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てのひらの魔法  作者: 百目朱佑
はじまり
3/151

ー3-


「楓ちゃん…大丈夫?顔色、悪いよ…?」

「…え、そんなに?」



放課後、戦闘倶楽部が異能筋トレを行っている練習場には模擬戦闘場の他に属性別のトレーニング室が複数備わっている。

私は治療室で飲み物の用意をしていた。

非戦闘部員の私は治療部隊として所属しているが、ほとんどはマネージャーみたいなものだ。




「もしかして波多野になんか言われた?」

「あー…、さっき水分配ったときに邪魔って言われたねーははは…」

「あのね、ゆうた君にそれとなく聞いてみたんだ、波多野君のこと」

「えっ」

「そしたら波多野君の口から楓ちゃんの話は出たことないって…なんで意地悪するんだろうね…」

「そっか…聞きづらいこと聞いてくれてありがとね。さっ!りさちんもこれ飲んでトレーニング頑張って!!」


私はまた強がって、りさちんを送り出し、人気のない場所へやってきた。





(うん、昨日より葉っぱも元気だし、芽もでてきたみたい!)


ここは練習場の横にある小さなスペースで、マネージャーとして周辺を掃除する私くらいしか知らない場所。

白くてかわいい小さな草花で埋め尽くされていて、私にとっては癒しスポット。

私の異能は草花を元気にする能力なので、倶楽部中の合間をみてお世話をしていた。



(ふぅ…お花みてたら元気でてきた!修学旅行のことはあとで考えよう!)

グループ行動って言ってもどうせバラバラになって行動するかもしれないし!!

あいつ来ないかもしれないし!!そうだ!!不良は修学旅行に来ない!!

と、現実逃避しながら残りのマネージャー仕事を終わらせた。




~ 練習後 ~



「お疲れ楓ちゃん!」

「お疲れ~りさちん!ゆうた君もお疲れ!もう寮帰る?」

「ううん、ゆうた君とおしゃべりして帰るよ」

「わかった!じゃぁ食堂でね~」

「楓さんもお疲れさま」


私はりさちんとゆうた君を見送りながら、トレーニング後の練習場を掃除していた。



(こっちの掃除は終わったから、誰もいないか確認して鍵閉めて、教官室に鍵を返して…)

と独り言をつぶやきながら見回っていると『雷専用室』と書かれたトレーニング室から物音がした。



コンコン

「お疲れさまでーす、もう鍵閉め…」


「は?」



(…最悪だ)

誰もいなくなった雷専用室で残ってトレーニングしていたのは波多野だった。



「…もう鍵閉めたいんだけど」

「…あぁ」


気まずい空気が流れ、いたたまれない私は扉から少し離れたところで波多野が出るのを待った。





バタン、と扉が閉まる音がしてトレーニング室を見ると帰る波多野が私の前を通り過ぎる。

あぁ、また舌打ちされるんだろうなと思いながら目を伏せる。



「………」



舌打ちも何も言われなかったことに安堵して顔をあげると、少し通り過ぎたところで立ち止まっていた波多野と目があった。



(えっ…な、なに??)

すれ違うたびに意地悪を言われたり、舌打ちをされることになれてしまったのか、何も言われないことに気持ち悪さを感じて逃げるように鍵を閉めに走った。



(なにあれ?逆に気まずいんだけど…)

と戸惑っていたら遠くから舌打ちされた音が聞こえたので、あぁやっぱりなと逆に安堵した。




なので「…俺には挨拶なしかよ」

って波多野のつぶやきには気づかなかった。





ーーーーーーーーーーーーーーーー




その日また夢をみた。

前から誰かがこっちにむかって歩いてくる。


(誰だろう?まぶしくて見えないや)


歩くスピードが落ちることなく私のほうへやってくる。


(このままじゃぶつかる)


でもよけたくても動けない。

夢の中で目をつぶった瞬間、その人は私の目の前でとまった。


(波多野に似てる…)


まぶしくて顔までは見えないが、制服を崩して着こなすところから波多野だとわかった。


(…それにしても近くない?)


夢の中でも思わずのけぞるほど、波多野は目の前にいる。

顔をあげれば私の頭と、波多野の顎がぶつかるくらい。

ちょっと動けば制服の袖がくっつくくらい近くにいる。


(…離れたいのに動けない)


どうしよう

どうしよう…

どうしよう………


ーーーーーーーーーーーーーーーー



~♪~♪~♪~


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ハードロックな音楽で目が覚めた時、壁と3つの抱き枕に挟まれていた。

だいぶ壁に向かって力んでいたのか腰の痛みに気づいた。


「夢の原因はこれかぁ」


ここ最近、波多野の夢をみるようになったけれどなんの意味もない。

今日の夢もきっと寝相が原因なんだと、考えることを放棄しながら朝の身支度をはじめた。



続く

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