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てのひらの魔法  作者: 百目朱佑
はじまり
4/151

ー4ー

今日は朝から修学旅行のグループ内で打ち合わせの時間だった。

ゆうた君と波多野が朱雀組にやってきて、私とりさちんの4人で机を合わせている。


(気まずい)


あんな夢をみた後だからか、楽しそうなりさちんとゆうた君には悪いが、うまく笑顔がつくれなくて引きつってしまう。



「まず1日目、東都到着したら浅草で自由行動だけど行きたいところはある?」

彼女のりさちんと、幼馴染の波多野の前だからか優等生というより年相応なゆうた君が進行してくれている。


「私、浅草寺行きたいな!楓ちゃんはどこ行きたい!?」

「え!りさちんが行きたいところがいいなぁ…」


(気まずい!波多野の視線が痛い!)

りさちんとゆうた君が私に話をふるたびに、顔は動かないのに目だけ動く波多野の視線がジリジリ痛い。


「波多野はなんかない?行きたいところ」

「…んー寺とか神社とかばっかっしょ?俺、服買いに行きたい、下北沢とか」

「うん、無理。じゃぁ浅草寺と食べ歩きしながらスカイツリー目指すでいいね」

「服屋さんもあったら入ろうね!」


…さすが幼馴染。波多野の扱いが上手い。

りさちんも対応が上手いなぁと感心しながら、波多野の興味が旅行雑誌から私に動かないように大人しく浅草プランのメモを取る。




「失礼しまーす。あ、楓ー!部室の鍵開けてほしいんだけど~」


打ち合わせが休憩時間に入った時、青龍組の佐藤博貴がやってきた。

博貴は甘いマスクに人懐っこく、誰とでも仲良くなれるため、いつも友人に囲まれている。

そして私の男友達の一人だ。

彼も戦闘俱楽部のメンバーで、普段の性格からは想像できないくらい攻撃的な戦闘スタイルで、身長の高さも活かすセンスがあるので他校からも人気がある。


「あれ?ゆうた~波多野~!同じグループなの~?」

「博貴はまた部室に忘れ物したの?」

「うん!課題おいてきちゃったみたい!」

「たかちゃん、昨日もじゃなかった?」

「うん!さっき怒られちゃった♪」


博貴こと、たかちゃんが人気なもうひとつの理由は天然なところが「かわいい!」「母性本能くすぐる!」って言われているから。


「たかちゃん、鍵あけるから行こう。はやく課題提出しなくちゃ」

「ありがとう~楓~!」

「いってらっしゃいー!」


「ねぇ楓、課題の答えも教えてほしいんだけど…」

「やってないの!?」

「うん!!!」

「それはやばいでしょ!!」

なんて軽口言いながら、戦闘倶楽部の部室へ向かった。




~ その頃 ~


部室へと向かう楓と博貴を見送ったりさちん、ゆうた君、波多野の三人のもとに青龍組の女子生徒がやってきた。


「あれ?りささん、楓さんは?」

「いま部室にむかったよー。楓ちゃんに用だった?」

「うん、ちょっといつものあれ、お願いしたかったの」

「いつもの?」


りさは波多野が楓のことを良く思っていないことを知っているので、楓の話に食いついてきたことに驚いた。


「戻ってきたら伝えておくよ~」

「じゃぁまた後で来てみるわ!ありがとう!」


女子生徒が朱雀組を出ていくのを見てると

「いつものってなに?」

と、波多野に聞かれ、楓が嫌いな人に楓のことを話していいのか戸惑っていると通りかかった白虎組の男子が代わりに答えてしまった。


「波多野知らねーの?立華さん、夢占いが当たるって有名なんだせー」

「そうそう!俺、予知夢で欲しかったヴィンテージのギター、中古で売ってる店教えてもらって買えたし!」

「俺なんか彼女が怒ってる理由わかんなくて相談したらすぐ仲直りできたしなー」

「まじ立華さんに感謝。お礼に立華の曲つくったもん」


(あわわわわわどうしよう…楓ちゃん、波多野君に自分のこと知られたくなかったはずなのにばれちゃったよぉぉ…!!!)


