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てのひらの魔法  作者: 百目朱佑
修学旅行編
15/151

ー15ー

ーーーーーーーーーーーー


夢をみた。

誕生日の時にみた夢と同じ夢を。


誰かと手をつないでる。

でも眩しくて誰なのかいつも見えない。


波多野に似ているような気がしているけど。


もっと光の先に目をこらしていくと手をつないでいる人物がこう言った。




「えでか」


ーーーーーーーーーーーー




「!!!!!」

「ひゃ!!…びっくりした…いきない目あけないでよぉ」

「え?…え、あ、お、おはよう、りさちん…」

「どうしたの?怖い夢でもみた?」


りさちんは朝練の準備のために目覚ましをかけていたのに全く起きない私を起こそうとしていたところだった。

なのに私が起きる予備動作もなくいきなり目をあけたから驚いていたが、私の様子をみて朝練お休みしたら?と心配してくれた。



「本当に大丈夫?」

「うん、それに怖い夢じゃないし、ちょっとびっくりする夢だったから心配しないで!」

「わかった…でも無理しないでね?今日合同演習だし…」

「ありがとう♪りさちんはもう少し寝てなー?」

「うん、そうする…朝練頑張ってね!」


りさちんに送り出された私は朝の清々しい空気に満ち溢れたビーチにいち早くやってきた。

(ふふ、このビーチ独り占めだなんて、昨日パーティーで寝るの遅かったのに頑張って早起きしてよかった~)

頑張って起きたのは私ではなく、りさちんなのだが、この気持ちいい波にふれたら問答無用で自分をほめたくなってしまう。


そして砂浜から海をながめながら、夢を思い出した。

「あの夢…ふうちゃんだったんだ…」

誕生日をむかえた夜から時々みた夢。

波多野と手をつないでいたと思っていたのに、ふうちゃんだったなんて。


きっと東都に眠っているふうちゃんが会いにきてくれたのかなって想像したら、久しぶりに会えた嬉しさで流れる涙を波がさらってふうちゃんに届けていくようだった。




朝練では午前中の演習に向けたストレッチがメインだったため、はやめに終え、波多野に挨拶代わりのデコピンを受けながら部屋へと戻ってきた。

もうすでに朝ごはんを食べる気満々のりさちんに追いつくように急いで身支度を整え、朝食会場へとむかった。

その途中、玄関ホールに白いブレザーを着た東都高校の生徒たちが集まっているのが見えた。

いよいよ練習の成果を出す時かと思うと緊張で食欲がなくなった。






ー 合同演習 ー


東都異能ホテルの裏にそびえる練習山。

その麓にある広場に私たち北都高校と、東都高校が並んで集まっていた。

黒とえんじ色の戦闘服に着替えた私たちは、東都のイメージカラー白とは対照的で、どちらのかっこよさを引き立てた。


「ねぇねぇ楓ちゃん、戦闘服着たゆうた君かっこいいんだけど…」

東都高校の先生が挨拶中、耐え切れなくなったりさちんがこそっと話しかけてきた。

「うちの戦闘服って長ランタイプだもんね~」

「そうそう!いつも真面目なゆうた君が不良っぽい恰好してるのすごくいい…」

「ふふ…あとで写真とってあげるね」

「ありがと!」


(りさちんはほんと、ゆうた君のこと好きだな~)

と、微笑ましく思いながら白虎組を見ると、ふと波多野と目があった。


(やば、話しての聞こえちゃったかな)

でも波多野とは少し距離もあったので、聴覚がいい動物じゃなければ聞こえないはず。

なのに目をそらせずにいると波多野の口がゆっくり動いた。


(なに…?…で…こ…?・・・赤でこ!?)

こんな時に、しかも遠くからからかわれたことに、頬を膨らませて対抗すると優しく微笑みながら前を向きなおした。


「波多野君の戦闘服姿もかっこいいね?さまになってる感じ」

確かに似合っている。それも異様に。

というか波多野だけでなく、白虎組は異様に似合っているのだ。

もう長ランが喜んでいるかの如く、似合いすぎているのだ…。




「東都高校、代表挨拶」

アナウンスと同時に登壇した東都高校の生徒は白いマントをなびかせ、上品さを感じさせた。


正直私は長ランも好きだけど、マントタイプの戦闘服が好みなので、白いマントに施された濃い青の糸に混ざった銀色がキラキラ光って目が釘付けになった。

そして北都高等の戦闘服を着た波多野を想像してみたら、あまりの似合わなさに噴き出すのを必死でこらえた。


(でも…同い年になったふうちゃんだったら、きっと似合っただろうな)

