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他人の視線

場面は放課後の図書室です。

僕が図書室へ通い始めて、二週間。

すっかり定位置を確保し、穏やかな日々を送っていた。


僅かに開いた窓からは心地よい風が流れ込み、カーテン越しの太陽の光は安らぎを与えてくれる。


「ああ、気持ちいい」


教室で荒んだ心も、キレイに洗い流されるような、そんな気分だ。


なんて詩的な事を言ってみたけど、ここに人はあまり来ないし、いる人たちも黙って読書をするか、勉強をしているだけ。


外から聞こえてくる運動部の掛け声も、ここまでくれば静かなもので、全く気にならず読書に集中できる。

あとはテスト期間さえ乗り越えられれば、ここでの生活も安泰だ。


なんて思っていたけど……。


どうも、さっきから誰かの視線を感じる。

こっそり横目で見ても、誰かは全くわからない。


図書室を利用している人たちは、全部で七人。

男子生徒が僕を含めて三人、女子生徒が四人だ。


その誰かだと思うが、みんな下を向いており、僕を見ている人はいなかった。


けど……、女性がよく他人の視線はわかるっていうけど、それは確かにそう。


誰かに見られている。

それは確かだと思う。


どこからかはわからないけど、突き刺さるような、嫌な視線を感じるんだ。


でも、ボッチな僕を見て、何が楽しいんだろう。


普段から髪はボサボサ、顔も特別良いわけでもなく、身長体重も平均並みといたって普通。

目を引くところなど、何もないというのに。


心配性の姉が同じ部活(ぶんげいぶ)に入るようにと誘ってきたけど、あそこは女性しかいなくて居心地が悪そうだったから断った。


だから、クラスでボッチな僕に知り合いはいないのに、どういうことだ。

まあ、このキモオタクさが気になるってなら、話は別だが……。


でも、やっぱり見られている気がする。


自意識過剰って思われるかもしれないけど、自分に取柄など無いことは十分承知しているし、今までだって人に見られていると感じたことなんて、一度もない。


僕なんて誰も相手にしてくれないし、中学時代だって、友人と呼べるような人は誰もいなかった。

 

高校入学を切っ掛けに、どうにか変わりたい。


そう思っていた時もあったけど、結局やらかしてしまい、この状況ざまだ。


ダメな奴は何をやってもだめ。

それがこの世のことわりなんだ。


とても他人ひとに言えたことではないが、僕はそう悟っていた。

お読みいただき、ありがとうございます。


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