「曲とかだっさ!」

「いやまじで傑作だから夜、談話室で聞かせてやるよ!」

「あまり騒がしくしたら追い出すからね」



りさは面食らった。

波多野は楓のことが嫌いなはず。だからいつも意地悪しているはずなのに、楓の話題でこんなに楽しそうに笑う姿に驚いていた。


(ただ単にクラスメイトの男子と話してるからなのかな…)


「あいつ、ただ寝てるだけじゃなかったのな」

男子たちが自分たちのグループに戻り、あたりは3人だけになった時、波多野がゆうたにつぶやいたのをりさは聞き逃さなかった。


(女の直感が働いてる…!!きっと嫌いあってるのはちょっと違うのかもしれない)

りさは自分の勘を信じてみることにした。


「ただいま~」

と、楓が戻ってきたときに勘が確信に変わった。

なぜなら波多野の楓への視線がいつもより柔らかかったことに気づいたから。




~ 次の休憩時間 ~


りさちんから聞いていた青龍組の女子生徒がやってきた。

「楓さん、いま相談いいかしら…?」

「あ、さっきはいなくてごめんなさい!えっと…相談内容って…?」


私は歯切れの悪い受け答えをしてしまった。

なぜなら波多野の前で夢をみたくないからだ。


(あいつの前で寝るなんて…なにされるかわからない!!!!!)

寝顔を撮られるかもしれない、馬鹿にされるかもしれない…いろんな最悪が頭をよぎる。


「実はさっきグループ内で自由行動の行先で分かれて揉めてしまって…戦闘しそうな勢いだったんです」

「えぇ…」

優秀な生徒が多い青龍組で乱闘騒ぎになるほど揉めるってよっぽどだなぁと驚いた。


「なんとかしなきゃと思って、咄嗟に第三者に決めてもらいましょうって間に入ったんです。それで楓さんにならグループ全員楽しめる行先が見えるんじゃないかと思って、夢占いお願いしてもいいかしら?」


(なんとかしたい…けどここには波多野がいるんだよなぁ)

(波多野の視線がいつもより痛い…)

(でも彼女にはこの前チョコもらったからなぁ)


「お礼にチョコあげるので…!」

「まかせて!」

(やっちゃったぁぁぁぁ)


私は大のチョコレート好きで、夢占いの報酬替わりになっていた。

チョコレート欲に逆らえなかったことが恥ずかしく感じながら、大人しく枕を取り出した。


「!?」

視界に一瞬驚いた波多野の顔が映った気がした。


「いってきまぁす」

「いってらっしゃ~い楓ちゃん♪」

波多野の顔を確かめることもなく、寝顔を見られないようにひざ掛けで顔を覆い目を閉じた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


(あぁ、このメンバーだったんだ)

乱闘騒ぎを起こした男子二人は、相談にきた女子生徒にいいところを見せようとライバル意識をもやしてたみたい。


ここは夢の中。

4人を上から見下ろしながら男子二人の情報が流れこんでくる。


(みんな楽しそうに歩いてる…ここはどこだろう?)

夢の中を自由に動き回ってみると、みんなどこかに向かって進んでいく。


(あ、スカイツリーのぼるんだ)


どうやら女子生徒にいいところを見せたかった片方の男子は高所恐怖症で、のぼりたくないがためにプラネタリウムを推していたようだった。


(でも彼女のタイプが守りたくなる男子って聞いてスカイツリーに決めたみたい♪)

(じゃぁそろそろ起きるか~!)


ーーーーーーーーーーーーーーーー


と、喧嘩の原因も、夢の目的も、アドバイスもわかったところで目をさまそうとしたとき



ガンッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

「い…………っっっっっっっっ!!!!!!!!!!」

「立華~~~~~また夢みてたな!!!!もう休憩終わってんだよ!!!!!!!」



りく先生に勢いよく枕を抜き取られ、勢いよく額を机にヒットしてしまった。

ひざ掛けで頭を覆っていたこともあって、今までで一番いい音が鳴り響いた。



「暴力教師~~~~!!!!!!!」

「ばかやろう、音のわりには痛くないくせに」

ふふん、と鼻であざ笑うりく先生に必死に抗議するが全く届かない。




「あははははははは!!!!」



「…へ?」


朱雀組にいる全員がひとりの生徒に注目している。

りく先生も驚いて私から抜き取った枕を私の手に落とした。



(は…波多野が笑ってる…)


ゆうた君以外、全員が同じことを思ったはずだ。


波多野は問題児として有名だし、仲のいい男子生徒くらいとしか話さない。

いつも不愛想で女子からは近寄りがたいと言われたいる波多野が


笑っている…。



「でこ、赤すぎだろ!!!あはははははは!!!!」

「え、私???」

「おめーしかいねぇだろ!!赤でこ!!!!」

「あ、赤でこ?!?!?!?!」



私は私を指さしながら、笑い転げる波多野にどう反応していいのかわからなかったが

「お前、笑えるんだな…」

と、りく先生が全員の気持ちを代弁してくれた。



続く

やっと序章が終わったという気分です。

なかなか思い通りに書けなくて、小説書くって難しいと葛藤しながら書き進めてます。

完結まで頑張ります。

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