記憶の中のふうちゃんは小学4年生のままなので、高校2年生になった姿を想像していたら、長かった開催挨拶が終わっていた。




「では今から練習山での合同演習を開始します!」

「先行後攻決めますので、代表は前にお願いしまーす」

さっきまでの緊張感走る雰囲気から、東都高校の案内係の進行で文化祭のような盛り上がりに変わり、代表2人がじゃんけんをするようだ。

遠くてよく見えないが盛り上がりからすると、私たち北都が先行らしい。


これから行われる演習は、各チーム割り振られた入口から山の頂上を目指して登っていく。

普通に登れば1時間くらいの軽いウォーキングになる程度で、それほどきつくない山なのだが、ただ登るだけではないのが合同演習で。

先行チームが登っている間、後攻チームは相手チームの邪魔をすることができる。

もちろん『異能を使って』だ。


波多野との練習で波多野のアシストなしでも草花を人の身長ほど成長させることはできるようになったが、実践経験不足のため、治癒やサポートとは違って何が起こるかわからない演習は少し不安ではある。


あらゆる思いつく限りの邪魔を想定しながら対策をイメージしていると、後攻の東都高校のチームが順番に入山していった。


「ねねね!さっきの東都高校の人かっこよくなかった?!」

「わかる!The 王子様!って感じだったね~」

「なんか東都にめちゃくちゃ強い人いるらしいよ」


前に並んでいた女子たちがきゃあきゃあしているが、私の心臓はそれどころではない。

緊張で手汗もすごいし、手足の感覚も寒くないはずなのに冷え切っている。




「では北都高校のみなさーん!!」

「割り振られた入口に並んでくださいー!!」


並んでいた列が動き出し、私の足も歩いているはずなのに、地に浮いているようで気を抜くと転びそうだ。


「お待たせー!後ろのほうに並んでたから最後だったね」

「あと10分でスタートだからまだ大丈夫だよ」


戦闘倶楽部でも実践経験を積んでるりさちんとゆうた君は、緊張よりも楽しみって感じが伝わってきて改めて戦闘倶楽部の攻撃隊は胆の座りっぷりがすごいなと思う。


「おい」

「え?」

「緊張してんの?」

「う…し、してない」


波多野の顔をみたら余計に緊張が増した、とは言えない。

だって毎日あんなに練習に付き合ってもらったのに、結果を出さなかったら今度こそ本当に嫌われてしまうかもしれない。


「じゃあ、目つぶってみろよ」

「え!い、いま??」

「いま」

「うぅぅぅ~…」


言われるがまま目を閉じる。

真っ暗な視界が広がり、山の木々が揺れる音、鳥の鳴き声、二人の世界に入ったりさちんとゆうた君の声。

それに夏の匂い、山に咲いてる花の匂い、波多野の甘い匂い、それとチョコレートの匂い…チョコレート??


「ん?!」


私の鼻がチョコレートの匂いをとらえた瞬間、口にザクザク系のチョコレートを押し込められた。


「ふふ!?(チョコ!?)」

「朝あんま食ってねーだろ」

「!?」

「だから緊張すんだよ」


確かにいつもならよくある朝食定食なんて余裕でおかわりできちゃうくらいなのに、今日はクロワッサン1つに紅茶だけしか食べれなかった。


でもそれを、どうして波多野は知ってるんだろう。

もしかして気にしてくれてたのかな。

そうだとしたら、すごくうれしくて、緊張と不安が一気に和らいだ。


「…お水もちょーだい」

「調子のんな」

「ふふ。ありがと。私、こういうザクザク系のチョコが一番好きなの!」


波多野に軽口を言えるようになったのも、チョコレート効果かもしれない。

笑って受け流す波多野の横顔が、いつもより頼もしく見えた。




「ふーん。それ賞味期限切れてたやつだけどな」

「へ!?!?!?」

ーーーーパァン!!!!!


冗談だとわかっていても、波多野なら本当にやりそうで本気で驚いた瞬間、スタートのピストルがなった。



「二人とも、行こう」


ゆうた君の声をスイッチにりさちんも集中モードに切り替わった。

ほんの数秒前までただの高校生カップルだったのに、一瞬で異能力者の顔つきだ。


二人のあとに続いて歩き出した時

「ま、大丈夫だろ」

と、波多野が隣でつぶやいた。


賞味期限切れていても大丈夫、の意味にもとらえることもできたけど、私にはそう聞こえなかった。



「うん!!」


私には頼りになる3人がついてる。

出来ることを精一杯出し切ろう。

いまは緊張も不安もない。目に力が入る。



そして波多野への想いが強くなる。


絶対、演習が終わったらお礼伝えよう…!!



続く

いつもお読みいただきありがとうございます。

文章で表現するのが苦手な展開になってきたので、ちょいちょい訂正していこうと思います。

なのでこれからも引き続きよろしくお願いします。

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