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バレちゃった――三雲麻沙美視点――

ヒロイン二人目です。

「はあ……、絵梨おねえ様が余計なこというから、優ちゃんにバレちゃったじゃない」


私は自宅へ帰ると、部屋の机に突っ伏していた。


よくよく考えてみたら、今日あった出来事は恥ずかしいものばかり。


普段、私が優ちゃんって呼んでるのもバレちゃったし、彼の腕も掴んでしまった。おまけに手を繋いで職員室まで行くなんて。



でも、元はといえば昨日、絵梨おねえ様から優ちゃんのことを聞かれたのが原因なのよね。


「麻沙美、お前は優と同じクラスだろう。どうだ、あいつは皆と仲良くやれているのか?」


なんてことを聞いてくるから、私どう答えていいかわからなくて。


「えっと……そうですね。優ちゃんはあんな感じなので……あまり人付き合いが得意ではないといいますか、ボッチです」


……って、真っ正直に答えちゃったじゃない。


でも、そんなこと絵梨おねえ様はわかっていたみたいで。


「フッ……やはりな。家では学校のことを全く話さんから訝しんでいたが、中学の頃と同じか」


「いえ……あのう、それ以上です」


……いやいや、なんで私、全部喋っちゃうのよ。

これじゃあ、告げ口したみたいじゃない。


流石の絵梨おねえ様も、ショックだろうなと思ったけど、やっぱり。


「そうか……なら、お前に頼みがある。明日のお昼休み、優を文芸部の部室まで連れてきてくれないか。私が言うと逃げるだろうから」


そんな弱気なことを言う、絵梨(おねえ)様。


でも、どうするつもりだろう。


「は、はい。それはいいのですけど、優ちゃんを呼んでどうされるのですか?」


私にはその意味が分からず、尋ねてみた。


「もう一度文芸部へ誘ってみる。城俵だけじゃなく、旗瀬川にも声を掛けるから、この意味わかるな」


「はい……、生方先輩ですね」


部長の城俵さんだけでなく、二年生の旗瀬川先輩までとなると、それしか無い。


「ああ、そうだ。あいつは本気らしいからな」


「わかっています」


もちろん私もわかっている。あの先輩は本気で優ちゃんを……。


「なら、問題ないな。色仕掛けだろうが何だろうが構わぬ、と言っておいた。優もあれで男だから、それで記憶が戻るかもしれん」


って、嘘っ! 優ちゃん大丈夫よね。


「ん、心配か?」


「はい、生方先輩は、そのう……」


「ははは、まあ、あのデカさだからな。私でも参ってしまうかもしれん」


いや、笑ってる場合じゃないでしょう。

優ちゃんは、絵梨おねえ様の弟なのよ。


そんなことでいいの?


「心配は要らん。優の拗らせ具合は半端じゃないからな。昔はどんな垂らしになるかと心配したもんだが、今はアレだ」


「そうですね。あの頃は三人で優ちゃんを取り合っていて、あの日も……って、すみません」


「いや、いい。辛かったのはお前たちも同じだからな。だが、私は本当にあの頃の記憶を取り戻して欲しいと思っている。優の忘れている、《《お前たち三人の記憶》》を」


絵梨おねえ様……」


そう、優ちゃんは私たち三人だけを覚えていない。

部分的記憶喪失なんていうのだろうか、お医者様も理由は分からないみたいなんだけど……。


それでも他のことは覚えているし、生活にも困らないので、そのままにされている。


けど、生方先輩も優ちゃんの記憶を取り戻そうと、必死なのよね。

なりふり構っていられない気持ちもわかるし、私もどうにかしたいと思うけど。


「でも、いいのか。もし優の記憶が戻ったとして、お前たちの誰が選ばれるかは分からないのだぞ」


そう、そこが問題なのよ。


あの事故の後、優ちゃんから私たち三人だけの記憶が抜けていた。


その理由を私たち三人のうち誰かに気持ちがあって、他の二人に遠慮しているんじゃないかって考えたのだけど。


それが誰か分からないから、みんな不安なのよね……でも。


「私は昔の優ちゃんに戻って欲しいです。たとえ私を選んでくれなくても、今の優ちゃんは見ていられないから」


「そうか。生方も同じようなことを言っていたが、絶対に譲らないとも言っていたな」


「なら、私も負けません」


だって、優ちゃんが大好きだから。





はあ……、なんであんなこと言っちゃったんだろう。


結局、一緒に帰ってくることは叶わなかったけど、たぶん何も話せなかったわよね、きっと。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


優は特殊な記憶喪失でした。

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