俺が行く
「一体どこからの報告なんですか?」
俺は怪訝な顔をした。
「ラストリアの狩猟組合から騎士団に報告が上がってきたんだよ」
団長が難しそうな顔をして答える。
「どんな魔獣が出たんですか?」
ザックは怪しいと思いながらもこの状況を楽しんでいる。
「はっきりと魔獣と確認されたわけではないがラストリアから北西の方角に5キロ程行った池の付近でアーヴァンクが目撃されたんだ」
陛下も難しい顔をしている。
アーヴァンク…ねぇ…
物語では川や池に棲む,爪の鋭く、怪力の魔獣。
「ビーバーがかなり育ち過ぎたものを見て、魔獣のアーヴァンクと勘違いしたのでは?」
「その可能性が高いが本当にアーヴァンクだった場合、人間を食い尽くすと言われているから簡単には片付けられないんだよ」
団長が深いため息を吐く。
んんん…
いまなんて言った!!!
ラストリアの狩猟組合!!
ラ・ス・ト・リ・ア
おおっ!神様!ありがとうございます!
「へ、陛下!団長!俺が行きます!ラストリアに!」
ダメだ。
笑顔になる。
口元が自然に緩む。
「ディルが行ってくれるのか?なんだかうれしそうだな」
陛下が不思議そうだ。
「ええ。俺が現地に赴き、確認します。魔獣でないことを願いたいですが」
ザックが後ろを向いて肩を揺らしている。
笑い過ぎだ!
目的が魔獣でないことがバレるだろう!
「魔獣の確認と、最悪の場合は討伐もだ。本当に大丈夫か?」
団長が本当の息子を心配するかのような優しい目で聞いてくる。
「俺が行かなければ,他に誰が行けるんですか?俺は伊達に副団長じゃないですよ」
これは本当だ。
命を狙われ、自分より小さい少女に助けられてからは、ただ強くなりたいという一心で剣を振り続けた。
いまは騎士団で3本の指には入る剣豪だ。
公にはしていないが風魔法など魔法も使える。
レナのこともあるが、こんな時に王弟の俺が行かなくてどうする。
「……ではディル、頼んだぞ」
陛下は少し考えてから承諾してくれた。
「陛下はディカルト殿下に甘い。この方、他になにかを企んでいるのが丸わかりですよ。わたしの目を誤魔化せるとお思いで?」
団長の目が鋭い。
「……なにも企んでいませんよ」
団長の目を見られず、あさっての方向を見ながらゆっくり後退りをする。
「そういえば、ディル。「かみなりしいたけの聖女」ってなんだ?」
陛下が爆弾を落とし、俺は固まった。
「昼前にサンダースの西側の集落から騎士団のディル宛に大量の椎茸が届いたらしいぞ。なっ、そうだよな?団長」
こちらに向かって、してやったりとニンマリと団長が笑みを浮かべる。
「ディカルト殿下と同行されていた「かみなりしいたけの聖女」のおかげで大量の椎茸がすごい早さで生えたので報告とお礼だと騎士団にいたテオから届きました」
あの集落の長テオは俺が騎士団に入団してすぐの上司だった。
この間は空気を読んで、なにも知らないフリをしてくれていた。
「聖女が同行というのを俺にわかるように説明してくれるよな?」
陛下が急に兄の顔になった。
読んでいただき,ありがとうございます。
レナとディルのラブ少な目が続いています。
もうすぐです!もうすぐ!




