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当たり前のこと

読んでいただき、ありがとうございます。


 「ノエルちゃん!」

 観覧席の後方に逃げてきた人達の人混みの中で、ノエルちゃんを無事に見つけることができた。


「あっ、レナちゃん!」

 わたし達は、お互い手を握り合った。

「ノエルちゃんが無事で良かったわ」

「レナちゃんも!本当に良かったわ。突然、前の人を助けに行くんだもん。びっくりしたわ!」

 お互い顔を見合わせて、ふふふと笑う。

ノエルちゃんの無事だった顔を見てホッとした。


 そういえば、アドレおばさんの黒猫もノエルちゃんと一緒だったはず。

「アドレおばさんとこの黒猫は一緒?」

「あれ… さっきまでいたんだけど…」

 ふたりで辺りを見回す。


「この子を探しているのかな?」

 黒猫を抱いて聞き覚えのある声がわたし達の前に現れた。


「ディル!!!」

 顔を上げるとディルが黒猫を抱いて立っていた。

 少し息を切らしている。

 急いでわたし達のところに来たようだ。

「レナ、さっき呼んだのに… 逃げただろう」

 やっぱりバレていたのか。


「ごめんなさい。でも、ノエルちゃんが気になって」

「レナには言いたいことがいっぱいあるんだが…」

 ディルがノエルちゃんに黒猫を渡し、わたしを凄んで見る。


「待って。俺もディルに言いたいことがいっぱいある」

 その時、長身の騎士がひょいと現れた。


「ザックさん!」

ザックさんも息を切らしいる。

「ディル、勝手に観覧席に行くな。追いかけるのが大変だったぜ」

「すまない。ザック」


 ハッと気付いて辺りを見回すと、ディルやザックさんがいるおかげで、わたし達は相当目立っていて注目の的だ。

 ディルもザックさんも長身で整った顔立ちであり普段は歩いているだけでも人目を集めるのに、先ほど魔獣を倒した騎士様とあれば、相当目立つ。

 一緒に目立つのはなるべく避けたい。


「ディル、せっかく会えたけどわたし達はいまから帰るね。また、あとで…」

 言いかけて、ディルに右手を掴まれた。


 ディルが至極真面目な表情をしている。

 そして、わたしの前でディルが跪いた。


「レナ、多くの人々を守ってくれてありがとう」


 皇女として人々を守るという当たり前のことをしただけだ。


 王族は人々を守る盾である。


 ずっとそう言われて育った。

 お礼を言われるなんて想像もしていなかったので驚いて声が出ない。

 気づけば、ザックさんも跪いている。


「あの時、レナの防御魔法がなければ多くの人が魔獣に襲われていた」


 わたしはゆっくり深呼吸をする。


「ディルもザックさんもありがとうございます。わたしはわたしに出来ることをしただけです」


 ディルと視線を交わしお互い微笑む。


 まわりで一部始終を見ていた人が手を叩き喜び出し、しばらく拍手喝采となった。


 

 支部長もお礼を言いたいと言っているから一緒に来て欲しいと言われ、ノエルちゃんと黒猫と一緒に騎士団の応接室に通された。


「レナちゃん、大変なことになったね。レナちゃんが防御魔法ってものができることも驚いたけど、さっきのディルって騎士様がレナちゃんの彼氏さんだよね。素敵過ぎて眩暈がしたわ」

 ノエルちゃんが黒猫を撫でながら、興奮気味に話す。

「大袈裟よ。ディルは普通の騎士よ」


 のんびりお喋りをしていると、扉が開いて少し年配であるが髭を豊かに蓄えた支部長と思われる人を先頭に、ディルとザックさんが入ってきた。

 わたしもノエルちゃんもフカフカソファから慌てて立ち上がった。


「お待たせしました。レナ嬢にノエル嬢。わたしがラストリア支部で支部長の任にあるアーノルドです」

「「お会いできて光栄です」」

 わたし達はカーテシーをする。


「レナ嬢、この度はありがとうございました。我々騎士達もあの時、アーヴァンクに気づいて追いかけたのですが間に合わず、レナ嬢の防御魔法がなければ、多くの人々が襲われて大変なことになっていました」

 深々と頭を下げられる。


「レナ嬢の防御魔法は完璧でした。わたしは長い間、騎士をしていますがあんなに大きくて強い防御魔法は初めて見ました。そこで、折り入ってお願いがあるのです。急遽明日から行くことになった魔獣討伐に参加してもらえないでしょうか?」


「えっ?」

 突然の話に理解が追いつかない。


「支部長、それは俺は聞いてない!」

 ディルが慌てて口を挟む。


「デ…ディルは黙っていてください」

 ディルがグッと堪えるのがわかった。

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