ー110-
さっそく女子棟へ向かうと、当たり前だけど博貴の入室は東都の教員により拒否されてしまった。
ならせめて担当である私とりさちんだけでもと思ったが、ダイヤちゃんの体調不良と面会拒否により帰らされ、合宿所の前で作戦会議を立て直していた。
ちなみにふうちゃんに事の顛末を説明したら幻術については渋谷先輩がいるから問題ないとのことだった。
それよりも《俺も混ざりたかった》といじけていたのがかわいかった。
私も想像しちゃう。
この大好きな人たちの中に、大好きなふうちゃんがいる景色を。
いつか実現できたらいいなと思う。私なら奇跡を起こせるんだもの。
「も~~~どうやったらダイヤちゃんに会えるの~~~~」
「まさか私たちまで拒否されるなんて思わなかったね…」
「ダイヤちゃん、そんなに具合悪いのかな…」
念のためダイヤちゃんに外に出てきてもらえるか連絡してみたけれど「具合が悪いのでごめんなさい」とだけ返ってきた。
文字だけだから本当のところはわからないけれど、博貴の言う通り初めて出会ったころの固さを感じた。
「んー女子棟に侵入するにしても入口はあそこしかないし、強行突破したとしても罰則を受けるだろうし」
「罰則で済むなら強行突破しよう!!!」
ゆうた君の考案に博貴は一目散に女子棟に向かおうとしたが、ゆうた君にラリアットされて踏みとどまった。
「落ち着け博貴」
「そうだぞ、おそらく女子棟には男子禁制の術がかかってるからな」
「え!?そうなの!?!?」
「あぁ、一応男子棟にも女子禁制の術かかってるしな」
知らなかった…と驚く私と博貴とりさちん。
どうやら私たち以外はすでに知っていた模様。
りさちんも知らなかったのは意外だけど、準備期間中は作動せず、門番の教員がもつ鍵が作動のキーになっているらしい。
じゃぁ門番の鍵を奪う?とも考えたけれど、そこまで大事にしてしまっては先輩たちが無事に全国大会に参加できるか怪しくなってしまう。
なのでなるべくなら私たちだけの力でダイヤちゃんを救出したいと、先輩たちには申し出た。
先輩たちには知恵だけを貸してもらいたい、と。
でも私たちの頭ではすでに案が出尽くしてしまい、カラカラになってきてしまった。
うーーーんと悩む私たちのうなりを破ったのは、波多野だった。
「中がダメなら外から行けばいいんじゃね」
「そっか!!!波多野!!!頭いい!!!!」
たしかに博貴だったら合宿所の脇に並んでいる木に登ってダイヤちゃんの近くにいけるかもしれない。
「ねぇ楓!!りさ!!ダイヤちゃんの部屋ってどこ!?!?」
「えっとダイヤちゃんの部屋は3階だから・・・あそこ、かな」
りさちんが指さした方向は、道路から丸見えで、よじ登るものなんてなにひとつない窓だった。
でも確かにダイヤちゃんの部屋番号からすると、間違いなくそこだった。
「なに、博貴、壁登るの??うける」
首がのげるくらい見上げる博貴に気づいた波川先輩は、思わず博貴をからかった。
「で、できるもん!!ダイヤちゃんのためなら!!」
「待って待ってたかちゃん!!そのまま登ったら丸見えだから!!!」
いくら田舎町と言っても、ちょうど仕事帰りの車が行き来しており、りさちんとゆうた君が博貴をひきとめた。
「じゃぁどうすればいいのさ~~せっかくあそこにダイヤちゃんがいるのにぃ!!」
じたばたする博貴を落ち着かせようと、私もとめにはいろうとすると、ぐいっと猫みたいに首をつかまれた。
「俺とこのでこ鼻血に任せろ」
「で、でこ…鼻血…??」
「結界くらいはやってくれますよね、先輩」
「うん、それくらいならお安い御用だよ」
「なら行くぞ、でこ鼻血」
「ちょ、ちょっと引っ張らないでよ!!」
なにでこ鼻血って!!!
