ダンジョンのボス
ブラックハイサーペント
巨大なヘビのモンスター、その体長は100メートルを超える程だ
さらにその身体は硬い鱗で守られていて生半可は武器では傷を付けられない
そしてブラックハイサーペントは猛毒スキルを持ち浴びた者は瞬時に絶命してしまう。
「厄介な相手がダンジョンのボスだ」
このブラックハイサーペントはあるモンスターが成長した姿、それはブラックヴァイパーという体長は3、40メートル程でブラックハイサーペントとは比にならない位のモンスターである
しかし成長すればこれほどの巨大で凶悪なモンスターへと進化する。
実は修行中にブラックヴァイパーに遭遇していた事があった、だから悠亜は毒スキルを持っていたのだ。
〖シャァァァァ!〗
ブラックハイサーペントの掠れた吠えを合図に戦闘が始まる
悠亜が腰に下げた剣に手をかける、その瞬間。
「!?」
何かに横から薙ぎ払われた、一瞬の事で悠亜は何が起きたのか全くわからず壁に激突した。
「かはぁっ!」
いきなりの大ダメージを与えられ膝をつく、そして何があったかを改めて確認する
それはブラックハイサーペントの尻尾だった。
「は…速すぎるだろ?」
「バゥッ!」
心配そうにガルは悠亜に近づく
ガルはフェンリルの子、スピードには自信があるものの今の動きにはガルもついていけてなかった。
それのせいかガルは少し震えている、悠亜の目にはそう見えた。
「心配すんな、大した事ない」
震えるガルを気遣ってはいるもののダメージは大きいものだった
そんな悠亜達を待たんと言わんばかりにブラックハイサーペントは次の攻撃を仕掛けていた。
「ガル、避けろ!」
左右に散り避ける
ブラックハイサーペントは悠亜達がいた壁に毒霧のような物を吐く
するとその壁はブラックハイサーペントの猛毒の強さにより溶ける、それほど強力な毒のようだ。
「おいおい……世界樹の加護のおかげで状態異常は無効だから毒は防げても、溶かされるのはさすがに無理だぞ」
浴びていたらと思うと悠亜は鳥肌が経つほど恐怖する。
「さて……どう戦う……」
悠亜がそう考えてるのもつかの間、ブラックハイサーペントは次の攻撃に移った。
突進、身体をくねらせ前へ進む蛇独特の移動、しかしそれはただの蛇の速さとは別のものだった。
「速い!?」
まるで電車、時速60kmは出ていそうな速さだった
喰らえば高ダメージは必至、ここのボス部屋は広いがブラックハイサーペントの体長が大きい為避けれる場所が少ない。
「この………!?」
その速さを悠亜は紙一重に避ける、仕返しと言わんばかりに反撃をする。
「火炎放射!」
ブラックハイサーペントに火炎放射、しかし突進するスピードが速すぎるからか移動中による風圧でかき消されてしまう。
「うそだろ!?」
「がうっ!」
「ガル!?やめろ!」
ガルはまだ動いてるブラックハイサーペントに攻撃を仕掛けた、だがその攻撃は弾かれ逆にダメージを受けてしまう。
「キャイン!?」
「ガルーー!」
吹き飛ばされたガルは壁に激突し横たわる、いくら修行を行い強くなったからといってダメージは通ってしまう。
悠亜はガルに近づこうとするもののブラックハイサーペントは知恵があるのか悠亜とガルの間を境界線のように身体を巻き出す。
その速さの為かまるで竜巻のようだ。
「くそ……邪魔すんじゃねーよ…!」
ガルに近づきたい、ブラックハイサーペントを倒したい
そんな葛藤の最中、ある事に気づく。
「…これって……冗談だろ!?」
グルグルとまるで竜巻のように身体を巻きながら動くブラックハイサーペントに、まさか本当に竜巻が発生したのだ。
〖シャァァァ!〗
そして動く事をやめると同時に尻尾でその竜巻を飛ばしてくる。
あのスピードが上乗せされた竜巻、喰らえばひとたまりもないだろう。
「くっそ!」
後ろに飛び退く…が、その選択が間違いだった。
「壁…!?」
飛んだ先は壁だった、すぐさま左右どちらかに逃げようとするものの竜巻は目と鼻の先
今から移動しても竜巻の大きさを見てもどの道喰らってしまう。
絶体絶命、その四文字が悠亜の脳裏に焼き付く。
「くっそー!風には風だぁぁ!」
そこで思いついたのが、属性術の風スキルを使って自身に纏わせた
これでダメージを最小限に保つと悠亜は考えた。
はたして吉と出るか凶と出るか………。
竜巻は悠亜を襲う
このボス部屋に悠亜の叫びが広がる。
ブラックハイサーペントはその状況で勝利を確信したのか、飛ばしたガルの方を向きトドメを刺そうと振り返る。
〖シュルル……?〗
目の前に倒れてるであろうガルの姿がなかった、いや姿がないのはその通りだが、ガルが倒れてたであろう場所になにやら電気が帯びている。
「グルルルル…」
次に、ブラックハイサーペントの背後からガルの唸り声が聞こえた
そこにはなんとまだ成長しきっていないその小さな体で悠亜を背に乗せていた。
「ガル!」
悠亜はあるものを見た、それは足に属性術の雷スキルを纏わせていた。
「まさか…雷スキルで纏わせた足で移動術を体得した……?」
「バウっ!」
ガルはこの状況下で瞬時にスキルを得たのだ
スキルはレベルを上げる事により得られるものや、自分で編み出せるオリジナルのスキルを覚えられることも出来るのだ。
そして覚えたスキルで竜巻が当たる寸前悠亜を助けていた
悠亜の先程の叫びは、攻撃を食らったから上げたものではなく、唐突にガルに救われたから出たものだった。
「助かったガル!
