表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

桜のまた咲く頃

また、春が来る。


新しい制服に袖を通して、鏡でチェックする。


おかしいところ、ないよね。


「どう、似合う?」


両親と姉の写真前でクルッとターンする。


「ちょ、ちょっと女の子らしすぎて恥ずかしいんだけど」


少しだけ髪を伸ばしてみたけど、それくらいで似合うようにはならなかった。


でも、これでやっとマイと同じ学校に通える。


マイに会える。


あの日からマイとは会えていない。


お互いに連絡を取り合うこともなかった。


どうしてるかな、大丈夫かな。


不安や心配は尽きなかった。


事故の怪我で部活は棒に振ることになったので勉強に集中して何とかマイのいる学校に合格した。


もちろん、マイは受けてるだなんて思わないだろう。


ふふ、どんな顔するかな。


「さて、そろそろ行かないと」


持っていく荷物の最終確認をして、靴を履く。


「今日から寮だったわよね。休みの日は帰ってきていいんだからね」


「あ、う、うん」


ぎこちないけど会話できるようになった私を引き取ってくれた遠縁のおばさんは優しくそう言ってくれる。


退院してこの家にきて直ぐは全然喋らないような愛想が悪い子だったのに。


「いってらっしゃい」


「い、いってきます」


まだこんなやりとりが慣れないけど、嬉しかった。


あの病院での時間があったからきっとここまでこれたんだと思う。



シンと静まった空気の中、粛々と入学式は進む。


マイはどこかにいるかな。


少しだけあたりを見回してみても見つけられなかった。


いないのかな。


「――在校生代表、祝辞。生徒会会長、桜木さんお願いします」


「はい」


生徒会長の挨拶か、どんな人が会長なのかな。


「って、あれは……」


「春のうららかな陽気が――」



静かにゆったりと読み聞かせるように言葉を連ねていく。


その前よりは短いけど金色に輝く髪と十字型の髪飾りは春の日差しに照らされて輝き、あの日と重なる。


あの髪飾りはボクが切れたロザリオをアレンジしてあげたものだ。


じっと、見ていると、たまたま原稿から目線をあげた生徒会長と目があった。


すると、向こうはニコッと微笑んだ。


どう?凄いでしょ?と言われた気がする。



「――ご入学、誠におめでとうございます。生徒会会長、桜木マイ」


やっぱり、マイだ。


あのマイだ。


そこには、前からは想像できない、生徒会長なんてやっているマイがいた。


桜の季節に私達はまた無事に再会を果たした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