いったいなにをやらされるのかわからないまま、いったんでこ鼻血に対して抗議したい。
ぐいぐいダイヤちゃんの部屋がある真下に引っ張る波多野に抵抗しようとする私をみて、博貴は冷静になったみたい。
やっと離してくれたので、ジャージが伸びきっていないか息を整えながら確認した。
「もう!なに!?でこ鼻血って!!」
「ほんとのことだろ」
「うっ…そ、それより何するの??」
「あれやるぞ」
「あれ?」
ぽかんとしたまま波多野に聞き返すと、波多野はバカにしたように溜息をついた。
「はぁ~…お前、頭まで打ったのか?」
カチンときた途端、波多野がなにを言いたかったのかやっと理解した。
練習場裏で特訓したあれだ。
たしかによく見ると小さな雑草も生えているので、3階まで成長させるのは簡単だろう。
でももっと言い方があると思う。
「あ、でも消すのはどうするの?」
「ほっとけよ」
「だめだよ、せっかくバレないようにしたいのにバレちゃうじゃん」
「…めんどくせ」
と波多野が小さくつぶやいたのが聞こえて、むか~っと口がふくらんだ。
「はいはい、二人がなにをやろうとしてるのかはわからないけど、証拠隠滅は手伝うよ」
「俺らもバレたくねーしな」
「後輩思いの先輩もったことに感謝しろよ」
「結界の準備も整ったからいつでも大丈夫だよ」
そんな私たちの小さな喧嘩を見越して、先輩たちはフォローしてくれた。
ほんといい先輩たちに恵まれて幸せだなと思う。
さっそく土に手をかざす私と、私の手に触れる波多野。
久しぶりに波多野の手が触れてドキッとした。
(…やっぱりふうちゃんと違う)
ふうちゃんと手を繋いでいると、もちろんドキドキもするけれど、それよりももっとほっとしたり、安心感がある。
でもこの「ドキッ」はふうちゃん以外の人が触れたことに対する「ドキッ」なことに気づいた。
「…久しぶりだからって失敗すんなよ」
「大丈夫だもん…!」
「行くぞ!」
波多野の電流が私の手を伝って土の奥深くまで進んでいく。
土の中は成長したからこそ感じる、見えない根、見えない異能花を捉えた。
でも私は成長した力を抑えることにも意識しなければいけない。
なるべくこの雑草たちの根から離れないように、でも3階まで博貴を送れるように。
元気になぁれ、元気になぁれ、と。
「すごい!!!すごいよ楓と波多野~~~!!!いつの間にこんなことできるようになってたの~~~!?!?!?」
博貴の声で異能の流すのをとめると、3階よりも高く、合宿所の屋根の届くくらい成長させることができた。
木の根にも異能を流すことができたので、博貴ひとりくらいなら余裕で登っても問題なさそうだ。
「こいつくそ弱ぇから修学旅行前に特訓つけてやってたんだよ」
「そ、そこまで言うことないじゃん!!」
「あはは!!でもおかげでこれから登っていけるよ!!ありがとう、二人とも!!!」
そして博貴はひょいっと成長した草花たちに足をかけると、どんどんと登っていった。
ゆうた君とりさちんは、合同演習ぶりに見た私と波多野の連携技を「あの時はゆっくり見れなかったから」と興味深げに観察していた。
なんとなく二人残された私と波多野。
ちょっと沈黙が気まずくなり、私は言い忘れていたことを思い出した。
「あ、あのさ、一応助けてくれたんだよね?茨木先輩の幻術から…」
「あ?あぁ…どんくさそうにしてたから。まさか鼻血出すとは思わなかったけどな」
「うっ…そ、その節はご迷惑をおかけしました…」
「…別に」
「でも、ありがとうね」
「…あぁ」
波多野はちょっと照れくさそうに、反対側を向いてしまい、なんとなく笑ってしまった。
でも助けてくれたのは、本当に嬉しかった。
だって友達みたいで嬉しかったの。
しばらくすると、博貴はちょうどダイヤちゃんの部屋の前に到着していた。
「かえで~、もうちょっと近づけられたりする~?」
「やってみるね~!」
