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ゴブリンが綺麗好きで何が悪い!  作者: ロドリアンヌ
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第2話 劇的ビフォーアフター!

 あれから数日経った。

 ずっと洞窟の中だから正確には分からない。


 オレは今日も掃除に勤しんでいる。

 最近は、朝一から昼過ぎまで掃除を頑張り、その後は広間で剣の訓練をしている。


 剣はボスの部屋にあった中から選んだ。

 魔剣でもあれば、ゴブリンのチート無双に早変りする所だが、生憎置いてあったのは普通の鉄の剣。

 強度と自分の背丈にあった得物を選んで終わりだ。

 因みに剣は錆や刃こぼれなどもあったため、洞窟内で平たい鉱石を探して毎晩刃を研ぐことにした。

 とりあえず表面の錆が取れて、見た目だけは良くなった。

 今後も研ぎ続けて切れ味を上げていきたい。


 あと、訓練と言ってもずっと素振りだ。

 普通に剣を振れないで戦いも何もない。


 たが掃除がオレの主目的なので、勿論掃除を疎かになんてしない。

 逆に掃除で疲れてヘトヘトの状態で訓練することでスタミナが付くような気がしたからだ。

 夜の食事はしっかり食べてすぐに就寝、成長ホルモンも出まくりな筈だ!



 今日の清掃場所は、群れの最高齢、メイジゴブリンのおじいさんの部屋だ。


「歳を取ると置いた物の場所をよく忘れるんじゃ」

 部屋は床一面に書物が大量に放置され、足の踏み場もない。


「何の本なの?」

 壁をくりぬいて作られた棚に本を並べていく。


「人間が使う魔法の本じゃ」

「人間…」

 魔法も気になるがやはりこの世界には人間が居るようだ。


「人間は我らを害虫のように扱い無差別に殺していく、昔は人間が集まった集落などを襲っておったが、その度に群れが全滅させられたりしておったから、今では人間を襲う仲間も激減した。」

「弱肉強食の世界ならしょうがないね」

「そうじゃ、強い種族が生き残り弱い種族は淘汰される。実に自然な流れじゃ」

 やはり強くなるのは必須だな、新米冒険者には負けたくない。


「この本はこの洞窟がある森で力尽きた人間の魔法使いが持っていたのを拝借した。本に書いてある説明を読んで詠唱の言葉を発すれば魔法を使う事が出来るのじゃ」

「おじいさんも使えるの?」

「簡単な魔法だけじゃな、初級魔法と言うらしい。この部屋にある本の一部だけじゃ、上級までの本があるが難し過ぎて儂には理解出来んじゃった」

「覚えてみたいんだけど、教えてくれないかな?」

「別に良いぞ、余生の楽しみにお前さんが何処まで出来るか見るのも一興じゃて」

「ありがとう、じゃあ剣の訓練が終わってから来るよ」

「剣もやっとるのか?」

「うん、強くならないといけないから」

「将来が楽しみな坊主じゃな!儂も気合いを入れんとな!」

 魔法も覚えることにした。

 もし、魔法の才能が無くてもこの世界の人間の言葉を覚えることは損にはならないだろう。


 本を整理し、床を掃除してから広間に向かった。


 掃除して剣の訓練して魔法の勉強をする。

 それがオレのルーチンになった。



 ある日のこと。

 いつも通り掃除をしていると不意に声を掛けられた。


「何してるの?」

 振り返ると同い年くらいの女の子ゴブリンが居た。

 なぜ女の子と判るかと言うと、ゴブリンにも胸はあるので女性ゴブリンは胸元を布で巻いて隠しているのだ。


「掃除だよ、この場所を綺麗にしてる」

「ふ~ん、面白いの?」

「地道な作業だから特に面白味はないけど、汚れが落ちた時の爽快感は格別だね」

「私もやっていい?」

「う~ん、別に良いけど。布切れは自分で用意してね」

「分かった!持ってくる!」

 その日から掃除仲間が1人増えた。

 掃除のやり方を教えて2人で黙々と洞窟内を綺麗にしていった。



 そして、とうとうその日が来た。


「ここは別格だから最後に残して置いたんだけど…」

「これはキツイね…」

「ボスにも頼んでなんとかこの溝から洞窟の外に水を流すのに成功したから、後はここをピカピカにするだけだ!」

「お、お~」

 今までは文字通り排泄物庫だったものをトイレに作り変えるのだ。

 劇的ビフォーアフター的にやっても良いレベルだと思う。


 その日は2人がかりで夜までかかった…

 達成感は前世を含めても一番だった。



 次の日の朝、ボスに群れの皆を集めて貰い、トイレの説明を行う。

 用を足した後、棚に用意してある水が入った樽っぽいものを傾けて、高低差による水の勢いで溝のものを洞窟の外に押し流す。

 ペーパーの代わりには洞窟の近くに生えていると言う薬草を使うことにした。

 誰もポーションの作り方なんて知らないから、別に問題は無い。

 逆に皆のお尻が清潔に保たれることだろう。


 最初は皆面白がってやっていたが、数日すると洞窟内の悪臭が殆ど消えたことに驚いていた。

 更にボスの部屋に置いた果物の芳香剤(仮)を改良し、爽やかな匂いの花を使った芳香剤(仮)を開発した。

 それを各部屋に配置したことによって、洞窟内がフローラルな香りに包まれることになった。



 更にとあるある日。


「あとは体臭だな」

「たいしゅう?」

「ああ、体から出る汗なんかが臭いの原因になるんだ」

 出来れば川に洗いに行くのが一番だが、それなりに危険が伴う。

 体を水拭きするだけでも全然違うから布を人数分揃えたいところだ。


「布は人間から奪い取るしかないが…、毛皮では駄目なのか?」

「それです!」

 その手があったか!

 ボスに聞いたら問題は即解決した。

 羊の毛とかは吸水性に優れているらしいからな。


 動物か魔物の毛なのかは分からないが、毛皮はボスが大量に用意してくれた。

 再度集会で説明し皆にやってもらう。

 その数日後、この洞窟から憎き悪臭が消え去ったのだった。


 更に果物の芳香剤(仮)を薄めて体に塗るのが流行りだし(勿論仕掛人はオレ)、皆がフルーティーな香りのゴブリンになった。













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