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ゴブリンが綺麗好きで何が悪い!  作者: ロドリアンヌ
8/10

第8話 死闘!

 オレ達のパーティーは外敵を洞窟から遠ざける遊撃部隊の役割を担っているので、最近は森を探索する機会が増えた。


 そんなある日のこと。


 森の中の少し拓けた獣道を4人で歩いていた。

 いや、カインはハムートに乗っているので、実際は3人が歩いている。

 ハムートは羽ばたかなくても飛べるので狭い場所でも関係ない。

 宙に浮いている状態なのでちょっと不気味だが…


「あんたいつもハムちゃんに乗っててズルいのよ!」

「ハムートのご主人様はオレだからなあ!いや~参った参った!」

「……1人の時は精々後ろに気を付けることね」

「何する気だよ!?」

「キュルル!キュー!」

「何て言ってるんだ?」

「『2人ぐらいだったら平気だよー!』と言ってる」

「じゃあ、ローザ!一緒に乗せて貰いましょ!あんた早く退きなさいよ!」

「オレと一緒に乗るっていう発想はないのか!」

「嫌よ!変人が移るじゃない!」

「言葉の暴力!!」

「あはは…」

 和気あいあいとした感じだが、一応オレが索敵の魔法で警戒はしている。

 最初の探索の時とは大違いだ。



 キングが昔話していた通り、森の中には冒険者とおぼしき白骨死体があったり、装備品などが稀に落ちていた。


 と言うかこの森で冒険者死に過ぎじゃないか!

 それともここの魔獣が強いのか?


 まあ、死んだら教会に戻ったり、セーブした所からやり直せる訳では無いので至極当然なのだが…


 冒険者の装備品もこのままここで使われず朽ちていくより、新しい誰かに使われたほうがずっとマシだろう。

 そうやって色々拾い続けていたら、結構皆の装備も充実してきた。

 カインの胸当てやローザの杖、リディアのマントなんかがそうだ。


 魔獣との戦いも何度か経験し、皆との連携も様になってきた。


 まずローザが皆に支援魔法をかけ、オレが壁役になって敵を足止めする。

 後方からリディアとローザの魔法で攻撃、カインは敵の頭上から空襲する形だ。

 敵は正面のオレと頭上のカインの攻撃を気にせねばならず、タイミングを合わせれば同時攻撃も可能だ。

 敵が単体の場合は、この戦法で常勝している。

 もし敵が群れの場合でも、カインが壁役に加わりハムートが上から敵を重くして動きを阻害することで、問題なく勝利している。


「オレ達って結構強いんじゃね?」

「偶々強敵と出会ってないだけだろう、どんな敵でも絶対に油断はするなよ」

「そうよ、セシルの言う通りよ!1人が戦闘不能になったら全滅の危険もあるわ」

「わかってるよ!だけど一度も怪我とかしてねーからそう思っただけだって」

「そうならないようにセシルが考えてるんだよね?」

「ああ、死んだら終わりだからな。本当に敵わない敵と出会ったら逃げるのも作戦の1つだ」

「そうだな!オレはセシルの指示に従うよ」

「キュルルルルー!」

 油断してオレに負けた冒険者の様に、戦闘では何が起こるか分からないのだ。

 どんなに弱い敵でも注意が必要だろう。



『キャアアアアーー!』

 そろそろ森を抜ける所まで来て引き返そうとした時、何処からか悲鳴のような叫び声が聞こえた。


 声が聞こえた方向だと、森の外か?


「森の外に出るが、皆良いか?」

 オレの指示に皆が黙って頷く。


「ローザ!念のため支援魔法を!」

「了解です!『トリプルバリアー』!!」

 ローザが唱えた魔法のせいで皆の動きが止まってしまった。


「ローザ、何これ…」

「ちょっとズルっぽいんだけど、三つの魔法の詠唱を同時にやってみたんだ~」

「は?」

「みたんだ~、じゃないわよ!意味わかんないんだけど!」

「プロテクトとマジックバリアーとディフマインドの効果だよ!」

「効果の話なんかしてないわよ!このバカ!」

「バカって言われた…」


「その話は後回しだ!行くぞ!」

 オレも気になったが、支援魔法には変わりないので説明は後からとことん聞くとしよう。


 オレ達が森を抜けると人間が使う街道のような舗装された綺麗な道に出た。

 少し離れた所に馬車が倒れており、一匹の魔獣と人間が争っているように見える。


 魔獣はかなり大きく、護衛と思われる人間があちこちに倒れていた。戦っているのは2、3人だけだ。

 どうやら、ドレス姿の女性を庇って戦っているようだ。


「セシル、どうするんだ?」

「…人間のほうを助けよう!」

「セシル!?」

「いや、セシルの言いたいこともわかるわ、あんな魔獣放っておいたら他の皆が迂闊に洞窟の外に出られなくなる」

「わかった…、セシルが言うなら」

「ありがとう。カイン!取りあえず魔獣の注意を引けるか?」

「よし、ハムート!ハムート爆弾だ!!」

「キュ!キュルルルル!!」

 ハムートが、高速で魔獣に向けて突っ込んでいく。

 途中で自身の重さを倍加して魔獣と衝突した。


「グガァーー!」

「キュルーー!」

 一緒に吹っ飛んでいった…


『な、なんだ今のは!?ワイバーンに見えたが…』

『こっちからはゴブリンが来てるぞ!』

『もう、ここまでか…』

『姫は命に換えてもお守しろ!』


 人間が言っていることは理解出来るが…、どうやら練習の成果を見せる時が来たようだ。

 オレは、護衛にある程度距離を空けてから叫んだ!


