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ファクトリー  作者: mamu
9/12

晴れ時々死刑宣告

《こちらは、中央即応部隊第一強襲中隊である》


心地良い日差しに快適な温度に湿度。


《貴君らは、我らが国の領土を侵犯している》


そんな何事も無い、ただただ地獄の合宿……。


《これより我々は専守防衛に基づき、攻撃を開始する》


死ぬ事はないんじゃないかとそう思っていた。


《貴君らに残された選択肢は二つだけだ》


しかし、考えを改めねばならないようだ。


《Death or Die(死か死)》


駄目かもしれん。


《さぁ、狩りの時間だ。覚悟はいいか?…新兵の雑魚共》




演習十四日目 最終日まで残り三日


人口山中腹に陣取っていた正義達E組は、現在小休憩を挟んでいた。


「いやぁ、しっかし疲れたなぁ」


誰かがそうボソっと漏らすと、連鎖反応を起こしたかのように、周りが同調していく。

曰く「ほんと、疲れたわぁ」

曰く「それもこれも、あの鬼畜軍曹のせいだな」

曰く「そーだそーだ! もっと言ってやれ!」

因みに軍曹殿は、先ほどからお姿を御見せられておられない

まぁ、だからこそ、ボロクソに言える訳だが…。


……うん?何かがひっかかる。

何故、俺達は休憩できているのだろうか。

確かに一般的に見れば適度な休息は重要だ。

だがしかし、あの軍曹がそんな『一般的』なお考えをもたれるだろうか。


…否だ。


つまりは何かがヤバイということだ。


「コレは…おかしくないか?」


其の言葉に全員の意識が向けられる空気を感じながらも、俺は疑問を提示した。


「あの軍曹が、俺たちに山頂を目指す。という訓練を明示しておきながら、こんなにも長い休憩をとらせると思うか?あの軍曹が、だ」


その言葉を聴いた瞬間


全員の緊迫度が膨れ上がる。

どこからくる?

どうくる?

対処方法は?

と、高速で頭を回転させているようだ。


「確かにおかしいな…だが、どこがおかしいんだ…っあ!」


平治が徐に地図を取り出し、何かを必死に睨みつけている。

不思議に思った面々は続々と自分の地図を出し、眺めた。


「「「やばい」」」


やはり優秀な人間の集まりである。

少し意識を向けて地図を見るだけで、多くの情報が整理され、等しく同じ結果にいたる。


ここはヤバイ…と。


「全員俺の近くに集まってくれ!」


本来、誰がリーダーと決まっているわけではないが、非常時だ。

先に出来た奴がやる。今回は俺の番というだけだ。

素早い身のこなしで俺の周りに集まった面子を一通り見渡し、認識の共通化を始める。

何事もホウレンソウが大事であると教えがあるが、間違いなくそれは正しい。


「まず。現在地だが、一見、他と変わらないように見えるが…」


そういうと俺は地図の中の現在地をぐるっと指で囲う。


「…明らかに他と相違点がある」


「ここだけ、緩やかで、木々が若干薄いな」


誰かが漏らした其の一言に全員が頷く。

そう、これなのだ。

これこそが、現状最もヤバイとされる状況だ。


「他にもある、俺たちの『認識できる範囲には死角がある』例えば、この右側の崖だな。戦闘機はともかく強襲用のステルス戦闘ヘリなら通れるかもしれない」


「私が考えたのはこれ、ここの正面に位置する方角の約三十キロ地点に、丘があるの。砲撃の可能性はないかしら」


「俺が考えたのはこれだ。森林が薄いここならば、上空の偵察機に捉えられても不思議じゃない。行動は既に感知されていると見たほうが…」


俺は…私は…次々に可能性を上げていく彼らはどこまでもエリートなのだと感服する。

だからこそ、俺は全力で頭を振り絞る。

優秀な兵の集まりは総じて優秀。と言うわけではないのだ。

勇猛な軍師にて、百の兵士は千にも万にも其の価値を上げる。

逆に、弱小な軍師の下に万の勇猛な兵士は千の兵士にも劣るのだ。


これは現代においても認めねばならぬ点だ。


俺に出来ることは、これらの非常に優秀な意見から答えを導き出さなければならない。


まずはどう来るだろうか…。

偵察は恐らくされているだろう。という過程からこちらの行動は筒抜けになっている。

強襲用のヘリで攻撃を開始する?

