フルーツタルト
紙袋の中にも、カードが入っていた。
こっちは手書きだ。
『三木さんへ、司祭様の特別なご好意で進呈いたします。今度は、一緒に集会に参加しましょう! 連絡待ってます 五月田晃雄 080−〇〇〇〇−〇〇〇〇』
……。う〜ん。
カードを見ちゃうと悩むな。
やっぱり、先輩に返した方がいいかな。
これをもらっちゃうと延々付き纏われそう。
杖を木箱に戻して、紙袋にリボンとメッセージカードも戻して、ローテーブル置く。
「明日、連絡しよーっと」
クッションを抱えて、ソファに飛び込む。
「願い事かぁ」
ちょっと想像してみる。
想像するだけならタダだもんね。
怖い思いをしたのに、我ながら現金だなとは思うけど楽しいことを想像するくらい良いんじゃないかな。
うん。
「願い事、願い事、かぁ」
いざ、想像するとなかなか出てこないな。
う〜ん……。
あ、そうだ。
今日、みんなと一緒に食べに行こうとして食べられなかったスイーツがあったな。
有名なお店だから、すっごく並んじゃってて。
結局、ファミレスで食べたんだった。
「あのお店の限定フルーツタルト食べてみたいな〜。無理かな〜」
コンコン、と玄関を叩く音がした。
ビクッとソファから起き上がる。
うそ、また、先輩が来たの!?
怖い……。
でも、確認しないでじっとしているのも怖かった。
恐る恐る玄関のドアの魚眼レンズを覗く。
誰もいなかった。
よかった〜。
また先輩が戻ってきたのかと思った。
念のために、そっとドアを開けてみた。
廊下には誰もいない。
ああ、よかった。
って、あれ? ドアノブに袋がかかってる。
このマーク、あの有名店のロゴマークだ。
どういうこと?
中を確認する。
うそ、やだ。あのお店の限定フルーツタルトじゃん。
どういうこと?
あ、もしかして先輩が持ってきてくれたのかな。
今日、騒がしたお礼に、って。
うん。そうだよね。きっとそうだ。
先輩気がきく〜。
うふふ、やだー。ちょうど食べたかったんだよね。
そうだ、この間奮発して買ったあの高い紅茶淹れよ!
絶対にフルーツタルトとあうって。
楽しみ〜。