『助太刀スル!』

 パーティーの3人が口を開けて驚いている。

 日本語を覚えたての外人みたいなイントネーションになっているが、なんとか人間語を喋れているようだ。


『今、ゴブリンが喋ったのか?』

『ソウダ!オレノ名前ハセシル、アノ魔獣ハオレ達二任セロ!ワイバーンモオレ達ノ仲間ダ!』

 そんなやり取りをしていると、ハムートが戻ってきた。


「キュー!キュルー!」

「『吹っ飛ばしたけど!全然ダメージ無いよー!』と言ってる」

「!!」

「グアオォォン!!」

 カインが通訳した瞬間、怒号か響き渡った。


 ハムートの体当たりでダメージが無いとすると、レベル的にはオレ達より遥かに上だな…

 だがあの魔獣を放置しておくことは出来ない。


「皆!いつもの敵が単体の場合で行くぞ!」

「いいぜ!」

「でも!それじゃ、セシルの負担が…」

「ローザ、セシルを信じましょ!」

「…うん!わかった」


 皆が散々に移動してる間にオレは魔獣の前に立った。

 隆々とした筋肉、鋭い牙と爪、殺気を目の前のオレに叩き付けてくる。流石に物凄い威圧感だ!

 普通のゴブリンだったら耐えきれずに気絶してるなこれは。


 神経を研ぎ澄ませ!己を奮い立たせろ!オレが抜かれれば皆が死ぬ!

 自分にそう強く言い聞かせて、自身を追い込む。


「デカイ犬っころだな!オレが躾してやる!」

「グオオオォーー!」

 挑発には乗ってくれたな…、来い!



 魔獣が体勢を低くし飛び掛かってきた。

 速いが…爪の攻撃だと、左右どちらかだ!


 …右か!まともに受けたら体ごと持っていかれる!

 集中しろ!!

 右手の剣に爪が触れた瞬間、剣の角度を僅かに変えて剣に掛かる力の方向を変える。

 だが相手の腕力の方が圧倒的に上のようで、全部は受け流せない!

 オレはそのまま体を左回りに捻り回転させる。

 回転させた勢いのまま、左手の剣を振り抜いた。


 魔獣の左腕に剣が刺さる感触がしたので、剣を手離し体を逆回転させ、右手の剣を先程と逆の軌道で腕の反対側から切りつけた。


 ズバン!!

 そんな効果音が聴こえた気がした。


「グアアアッ!」

 魔獣は突如無くなった左腕の感覚と痛みで僅かに動きが止まる。


 オレはすぐさまその場を飛び退き、詠唱を短縮した中級風魔法を発動。


「『ストーム』!」

 魔獣の上から突風を叩き付ける。


「ハムート!頼む!!」

「キュルー!」

 ハムートの重力倍加で更に動きを止める。


「リディア!ローザ!」

「『ラーガ・エリク』!!」

「『ホーリーフレア』!!」

 2人の魔法が魔獣を直撃した。

 視界を眩い光が埋め尽くす。

 オレ自身も魔獣とそれほど離れていなかったため、衝撃波で吹き飛ばされた。


 ラーガ・エリクは風魔法上級の、物量をも伴った特大の雷を落とす魔法。

 ホーリーフレアは光魔法上級の、魔力が濃縮された球体が落ちてきて対象に触れると聖なる力が炸裂する魔法だ。


「ガア…ア…」

 上級魔法2発が直撃した筈だが、魔獣はまだ生きていた。


「しぶといな…、だが終わりだ!」

 オレがそう呟いた直後、物凄い衝撃と共に魔獣の頭が地面に沈み込む。まるで隕石が衝突したかのようだ。


 魔獣の頭からはカインの槍が生えていた。


「どうだ!?」

「ああ、オレ達の勝ちだ!!」

「よっしゃあああ!!」

「やったー!」

「まあ、当然よね!」

 皆がオレの元に駆け寄って来る。


「セシル!血が…!」

「やっぱり受け流し切れなかったか…。ローザのプロテクトのお陰で薄皮一枚で済んだみたいだ。助かったよ」

「でもちゃんと治すよ!『トリプルヒール』!!」

 オレの全身が光に包まれ、元通りになった。

 そう言えばローザの魔法のこと聞かないとな。



『グレイトウルフが瞬殺だと!?』

『ゴブリンが上級魔法を…、見たこと無い魔法もあったぞ…』

『姫様、危険です!お下がりください!』


 それよりこっちが先か…






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