の存在に世界は広いと感じざるをえないですね。世界が広かろうが狭かろうが、意味ありませんけど」

「血はもう固まっちゃってニャ。出ないニャ」

「まあここからはあなたが衰弱して死ぬのを待つだけです。ゆっくり待ちましょうか」

「待って、ニャ」


 息も絶え絶えになりながらエルハはなんとか、虚ろな目の少年に質問する

「・・・・・・何で私を殺すニャ?」

「なにを言っているのですか?」

「いやニャ。殺される理由すら知れず死ぬのは嫌なだけニャ。お金の為とかいろいろあるニャ?」

「そんなものないですよ。親に言われた通り来ただけなので貴方を殺す理由なんてありません」


 そう言われた瞬間。エルハは目を見開いた。

「・・・・・・それ本当ニャ?」

「本当ですよ」

「強くなりたいからとか、そういう事でもなくてニャ?」

「別にそんなこともないですね」

「あれニャ? 逆らったら殺されるとかニャ?」

「返り討ちにできますよ。殺しにかかってきても。殺していいと聞かれたら反抗しませんけど」

「・・・・・・ニャハハ!」


 エルハは笑う。目を見開いたまま腹の底から心の底から、笑う。

「ニャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

「なにがそんなに面白いんですか?」


 その問いにエルハは笑顔を消さないで答える。

「いやニャ。世界はまだまだ広いなと思ってニャ。軍の招集とかだって大義とか、戦わないと家族が死ぬとか、軍に入って国守らないと自分たちがより酷い目にあうとか、自由を得たいとか、色々言い分あるのに。タテ君は麻薬で洗脳されて、みたいな事でもなさそうだし」


 でもまあ、とエルハは立ち上がる。

「そんな理由で殺されるなんて絶対に嫌ニャ。やりたいこともないのに殺されるのは絶対にいやニャ。そう言うのに殺されるなら納得できるニャけど、無意味に殺されるなんて御免ニャ」

「瀕死なのにそんなハッタリを言っても意味がありません」

「そうかニャ?」


 本気ニャよ、とそう言うと腕をソフトボールの下投げのように『盾心』に向かって構える。

 呆れた顔で殺陣はエルハを馬鹿にする。

「そんなことしても腕が吹っ飛ぶことになるだけですよ。意味がありま――」

「意味なんているかニャ!」


 そしてエルハは腕を振るう。

「孤達!」

 そしてエルハは『盾心』だけを吹っ飛ばした。畳を抉りながら下から吹っ飛ばした。

「えっ・・・・・・!」

 殺陣の顔に動揺が走る。

「蟲使いなのにカブトムシを知らないニャ? 堅い装甲相手には下から吹っ飛ばすのが上等な手段ニャよ」


 簡単な話だ。堅すぎる装甲は中心への攻撃を無効化する。なら、下から引っぺがせば良い。

 カブトムシがその角で相手を突き殺すわけではなく、相手を投げ飛ばすようにエルハは『盾心』を吹き飛ばした。重いと言っても200㎏程度の盾。軽自動車を当たり前のように飛ばす孤達に飛ばせない重量などではない。

 盾を吹き飛ばされた殺陣にできることはない。ただ、死ぬだけだ。


「喰らえニャ! 一撃必殺! 七大祟!」

 この技は実際には7回引っ掻いて攻撃するので実際は七撃必殺が正しいのだが、それを突っ込む人間はいなかった。その場には2人しかいなかったし、1人は技名を叫んだ本人で、1人はその技で声帯を切られたからだ。


(ああ、僕はもう死ぬのか)

 殺陣は最後の最後に考える。

(次の人生があるなら――こんな考え意味ありませんね。そんなものあるわけないですし)

 こうして殺陣はチケットを使うことになった。地獄行きのチケットを。


「・・・・・・ふう。疲れたニャ。てか、このままなんも食べないと死ぬニャね」

 早速、死んだ殺陣の死体をあさるエルハ。

「なんもないニャね。・・・・・・嫌だけどしょうがないニャ。蟻なんて道具もないのに捕まえてられないしニャ。お腹壊さないといいニャけど」


 そう言うとエルハは掌を合わせて、祈りの形をとる。

「タテ君。君の血肉を意味ある形に変えられることを誓うニャ。だから地獄であっても許してニャ」

 食事シーンをあえて描写したところで、起きるのは好感度の低下だけなので描写をするのはやめておこう。

一応言うなら、何とは言わないが頭と下半身は食べていないという事だ。腹しか食べていない。

 とにかく最後に殺陣は意味を持った。

 その意味は――


「いただきますニャ。タテ君」

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