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姉の暴走

学園カースト上位のお姉さまが暴走。

翌日、僕は授業が終わると、いつものように図書室へ向かう。


姉との会話は一旦忘れ、今日は何を読もうかなと考えながら図書室に入ると、何やら中はざわついていた。


「図書室に絵梨えり様がおられるぞ」


「珍しい」


「何かの前触れか?」


そんな会話が聞こえてきたため、僕は集まりかけていた人込みをかき分け、目的の場所へ移動。

すると、案の定そこにいたのは、僕の姉・佐山絵梨だった。

ある一つの席へ座り、本を読むでもなく、ただいるだけだったが、そこはカースト上位。オーラが違う。

誰かが近寄るでもなく、広い空間が出来ていた。


「姉貴、なんでここにいるんだよ」


「おう、ユウか。たまには本でも読んでみようと思ってな」

 

そんなことを平気で宣う姉は、文芸部員。


図書室にいても不思議ではないし、むしろ読めといいたいが、スポーツ万能な姉は部活動の掛け持ちも多く、文芸部に所属している理由も、一つの運動部に縛られたくないからだ。

  

本音を言えば、姉弟きょうだいだと知られたくなかったのだけど、もはや手遅れだろう。


まあ、うっかり姉貴と呼んでしまったしね。

でも、本当に、何しに来たんだ。


そう思っていると、姉の視線は生方さんの方へと向いた。


「そんなことより、あれが生方だろ。デカいな」


「いや、もう何言ってんだよ、姉貴」


「何って、おもしろ……ユウのために、見に来てやったんじゃないか」


イヤイヤ、今()()()()()()って、言おうとしたよね。

完全に楽しんでるじゃないか。

くそっ、姉貴になんて相談するんじゃなかった。

今更言っても手遅れだけど。


というのも、そんな僕の心配をよそに、姉の暴走は始まった。

 

「ちょっと待ってろ。私が話を聞いてくる」


そう言って、カウンターに座る生方さんのところへ向かう姉。


こんなに人が集まってきているところで、僕がそれを阻止できるはずもなく、ただその様子を眺めていると「なんだ、そうなのか」とか「これからも弟をよろしく頼む」なんて言葉が聞こえて来た。


どうやら生方さんは、単純な姉を丸め込むことに成功したらしい。

これは非常事態だ。

姉公認となったら、さらにエスカレートするかも。


そう不安に思っていたら、戻ってきた姉からは肯定的な意見を聞かされた。


「ユウ、あの娘はいい子だから心配は要らん。それよりも、お前の感じていた視線は、別の奴だと思うぞ」


「えっ……」


「なに、驚くことではない。直接聞いてみたら、知らないと答えたからな」


と、そんなことをドヤ顔でいう、単純思考な姉。


だが、ちょっと待って。

犯人が直接聞かれて、『はい、私がやりました』なんていうだろうか?


そんな疑問の浮かぶ僕に、姉は決定的な証拠とでも言うべき事実を突きつける。


「それに、ユウ。お前がいつも座る席は何処だ?」


「えっと、ここかな」


僕はその質問の意味がわからず、いつも座っている場所を教えると、姉はニヤリと笑う。


「やはりな。よく見るんだ、ユウ。ここから受付のカウンターは見えないじゃないか」


「あ……」


そう、思い返してみれば、自分のいた席から生方さんは見えていなかった。

昨日、下の名前で呼ばれたことでパニックとなり、そう思い込んでしまったのだ。


これで振り出しか。


そう思う僕に、姉は衝撃的な言葉を放つ。


「まあユウも、私のようにいつも誰かに見られていれば、全く気にしなくなるだろうがな」


もう、二度と姉に相談するのはやめようと、僕は心に誓うのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


面白い、次が気になるという方、是非ブックマークをお願いします。

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