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もしも願いが叶ったら  作者: 生方冬馬
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拾い物

「あー、もう。先輩なんで出てくれないのかな〜」


大学の授業が終わって、何度も何度も晃雄先輩に電話をかけているのに出てくれない。


連絡待ってます。って書いてあったのに。もう。



別に先輩が入信している宗教に興味があるわけじゃない。


昨日、先輩からもらった杖を返そうと思って連絡を取りたいんだ。


フルーツタルトは食べてしまったが(あんだけ怖い思いをしたんだもん。良いよね? おいしかった)杖は高価そ

うなので返そうと思う。


だから連絡を取りたいんだけど……。


わざわざ返そうと思ってあの杖の木箱持ってきたんだけどな。これ、また持って帰らないといけないのかな。


そろそろバイトに行かないといけないのに……。


あー、もう。なんで私がこんなことしなきゃいけないの?!


頭にくるなぁ、もう。



イライラしながら駅前を歩いていると、道に小さいバッグが落ちていた。


うわー、これ拾ったら届けないといけない感じ?


無視しても良いんだけど……。


周りを見渡しても、誰も彼も忙しそうに歩いていてバッグに気を止めた人はいない。


しょうがない。すぐそこに交番あるからそこに持っていこう。



「じゃぁ、ここに名前と住所、電話番号を書いて。身分証持ってる?」


「学生証で良いですか?」


「良いですよ」


交番には年配のお巡りさんがいて、すぐに対応してもらえた。


「じゃ、念のために中身確認するね」


と言ってお巡りさんがバッグを開ける。中から出てきたのは、銀行の紙袋に入ったお札……。


凄い! あんな札束、初めてみた!


「あー、この金額ならすぐに持ち主が現れるかもね」


「凄いですねー。こんなお金みたことないです」


「凄いよね。あるところにはあるんだね。お札と、……あとは指輪かな」


いいな〜。あんな大金。いくらあるんだろう。


あれだけあれば、服がいっぱい買えるし、みんなとパーっと騒ぐのも良いな。


ああ、たかが時給千円でバイトするのがバカらしくなっちゃう。


欲しいな、大金。


「あの〜、すみません」


後ろから声がかかったので振り返ると、気の弱そうなおばさんが立っていた。


「この近くにバッグが落ちていませんでしたか。小ぶりの赤いバッグで……」


「これですか」


お巡りさんが私が届けたバッグを見せる。


「そう、そうこれです。よかった。よかった……。ありがとうございます……」


おばさんは泣きながら、よかった、よかったと繰り返した。


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