異世界転移―オッサンら、生斬る!1部
〔老婆〕
Г知之、メーター止めてー!」必死に両手で押さえる指の隙間から、凄い勢いで飛び散る水。
1人暮らし老婆からの依頼で、古民家の漏水修理中!
水道メーター1次側の止水栓を締める前に、破損している水道管を切断してしまった。
からだ前面ビチャビチャになりながら、水が止まるのを、ちょっとパニクリながら耐えていた。
Г水圧弱なってきた…」ほっとつぶやきながら、我に返った。
我こと松安法夫、41才バツ1独身。趣味、SOCCERとav観賞。外見ツルピカ禿丸ガッテン系、内面優しエロ変態かな?!
「先輩また、やったんかー!」知之が、小走しりで来た。
知之こと林知之、40才未だ独身。趣味、MMORPGネットサーフィン。仕事以外は、ちょっぴりひきこもり。
外見ポッチャリワイルド系だが、内面もの凄く優しく、女の子には、紳士的。因みに、高校時代からの後輩である。
「毎回やらかすなー! たまたま、メーター近くに僕が居たから、この位で済んやで」と、いつものことやで顔。
「アホか、2回に1回位やし」ビチャビチャになった服を、摘まみながら照れ笑い。
「ちゃうねん、たまたま切ってもた」言い訳になって無い、いつものツッコミ待ち顔。
こんな町の水道屋
何時ものように無事漏水修理も完了し、老婆に終了したと告げた。
「ご苦労様、有難う御座います」と、老婆らしからぬ美声。
続けて、「別に頼みたいことが、あるんやけど…」またも、美声!
「どんなことですか?」聞き返す。
…このタイミングでの頼み事は、普段なら気乗りしない!
なぜ素直な気持ちで、聞く気になっている。
なんでや?
老婆の声と容姿が、原因にほかならない!
線は細く、身長165㎝位、背筋ピンで、乳不二子系、小顔で? シワシワ? エロい? 甘い良い匂い! 顔を、マジマジ見るのは失礼、認識したいねんけど、なんか変な感じ!
多分、俺好み的、老婆なのだろう!
頼みとは、留守にする間の換気。次の日曜から一週間、2日に1度空気の入れ換えしてほしいとのこと。
しかし、初めて仕事させて貰ったお客様。そんな俺らに、頼むか普通?思わず…!
「いや、アカンでしょう僕らでは!」初めて会た俺らにって!
俺は、老婆の胸から顔へと視線を上げた。
「私し、親しい親戚、知人居無いし。近所付合いも、挨拶程度だし。お兄ちゃん達の仕事してるの見てたけど、暖か楽しい感じが良くって御願いしたい。駄目かな?」
そんな風に言われたら、ええに決まってるがな。なんか、スンゲー嬉しい。
「引き受けます!」と即答する俺!
だが一応、換気に関する物以外は、触りませんからと口誓約。楽勝な仕事である。
「開けて欲しい窓教えるから、ついて来て」と老婆。
靴を脱ぎ、2人して縁側の方と付いて行く。1階縁側の窓から、順に教えて貰い2階へ。
なんやろ、良い匂いするからか、老婆なのにムラ付く後ろ姿。階段上ってる時、お尻触りたいって。色気有り過ぎです老婆。
スタスタ2階も、一通り教えて貰い。
あと、一番奥の蔵で最後らしい。蔵あったんや?
もう一度、1階へと降りる。
しかし、綺麗にしてやるわ。無駄に物無いし、置いたるもん、どれも値打ちの有りそうな骨董品。
奥に長広い廊下の最奥、引き戸の前まで来た。
Гこの奥に蔵が有るんやけど、入って直ぐに階段あるから、足元気を付けてや」老婆は、戸を開けパチンと照明のスイッチを入れた。
「家の中に、蔵がある!」知之…!
「すげー!初めて見た」俺…!