と、上から博貴の声が聞こえたので、波多野と調整してみたが、どうしても上に成長させることしかできず難航した。
博貴は上に上がる度に楽しそうに笑っては、上手くダイヤちゃんの部屋の前まで降りてくれていた。
「どうしよう…難しい…」
「確かに…一部だけを一方向に成長させるって考えたことなかったな」
根から成長の異能をのばすと、全体にいきわたってしまうし、成長させたいところだけを意識しようとしても、異能の道順が迷路のようになっていて正解がみつけることができない。
なので他のところが急に成長してしまったり、全体が成長していまったり、花が咲いてしまったりと思い通りにいかない。
りく先生との夜花世界の特訓でも、一面夜花にすることはできても、空中感覚のように一部を意識することはまだ苦手でいる。
まだまだ私には実力が足りないなと思い知らされる。
「大丈夫だよ、立華。やり方は間違っていないから」
と、唇をかみしめていた私の力を落としてくれたのは小鷹先輩だった。
「成長させたいところを意識しようとしてたんでしょ?大丈夫、それで合ってるよ」
「で、でも…どうしてもそこまでの道がわからなくて…」
「道を意識しなくていいんだ、成長させたいところだけでいいんだよ。いま博貴がいるところがどうなったら立華はうれしい?」
「えっと…もっとダイヤちゃんの部屋の窓に近づいてくれたら嬉しいです」
「うん、それはどんな形?どんな風に近づく?」
「えっと…たかちゃんの座っている枝がもっと太くなって、窓につながるように伸びてほしいです」
「うん、そのイメージをこの木に送ってあげよう。立華が一番、送りやすいところから送ってあげて」
「送りやすいところ…」
その時私は思い浮かんだのは、触れていた土ではなかった。
小さかった雑草や、土の中に眠っていた木の根たちが一番太く、絡まり合っている幹の部分だった。
私は立ち上がってそっと幹にふれ、額をつけた。
たかちゃんとダイヤちゃんが窓越しに向かい合って、嬉しそうに話している姿を込めて、成長したイメージをおくった。
「うん、ばっちりだよ、立華」
小鷹先輩がそう言ってくれたから、安心したのか、ぽっと幹の中で夜花が笑ったように感じた。
「かえで~~~すごい!!!これならちょうどいいよ!!!」
博貴の声にはっとして額を離すと、イメージ通りに成長させることができたのがわかった。
「小鷹先輩!!できました!!」
「うん、上手だったよ、立華。波多野もただ電流を流すだけじゃなくて、もっと具体的にこうなったらいいなって強く意識を持ってみるといいよ」
「…わかりました、やってみます」
私たちの話を聞いていたゆうた君とりさちんも何かに気づいたようで、二人で話し込んでいた。
「なるほどね」
「ん?どうしたの、仁君」
「檜原がこんなに慕われる理由がわかったよ」
「え、そう?なんだか恥ずかしいな」
なんて小鷹先輩は照れていたけれど、後輩の面倒見がよくて、教え方も上手なんだもん。
慕わない理由がないと、いち後輩の私は思うのだ。
だからなのか、りく先生と特訓中の空中感覚のコツがなんとなく掴めそうな気がした。
「え、なになに?俺らもいい先輩だけど?」
「小鷹だけ慕われてるわけじゃないと思うけどなー」
「仁君、俺らのこともほめてよ」
「ま、いいチームなんじゃないの」
渋谷先輩は3人に構われてめんどくさそうに答えていたけれど、3人はそれすら楽しそうで、茶々丸が眠いときに遊んでほしいとうざ絡みすると私みたいだった。
「でも仁君もいい先輩だと思うよ、意地は悪いみたいだけど」
「なんのこと?」
「わざと博貴のこと煽ったでしょ?」
「ふっ、さぁね」
夏の優しい風にのってきこえてきた小鷹先輩と渋谷先輩の秘密の会話。
盗み聞きするつもりはなかったけれど、先輩たちがもっと大好きになった瞬間だった。
ーコンコン
ーーーコンコン
楓たちのおかげでダイヤの部屋に近づいた博貴は、窓を叩いた。
なかなかダイヤは出てこない様子。