そんで、ナイスだ!俺もそれを覚えればヤツと戦える!」
そう言いガルの背から降りる
と同時にガルは力尽きたように倒れる。
「ガル!?」
さすがにダメージが大きいようだ、悠亜を助けられたのも奇跡と言ってもおかしくない。
「ごめんなガル……こんな傷ついた状態で俺を助けて……ありがとう」
軽くガルを撫でゆっくりと立ち上がる。
「あとは任せてゆっくり休んでな……俺がヤツを倒す!」
覚悟を決め、同時に足に雷スキルを纏わせた。
「行くぜ!」
ブラックハイサーペントの前から悠亜がまるで消えたかのように移動する。
速すぎるのかブラックハイサーペントは目で追えない。
だが、悠亜もそのスピードに慣れていないのか、ダンッ!と音を立てまた別の壁に足を付けていた。
「速すぎるだろこれ、さすがガルってとこか…フェンリルの子は伊達じゃないな」
それでもこのスピードを駆使しなければ勝てないだろう
悠亜は無理にでも慣れようとどんどんその移動術を使う。
そしてとうとうブラックハイサーペントに一撃を入れる。
〖シャァァァーー!?〗
まだほんの薄皮一枚程度の傷だがブラックハイサーペントは驚きのあまり声を荒らげた。
「くっ……浅いか……まだまだ!」
次々にブラックハイサーペントを斬りつけていく、正直それだけでは倒せるかはわからない
それでも悠亜は斬り付ける、そしてブラックハイサーペントのある行動を待っていた。
すると、これ以上はやらせないと言わんばかりにブラックハイサーペントは先程と同じく身体を巻きながらその場で回転しだす。
これが悠亜が待っていた行動だった。
「それを待ってた、そらぁ!」
剣をブラックハイサーペントの真上に高々と投げる
それはまた、別のスキルを体得する瞬間だった。
良く見ると剣にも雷スキルを纏わせていた、そして悠亜は叫ぶ。
「落ちろぉ!
[避雷針]!」
回転するブラックハイサーペントの中心は台風の目のように空いて、そこへまるで雷が落ちるかのように剣が降り注ぐ。
これが悠亜の新スキルの体得
雷スキルを纏った剣は、地面に突き刺さると周りに広がる
いくら回転の速度があったとしても雷はブラックハイサーペントを襲う。
〖ブシャァァァァ!?〗
「おまけだ、水弾!」
今度は石に水スキルを纏わせブラックハイサーペントへ放つ
雷は水を通しやすい、その現象を利用しダメージを増幅させる。
これにはブラックハイサーペントも耐えることは出来ない、しばらく感電し力なく倒れた。
「………勝った…ははっ……勝った!」
喜びのあまり手を上げまるで子供のようにはしゃぐ。
「やったぞガル、俺たちは勝ったんだ!」
その喜びを共に分かち合おうとガルに近づく。
ガルも力なく喜ぶ
しかしガルは見た、そして力を振り絞り吠える。
「バウっ!」
「え?
がっ!?」
悠亜は攻撃を受けた、それは倒したであろうブラックハイサーペントからの攻撃だった。
攻撃を受けた悠亜は地面に叩きつけられる、その痛みを我慢しながらブラックハイサーペントを見た。
「な…なんだよ……そんなのアリ…かよ…?」
ブラックハイサーペントの皮がみるみる剥がれ落ちる、それは蛇の特徴の1つ、脱皮だった。
脱皮したブラックハイサーペントは、傷はもちろん雷によって焼かれた鱗も完全に完治していた。
「勝ったと……思ったのに……」
絶望な状況、あまりにも理不尽すぎて悠亜は逆に笑けてしまう。
「ははは……もう無理……」
ブラックハイサーペントは舌をシュルシュル出し入れしながら悠亜に近づき口を大きく開いた。
ガルも助けようと立ち上がろうとするもののダメージが大きすぎるため立ち上がれない。
力を振り絞って出来ることは、逃げるよう促すための吠えだけ。
悠亜ももう力が出ないのか立ち上がれない
それでいてブラックハイサーペントの攻撃も受け地面に叩きつけられたダメージもある、動ける状態ではなかった。
悠亜の眼前にブラックハイサーペントの口が迫る、さすがに死を覚悟して目を瞑り心の中でガルと、そしてフェンリルと世界樹に約束を守れなくてごめんと謝った。
だが一向にブラックハイサーペントに食べられるという事がなかった、不思議に思った悠亜はゆっくりと目を開ける。
ブラックハイサーペントの口は確かに目の前だった、だがブラックハイサーペントは行動を止めていた。
それは悠亜の地面に広がる魔法陣を見たからだった。
悠亜も自分の周りに展開されている魔法陣を見ては驚く。
なにが起こってるんだとしばらく驚いているとあるスキルを思い出した。
それは精霊スキル、この魔法陣は精霊召喚のものだった。
「…そうか………まだこれが残ってたんだったな…」
まだ戦える、人任せになってしまうがそんな事を言っている状況では無い
そう思った悠亜は早速行動に出た。
「俺たちを守り、俺たちの為に戦ってくれる精霊よ、出てきてくれ!」
右手を前に、左手で右手首を掴みながら精霊召喚を発動させた。
光が強くなり悠亜は手で目を塞ぐように翳し、ブラックハイサーペントも後退する
光が弱まるとそれは現れ悠亜に声をかけた。
「ようやく、私をお呼びになられましたね?」
声をかけられ悠亜はゆっくりと目を開けた、そこには1人の女性が悠亜の前に立っていた─────。
ダンジョン戦も大詰めとなりました、次回もお楽しみに!