感心している2人に、老婆。
「大そうなことしてるやろ、蔵を囲うってな~」そう言いながら、蔵の扉を何気に開いた。
蔵内には、照明が付いて無いらしく、置いてある懐中電灯を使様する。蔵唯一の灯り窓兼、通気口、これで最後である。
帰りしなに、家のスペアーキを預かった俺は…
「再来週の日曜夜、鍵お返しにあがります」今度は、胸を見ないよう気を付けた。
「それで結構です。宜しく御願いしますね」老婆
2人して
「おおきに、有難う御座いました~!」
老婆の家を出て、近くのコンビニに寄る。缶コーヒーを買い、喫煙場所で恒例の反省会。
「先輩、さっきのおばちゃんの顔おぼえてる?」知之が、困った様に聞いてきた。
「ほんなもん、覚えて・るが・なぁ……」と言いもって、顔思い出せない!「イヤ、待って、アレッ、思い出せへん!何で?乳デカくて、エロかったよな!」チョイパニ!
「そやろ、乳しか思いだされへん?」半笑いやし!
「なんか、変な感じはしてたわ!乳と尻ばっか見てたで!!まあええやん。得した感、めっちゃあるし」俺、半笑い!
「それは、あるな!」2人して納得笑い! 深く考えるのは、やめた。
〔異世界〕
老婆が、家を留守にしてから、3度目の換気。楽勝と引き受けたけど、退屈で気を付かう。1時間程してから、閉めて回る。1.2度目は、1人で済ませた。今日は、知之も一緒である。喋る人が居ると、退屈な1時間も、短かく感じるものだ。
Гほなぁ閉めよか!知之は、2階行ってくれるか」と指示し、1階を閉め始める。蔵以外を、閉め終え。蔵へと向かう途中、2階を終えた知之と合流、一緒に向かう。蔵中窓(通気口)が、開いて居るだけに、薄暗くも見えている。閉めようとした時
「先輩、そのまた閉めたら真っ暗闇なるで!懐中電灯、何処や?」そう言われて、気が付いた。開けた時使って、手にしたまま玄関先で休憩したんや…
「ゴメン!玄関に置いといたままや、テヘぺろ!」茶目ながら言った。
「またや、ちょっと待ってて!」と言いながらも、取りに行って来れる。良く出来た後輩だ。
薄い蔵の中、マジマジ見渡す。1人の時は、何となく怖く、足早に出て行って気にしなかったが! 蔵と言えば、お宝やん。興味深々に目を凝らす。老眼気味の俺には、厳しい照度だ。沢山の木箱、蓄音機、槍、くわ、すき、刀。
「刀って、男のロマンだぜ!」手にとりたいが、ここは我慢だ。
ぅん!……「エッ!ドア?」
「先輩、懐中電灯!」知之が、蔵の中に入って来た。
「知之、こっちにドアが有る!怖っ、部屋でもあるんかな?」
「何処に?」懐中電灯を付け、俺の方に向ける。
「ほれ、ここよ!」蔵に、あわない洋扉。大きさも、小人サイズ。
「ほんまや、小さ!飾り扉ちゃう?」とまどいもなく、ドアノブを回す知之。ガチャガチャ…!
「ロック掛かってるわ!」カチャッ!
開けようとする知之に!
「待てッ!開けんな、なんか嫌な感じするわ」俺のこう言うの、良く当たる。
「何でよ!開けて、見るだけやん。なにを、ビビッてんの」知之は、開ける気満々。こんな時は、なに言ってもアカン。
「開けるなら、ゆっくり開けろよ」中見たら、気が済むやろ。見るだけやしな。
指示どうり、そろりと押し開ける。俺も知之も、かがみ込んで覗き込む!
フワーッと甘い匂いのする風、手前から見える範囲真っ暗。
「知之、奥の方照らしてな」しゃがみ込み、全容を確認する。
「先輩、部屋違う。通路ちゃうか?ずーっと奥、あれ外の光り、出れるんちゃう」
確かに、外の光りぽい。懐中電灯で照らすと、幅1メートル程、高サ2メートル程、充分立てそうな通路だ。床?地面ぽい?入るなら靴が要るなぁ。
「靴取って来るで、待っとけよ!」言うなり、小走りに玄関に向かう。俺の方が、行く気満々やな。2人分の靴を持ち帰る。
「先輩、向こうから変な声聞こえる!」隣の家の声…!