それでも博貴は叩き続けた。
しばらくすると恐る恐る窓をあけたダイヤが顔を覗かせた。
「こんばんは!ダイヤちゃん!!」
「・・・え?!」
さすがに驚くしかないダイヤ。
それはそうだろう。
来たときにはなかった木が窓から見える景色を覆い、現実なのか夢なのかわからない人物が目の前にいるのだから。
「・・・あなた、なにをしているの?」
博貴の耳に、低く冷たいダイヤの声が刺さる。
痛む胸をこらえながら、笑顔をつくった。
「ダイヤちゃんにお届けもの!はい!」
そう言って差し出し、とまどうダイヤに無理矢理押し付けたのはりさの作ったケーキだ。
「これ、ダイヤちゃんの友達のりさがね、作った特別なケーキ!俺も食べたんだけど美味しくて、友達の楓もダイヤちゃんに食べてほしいって言ってたの!!だから俺が代わりに持ってきたの!!」
「・・・りさ・・・かえで?」
「うん、ダイヤちゃんのお友達だよ。人見知りなダイヤちゃんが勇気を出して仲良くなった友達」
「うっ・・・!!」
ダイヤはズキンと痛む頭を両手でとっさにおさえた。
そのためケーキの入った箱が窓辺に落ちそうになったのを、博貴がなんとか受け止めた。
「な、なんで・・・?」
「ん?だってダイヤちゃん、このケーキ大事に食べるでしょ?だから俺も大事にしたいなって思って」
「・・・って」
「ん?」
「帰って…そしてその名前を呼ばないで・・・!!」
ダイヤがそう叫んだ瞬間、ダイヤの言葉が刃となって博貴を攻撃した。
「わっと…!!」
ダイヤの刃は木に複数刺さり、座っていた枝がぐらついた。
博貴の態勢も崩れ、落ちかけたがなんとか腕でしがみついた。
「あっ…!!」
正気に戻ったダイヤは、自分のしたことが怖くなり、窓から離れた。
「よっと!!へへ、俺ね、木登り昔から得意だったの♪仮面ランナーウッキーの影響♪」
「…仮面ランナー…」
「うん、ダイヤちゃんも好きでしょ?俺も好き!特に仮面ランナーダイヤ!!ダイヤちゃんは?」
「…好き…だと思う」
博貴はダイヤが少し落ち着きを取り戻したのを感じた。
「俺ね、仮面ランナーダイヤで好きなシーンがあるの。…12話で寅次郎のピンチにルビーがかけつけるシーンあるでしょ?俺ね、そのシーンが大好きなんだ」
「…どうして?」
「強くてどんな攻撃も効かなず、市民のヒーローとして輝き続ける寅次郎だけどさ、ルビーがこう言うんだ。「あなたはいつも一人で抱え込む。ダイヤモンドはひとりで輝けない、だから私を頼って」って。覚えてる?」
「・・・」
「そのセリフを聞いてね、俺もルビーみたいになりたいって思ったの。いつもかっこいい姿しか見せないダイヤを、甘えさせてあげれるのはルビーだけって思ったらね、俺、みんなのヒーローよりも誰か一人のためのヒーローになりたいって思ったんだ」
黙ったままのダイヤに博貴はジャージのポケットからあるものを取り出した。
「これ、大事なお守り、また落としたでしょ」
「それ…」
博貴が手にしていたのはダイヤの宝物であるリボンだった。
講堂での混乱の中、茨木の幻術に抗ううちにほどけてしまっていた。
博貴は気づいて追いかけたが、手を振り払われてしまし、返すことができなかったのだ。
「…いつも助けてくれてありがとう。これからは君を一番に助けたい。だからこれはその印」
「そのセリフ…!」
「待って!いま動かれたらうまく結べない…」
二人の距離が近づいたのは、ダイヤの髪を結うためだった。
仮面ランナーDがルビーにリボンを送るシーンを再現しながら。
「…って、やっぱり寅次郎みたいにうまく結べないや!!ごめんね、ダイヤちゃん!!」
屈託なく笑う博貴の笑顔もみたら、ダイヤの目から大粒の涙があふれだした。
博貴は優しく受け止めながら、幻術の奥に隠れているダイヤに語りかけた。
「ねぇ、ダイヤちゃん。ダイヤちゃんはいま、幻術に抗ってるんだよね。強い子だよね、本当にダイヤち ゃんは。一人で頑張ってるんでしょう?楓やりさに迷惑かけないように会わないようにしたんだよね。強くて優しい女の子だよね。
