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消えたアイドル  作者: 秋元智也
1/1

1話

ドンドン ドンドン


乱暴に叩かれるドアが煩くて敵わない。

イライラしながら鍵を開けると壊れるかと思うぐらいに思いっきり

ドアが開かれた。


「一体何だよ?」


不機嫌そうに部屋主が出てくると目の前にそっくりな顔の女性が立

っていた。


「私、アイドルになるから!」

「はぁ?」


その一言をいうと、家を出て行ってしまった。

さっきのは霧島奈緒。

綺麗なロングヘアにキリッとした目つき。

胸は少し残念な気もするが、それは親の遺伝というものだろう。


しかし、見た目なら誰にも負けていない。


地元じゃ美人姉弟と言われているほどだった。

それがいきなり何を言い出すのかと思うと、突拍子もない事をいい

だして出て行ってしまったのだ。

まだ高校生だというのに…。


いつか都会に行く。

そういう話は聞いたことはあるが、あまりにもいきなりだった。


まだ高二の夏だ。

アイドルをやるには遅い方かもしれないが、アイドルという職業が

そんなに稼げる仕事には思えなかった。


思い立ったら即行動の姉の奈緒は親の反対も押し切って出て行った。


「バカだろ…?」


残された弟の紗凪は呆気に取られていた。

弟と言っても双子の為、見た目はそう変わらない。


まだ身体もしっかり男らしくなっていないせいで、よく間違われる事

が多いのだ。


学校へ行くと姉の奈緒の退学手続きの紙を渡された。


「姉ちゃんは今日は休みか?」

「あぁ?出てった」

「は?出てったってどこへ?」

「ん?知らねっ…」


興味がないとばかりに返事を返した。

それでも聞きたがるのは同じクラスの同級生の月神渉だ。


姉の奈緒にぞっこんで、毎回告白しては振られている。


「なぁ〜マジでどこに行ったんだよ〜」

「知らねーって」

「お前が知らないわけねーだろ?」

「知らねーもんは知らねーよ!アイドルなるっていきなり言い出して

 出て行ったんだぞ?」

「アイドル?なら、まずは地下アイドルかな?まずはネット調べてみ

 るわ」


何かに納得したのか、やっとしつこい問い詰めに解放された。


いつも我が儘で、自分勝手な姉だったので、そこまで心配などしてい

ない。

何をやろうが、どこで何をしてようが関係ないのだ。


紗凪は生まれた時から、姉にそっくりなせいか姉妹に見られがちだった。

それを親が何を考えたか姉弟でドレス着せて写真を撮ったり、七五三な

どは二人に可愛い着物を着せたのだ。

そのせいで昔の写真はどれもスカートで写っている。


一種のトラウマになった。


「そういえば、紗凪は女装しねーの?」

「誰がするか!渉くん、パンイチで校内一周したいか?」

「いや…いや…いいっす」


やけにドスの聞いた声で言われると、やっぱり男だと思えてくる。

黙ってれば、可愛くて綺麗な女の子に見えるのだが、態度はどう見ても男

らしい。


「あ!ヒットした」


嬉しそうにスマホを眺めながら言うと、地下アイドルの紹介のところに

見慣れた顔があった。

奈緒に間違いない。


「地下アイドルってなんなんだ?」

「紗凪は興味ないもんな〜、地下アイドルっていうのは民間でアイドル

 を育成する場所で、駆け出しでもアイドルになって名を売りたい人の

 為の場所なんだよ。でも、衣装代や、交通費は自分もちで、よっぽど

 売れないと赤字でバイトを掛け持ちしながら、やってる子が多いって

 聞くけどな」

「奈緒のやつ大丈夫か?」

「そうだね〜心配だね〜。ってわけで、俺らバイトしょう!」

「はぁ?何で…?」

「仕送りだよ」

「やだよ」

「嫌じゃねーよ!奈緒ちゃんの為だろ?」

「知らねーよ!俺に関係ねーじゃん!」


月神渉は全く聞かない。

やると言ったら勝手に決めてしまう。

そして、簡単なバイトを始める事になった。

もちろん、それは全部奈緒に送る仕送りになってしまうのだった。


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