「お隣さんかな?」良く考えると、あの方向に、家は無なかったはず。
…!フ“ゥグヴバアァー!…
「今のか?聞こえた!あっちの方向って、竹山やったよな!猪とか、猿やな。武器借りて行こ。借りるだけやって!」あの刀、2本をお借りした。試しに抜いてみる。スーッ…!
抜く時、カチャッて音せんのやな。
「重っ!刃ピンピン本物やんけ、スゲ~!」トキメキに興奮、童心に戻る。久しぶりの気持ちだ。しかし、ところ所サビてる。
「ア~ア!ええのかな勝手に借りてきて、怒られても知らんで」相変わらず言うこと、冷めとる。でも、渡した刀しっかり握り締めてるで。お前も、嬉しいくせに!
靴を、ドア向こうの地に置き。くぐり抜けながら、履く。
「先輩、先行ってや…!」懐中電灯を、俺に渡した。いざとなると、怖じ気付きよるねんな。
地面、壁、天井を、懐中電灯で確認する。全て同じ石、表面全て三角形。三角形の大きさと形は、まちまちではある。
「なぁ知之、この石屋スゲー技術やな!」
…!フ“ゥグヴバアァー!!
また、聞こえてきた!しかも、出口に近付いた分なのか。さっきより、鮮明かつ、大きく聞こえた!
Г先輩!!…」俺の背中を、軽く押しよる。ビビッたの、お前だけちゃうし!
「アホ!押すなや!…引き返すか?」と聞き返している感じで、促している。振り向いた時に、懐中電灯が、知之の後ろを照らした。三角形柄の壁が!…
「後ろ、壁で塞がってる!」…有り得ない事が、起こっていた!
数十メートルは、入って来たはずの通路。知之の後ろ、30センチ位に壁!2人して、ペタペタ触って調べる。左右の壁と同じで、壁のみ。どうなっているのか、判らないままに。
「取り合えず、出口に行こう!」側壁に手を当て、知之越しの壁を照らして進んだ!照らす壁との距離が、まったく変わらない。
「壁、着いて来てるって!怖っ!」不思議から、怖くなって来た。知之に肩を掴まれながら、小走しりに出口へ!音も無く、着いて来る。壁にビビり過ぎて、出口からの奇声は、一旦忘れた。
出口からの光りで、視界が一瞬真っ白になった。その後、見たのは、雑木林…!
そして、直ぐさま出口を、確認する。先に知之が!
「出口無くなってる!」
そこには、少し開けた雑木林に2本の石柱が、立っているだけ。
「ここ何処や!家無い、竹林ちゃうし!全部無い!」その時!
…ポキッ!バキッ!ガザッ!
木の折れる音、枝を踏む、草を払う感じの音!
…!グヴバアァー!!
「知之、ここ少し離れよう!奇声の逆行くぞ!」極力、音がしないようにいどうする。
「先輩、木に登って隠れような」
「せやな!」目の前に、いい感じの大木があった。
しかも、ツタが、びっしり巻き付き登りやすそうだ。
登るのに刀が邪魔になるので、腰の後ろ位でベルトに差した。
俺が先に登り、知之にトレースさせる。体カ系は、俺の分野。
しかし、お互いにオッサンでは有るが、職人!早くも、6メートル程登り、太い枝に落ち付いた。
「なんやろ熊かな?熊やったらどうしよー!」知之の心配は、ごもっとも。あの声は、猪、猿、鹿以外の声や。
「流石の俺ら田舎もんでも、熊の鳴き声は、聞いたこと無いもんな」
「あんな奇声、聞いたこと無いもん」やば顔の知之、久々見た気がする。
「静かにして、やり過ごそうや!」俺は、そう言って目をつむった。少し荒い2人の呼吸音、遠い鳥の鳴き声、微かに甘い匂い。
来た方向からバキッパキ音。
そのバキッパキ音は、明らかに近付いている。
俺らの匂いか?
音のする方を、凝視する。老眼だが、遠くは良く見えるねん!
「なんか、赤い奴こっちに来てるわ!」やっぱり匂いか!
思わず、空を見上げた…!
「なぁ、ここ地球ちゃうんちゃう? 空、見てみ知之!」
木々の隙間から見える青空に、土星のような惑星と島…!
「土星と、空島やな!」ポカンと知之、やば顔から埴輪顔!
「異世界やな!」