でも、かかってしまうくらい悩みを持ってたってことだよね。それ、俺にわけてくれないかな?俺が嫌 なら下にいる楓やりさでもいいよ。もちろん俺だったら嬉しいけど…ダイヤちゃんが辛いとき、悩んでるとき、疲れたとき、頼ってほしいし甘えてほしい。俺バカだけど、ダイヤちゃんのこと笑わせることならできるから。…どうかな、こんな新しい現実は?」
博貴にうつむくダイヤの表情は見えなかった。
でも博貴には分かっていた。正しい現実にいるダイヤに声が届いていることも、こちらに手を伸ばしていることも。
「俺、ダイヤちゃんのことすっごく好きみたい。だから俺をダイヤちゃんのルビーにしてよ」
そして確信があった。
いま博貴の目の前にうつっているのは、幻術が解けたダイヤだと。
「…私、名前が嫌だった」
「うん」
「だから名前がなくなる現実にいたの。そしたらあなたの名前も呼べなくて、仮面ランナーの名前もなくなって早く戻りたかったのに、でも抗えば抗うほど動けなくなって…」
「うん」
「なのに…なによ、私のルビーになりたいって」
「うん、だめかな?」
ダイヤの顔を覗き込み、返事をまつ博貴。
ダイヤは顔を赤らめたまま、こう答えた。
「…ばかね、博貴君って」
博貴とダイヤちゃんの笑い声が聞こえた。
木から少し離れて見上げると、私が木に送ったイメージ通りの二人の姿が見えた。
イメージしていたよりダイヤちゃんの髪がぼさぼさな気がするけど、博貴がダイヤちゃんにケーキを食べさせていた。
私はいますぐダイヤちゃんに声をかけたい衝動をおさえ、今はそっとしておこうかとりさちんたちの元へ戻った。
博貴のおかげでだいぶ落ち着いたダイヤちゃんは、下にいる私たちに気づいて驚いていた。
「みんな、ありがとう!」とダイヤちゃんの声を聞けて私たちは満足した。
だから気がつかなかったのだ、ある人物が結界に近づいていたことに…。
「よし、じゃぁそろそろ戻るね!また明日ね、ダイヤちゃん!」
「えぇ…今日は本当にありがとう」
と、博貴が幹に足をかけ、降り始めた瞬間
「てめぇら…全員でなにやってんだよ…!!」
「げっ!!りくせんせぇ!!」
まさかのりく先生にバレてしまったのだ。
「おい、バカ博、さっさと降りてこい!!」
「ご、ごめんなさぁい!!」
と、博貴は素直に登った時間の半分くらいで地上に戻ってきた。
りく先生はダイヤちゃんにむかって「お前は関係ないから大人しくしてろ」と伝え、ダイヤちゃんは申し訳なさそうに窓をしめた。
「ったく、時間になってもこねぇし、結界の気配を感じてきてみたらこれだよ」
私のそばにきて小さくお説教するりく先生。
りく先生に言われて携帯で時間を確認したら、とっくに特訓時間を過ぎてしまっていた。
「ご、ごめんなさい!!」
「まぁ言い訳はあとでじっくり聞いてやるよ」
「は、はい…」
りく先生の前にキレイに整列する私たち。
でもバレたのがりく先生でよかった、なんて言ったらもっとお説教時間が伸びてしまうだろうか。
「…事情はわかった。でもな、お前ら大事な時期だってこと、もっとよく考えてやれよ」
「はぁい…ごめんなさぁい…」
「とりあえず、2年は帰っていい。明日の朝ここ集合で罰としてトイレ掃除だ。3年は残れ」
「え、で、でも実行したのは俺たちで…」
お説教の続きをさせれるのは自分たちで、先輩たちは無実であるとゆうた君は訴えた。
でもりく先生はゆうた君の訴えを却下した。
「例え見守っていただけだったとしても、こいつらにとっては少しのミスも許されない時期なんだよ。お前らの案に乗っかった責任は重い。だから気にせずに行け」
「は、はい…すみませんでした」
「あと渋谷もだ。東都生だからって関係ないからな」
「…わかりました」
と、私もゆうた君同様に後ろ髪をひかれつつも、あとにした。
続く




