異世界転移―オッサンら、生斬る!2部
〔魔女〕
太木の上に、身をひそめて数分。異世界で、ヤバイ状況にある事を認識した。
赤い毛の奴が、迫って来ているのも。
先ずは、それを如何するか相談する。
「知之。あいつが、襲ってきたらどうする?やっつけるやろ⁉」
「まだ、襲って来るかも判らんし。遠いで、ハッキリ見えてないやん」
「そやけど、来よってからじゃ遅いでよ。俺らに気付かんと、どっか行きよったら、降りて石の所まで戻ろ。ほんで、後のこと考えよう。見っかってて、襲って来よるなら、2人で、やっつけようや!」刀持ってるでか、やれる気満々な俺。
「大丈夫か? やっつけられるんか!」と言ってる割に、余裕の顔してるし。刀による、勇気パワーか!
奴を、見ながら待機。ようやく、全身はっきり見えた。
赤い毛の体、体長2メートル程。四足歩行で、熊みたいな歩き方。顔は、シェパード! こめかみ辺りに、黒い突起物(角かな)。
奴は、しきりに匂いを嗅いでいる。俺らが、来た所を迷わずたどってる。こりゃ、間違いなく下までくるな。
「知之、あいつ登ろうとしたら、飛び降りながら刺すし。あかんかったら、追撃頼むでな」
「了解…でも、高いな~」なんや、高サの心配か!
「どうもないて、地面堆積物でブワブワやったやん」作戦タイム終了、下まで来よった。
デカッ! 頭から尻まで、2メートル以上有るな。尻尾長がいし太い。匂い、嗅ぎまわっとる。まだ、見っかてはない。
カサッ!
知之が、足を動かした際、音がした。さっと、知之を見る。苦笑い。2人同時に、下を見る。
奴は、ゆっくり立上がる…目が合った。
グガアー‼
ヨダレを飛ばし吠える! 立ちよると、俺らとの距離半分!
「先輩!! デカイって、やれる?」心配そうな顔しやがって。
まあ、デ力さには、正直きビビッてる。ほんでも、顔シェパードやし、何匹か飼ったことある。
「全然行けるって! 俺らには、これがある!」じゃ~ん、刀!
「今の俺は、侍です!」チャラけて知之を見た。いつもの呆れ顔!「ヨッシャ! 何時でも来い!」鞘を、奴に投げ付けた。 コッン!頭に命中。グワーグワ吠え木に、掴まり立ちした。
「少し、登って来ょたら行くで!」俺は、刃先を下に向けしっかり握り締めた。
「登って来たで、先輩!!」
「オラッ!」登って来た、奴の顔はその分近い、外しようが無い! 刃先が、頭部にコッンと当った!
スルスルっと燕まで、刺さる。一瞬、ぶら下がるようになった。直ぐに手を放し、下に落ちた。慌て、距離をとって奴を見た。ズルズルドンバタ! 仰向け、大の字にひっくり返た。
「知之、止めさせ!」鞘から刀を抜き、飛び降りた。股ぐように落ち、その勢いで見事に刺す!
口から、変な汁と変な音!
「先輩、こいつもう死んでるで!」素早く飛び退き、何度か踏んで確認している。
「マジか! ほな、一発目で即死か?」俺も、踏んで確認する。
「ヨッシャ!やっつけたー!」喜んでる俺。知之は、早くも死体に夢中。
「やっばり、異世界やな! こんな生物、地球にいんわ!」
「顔シェパードぽいけど、角あるし、目猫やし、キモいな。こいつどうするの?」持って、行きたそうな顔やな。
「こんなん、重もうて持って行けんて!」頭に刺さった刀を、抜く。スルスルと抵抗無く抜けた!刀身に、血が付いてるけど、テフロン加工みたいに、血球になって弾いてる。アレッ、サビてたのにピカピカや! 素振りすると、綺麗になった。知之の刀も、同様に。
鞘を拾い、石の所までもどってきた。
さっきは、奴で気に出来なかったが、獣道らしき筋発見。
「取り合えず、これを行ってみようや」俺からの提案にうなづいた。歩きながら、異世界物の話しになった。
「先輩、異世界物の定番とか判る」そやねん。こっち系は、知之の得意とする分野だけに、どや顔。
「ラノベアニメは、たまに見るって」漫画も、たまに読むかな。
「ステータス見れたり、アイテムBOX、魔法スキルとかってあんねんけど。僕らには、何にもないな。ステータスオープン!」異世界好きの知之にしたら、この現実は、残念なんやろな。
「有るがな、この刀が! ピッカピカやぞ~!」シャキーン!抜刀する。
「これ剣と違うし、借り物やし。定番やと、あっちには帰られへんねん」知之
「それはまだ、判らへんて。来れたんやで、帰れるかも」俺
「あ~魔法、使えんかな~。この甘い匂い、お腹減ってきた」俺も、腹空ってる。そやねんドアから、ずーとこの匂い。何の匂いやろうか?
腕時計見ると、13:21分お腹も減るわ。
「あれ、小屋ある!」知之が、走り出した。
「ちょっ、走んなや!」ホッしながら、追い掛けた。
木造平家で煙突があり、洋風な作り。4本の石柱に囲まれた畑、生活感がある。玄関だろう扉を、発見!
さっき見たサイズの扉に、変な感じはする。やたらと、甘い匂いもする。
コン!コン!一応ノックする。
「コンニチワ!誰か、居ませんか―!」こんな言い方で、良かったかな。言葉通じるかな、考えながらに。
直ぐさま女性の美声!
「どうぞ、刀置いて入って」
この美声には、聞き覚えある。
なんで、刀持ってんの分かんの? と知之も、思ってるに違いない。
ここで相談するのもなんやし、言われるとおりした。
ガチャ!
「失礼します」
「お邪魔します」
体を起こして、主を見る…!
「いらっしゃい、水道屋さん」
美女だ!腰に手を当て、凛と立っている。でも、老婆を連想する。てか、水道屋って! チラッと、知之を見る。見とれとる…!
「ずーと見てましたよ、換気、有り難う御座います」そう言って、お辞儀する。
「やっばり!!」間違いなく、あの老婆だ!
「私、魔女です」