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ザック



「つまり話をまとめると、突然現れたレナ嬢と男女ひとつの部屋に泊まっているということですね」

「まとめ過ぎだ。なんだかザックが言うとエロい」

「事実、そうじゃないですか」


 今日、起きたことを丁寧にザックに説明したが、ひとつも微塵にも信じてくれない。


 ザックが額に手を当てて大きくため息を吐く。


「いままで女性不信の上、初恋を拗らせ、どんな美姫にもご令嬢にも目もくれず、わたしとの男色の噂までされた女っ気ひとつもないディカルト殿下がとうとうおかしくなった」


えっ?そうだったのか? 

ザックと男色の噂って…

俺は初めて聞いたぞ。

気になるが…

いまはそれじゃない。



「おかしくなったて…。女性不信なのは何度も言うけど継母の所為だ。あんなに殺されかけたら女性に恐怖心があってもおかしくないだろう」


「それはわかっていますよ。そんな貴方がとうとう女性と食事を共にしているかと思えば、幻の女性と一緒だったなんて言うんですよ。いままであんなに探して見つからなかったのに信じられます?向こうからやってきた?たまたま名前が一緒だったのでは?」


 ザックはふんっ!と鼻息が荒い。

 でも、俺に真っ向から進言してくれるザックを俺は信頼している。なくてはならない存在だ。


 こちらもわざと額に手を当てて、ため息を吐く。


「明日の朝、レナに会えば全てはわかる」


 チラリと横目でザックを見る。


「わかりましたよ。ディカルト殿下がおっしゃるなら、いまのところ信じることにしておきましょう」


 ザックが目を細めて笑った。


「そのレナなんだが… 本人は貴族の令嬢ではないと言うんだが、たぶんダズベル王国の第3皇女のレナリーナ姫ではないかと思うんだ」


「それは?」


「先日の卒業パーティーで踏んでしまって修理に出しているタンザナイトの髪飾りがあるだろう。あれがレナのものである可能性がある。卒業パーティーで祖母からもらったタンザナイトの髪飾りを落としたらしいんだ」


 ザックがなにか思い当たることがあるのか真剣な表情になった。


「そうですね。まず王族であったらなら、貴族の令嬢ではないと言いますよね。身分を知られたくないからそんな言い方をしたんでしょう。偶然にしても髪飾りの状況は一致しますね。レナ嬢の容姿は?」


「タンザナイトと同じ紫色の瞳に茶色の髪で細身だ。いまは街娘風にしているがレナの気品がダダ漏れていて変装になっていないが本人は全然わかってなくて、またそこが可愛くて…」

「いや、惚気まではいいです」

「もっと聞いて欲しいのに冷たいな」

「しかし、わたしが聞いているレナリーナ姫の容姿とは一致するようですね」


 ザックが考え込んでしまった。

 常に冷静沈着で決断の早いザックなのに珍しいこともある。


「ところで考えているところ悪いが、今回のレナのひとり旅にラストリアのアドレのパン屋が一枚噛んでいるぞ」


 ザックが息を飲む。


「まさか!あの魔女のところですよね」

「そう。あの魔女の… そこに滞在するらしい」

「……。あり得ない」

「そう思うだろう。でも実際に黒猫がいたんだよ」


 ザックの顔色が冴えない。


「?ザック、なんかあったか?」


「あ、いえ…」


 明らかにザックの様子がおかしい。


「そう言えば、今日の別行動って王都ベルでの用事はなんだったんだ?ザックが動くということは兄上の頼まれ事だったのか?」


「……。そうですが…。申し訳ありませんが内容までは言えません」


 ザックが目を逸らす。


「俺とおまえの仲でもか?」


「…すみません。陛下直々の依頼ですので。でもディカルト殿下にとっては良いことかも知れません」


「……。まあ、いい」


 尊敬する兄上にも、信頼するザックにも仲間はずれにされたようで少し腹が立つが追及しても仕方がない。


「ザック、ところでおまえと俺の男色の噂って何だ?」


 知らぬが仏


ボソリとザックが呟いた。


読んでいただきありがとうございます。


今回は少し短めでした。


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