これは不可能だ。幾ら認識できない範囲を『少し』飛べるからといって、ヘリのローター音は確実に聞こえる。

攻撃をしようものなら、流石の俺達でも落とす事はそう難しくないだろう。


だが何か見落としている気がする。


「いや、まてよ。強襲用の航空機で俺達を襲う可能性があるものは?」


その疑問には鎖古が手を上げた。

普段喋る方ではないが、こういう時にはしっかり発言してくれる分ありがたい。


「空からやってくる可能性なら、七式タイプAか、一角あたりが有力と思う」


「まぁ、一角はコスト面的に考えるならば、排除してもいいんじゃないか?」


鎖古の上げた二択の可能性を、更に絞ろうと発言したのは、防衛型を専門とする鶴我つるがだ。彼は、百八十もの巨体と平治ほどではないが発達した肉体を持つ戦闘に秀でた人間で、性格も非常に温厚だ。なにより思慮深い。

しかし、カムフラージュするために、髪まで深緑に染めている為、知らぬ人が見ればビビって逃げ出してもおかしくない位には怖い。

俺も知らんで会えば、真っ先に逃げ出すだろうなぁ。

そんな下らぬ事を一瞬考えた後に頭を切り替える。


「タイプAが有力か…だが、今稼動しているのは一機だけだぞ」


七式タイプA

この兵器は、通常五人乗りであり、敵地まで飛行するロケットのようなものだ。

最大の特徴は亜音速で敵地まで行き、着弾と同時に展開し、簡易的なバリゲードの役割を果たす所にある。

コレにより、五十口径弾程度であれば、少々耐える事が出来るものになるのだ。


だが、しかしこれに欠点があるとするならば…


「だが、それじゃあ俺たちの銃器を防ぐ事は出来ないんじゃないか?」


「ああ…だな」


平治の言葉に頷く俺。

欠点は、『これはあくまでも、一般兵士たちには脅威である』のであって、俺達『一式機甲に脅威であるか』と問われれば否定せざる終えない。

勿論、多数で来る場合は、脅威になりえるが、現在、先の作戦で使用されたらしく、整備中。

辛うじて動かせるのは訓練用の一機のみだ。


「じゃあ、一角か? だがなぁ」


正直、一角を出してくるとは思えない。

一角は超高速で飛ぶ強襲用航空機で最大二十人が搭乗することが出来る。おまけに垂直離着陸することも可能である。

最も厄介なのがこいつ自身にエネルギーシールドを展開する能力があり、尚且つある範囲までならばある程度エネルギーを供給できる点だ。


だが、コストがかかりすぎるため、ほとんど稼動させていないのが現実で、壊れたら何人の首が飛ぶやら分からない兵器を演習程度で出すわけもない。


「蛆虫ども、何を悩んでいる?」


後ろから掛けられる最も嫌な声。

鬼畜軍曹改め、栗林軍曹その人の声だ。

全員が即座にそちらに向かい整然と並び、敬礼の体勢を取る。

こ、こいつら手馴れてやがる…


勿論自分もしている。


「っは!現在、ここが強襲される可能性について議論しておりました!」


その瞬間、複数の人間から、不安げな気配 (勿論気配だけ) をこちらにぶつけてくる。

しかしだ、ここで嘘をついても何の特にもならないことは明白だ。


俺は学習するタイプである。


「…ほう、言って見ろ」


「っは!現在、強襲用航空機による強襲が最も高いと推測しております」


軍曹は値踏みするようにじっと俺を見つめ、そして小さく「ふむ」とつぶやく。


ど、どうだ…感触は悪くない…と思う。が、まだこれからだな。


「では、どのような強襲用兵器の可能性を考慮した?」


「っは! 七式タイプAもしくは一角であります!」


ここで、軍曹の顔が少し歪む。

もしかして、間違えたのだろうか。内心ビクビクしながらも、不安はありませんと堂々する。

ここ数日で色んな事を学んできたが、自信こそ最高の武器であることは間違いない。

プレゼンする際は、不安を見せてならないのだ。


「強襲用ヘリの可能性は何故ないのだ」


「っは! 強襲用ヘリでは、ローター音を消す事が出来ず、我方に勘付かれるからであります!」


そこまでいうと、軍曹はニタリと笑った。

これは何かある…そう直感した事と、異変に気づいた事は同時だった。


空気を何重にも切り裂く重厚な音が確かに、確実にこちらへ近づいてくる。


「これは…ヘリのローター音だ!」


平治が叫び、全員が音のなる方へと戦闘態勢に入る。

完全に射程に入るまで、全員が落ち着いているのは良い傾向だ。

あと、十メートル…五メートル…


「射撃開始!」


ズドドドドド! ダダダダ!


複数の重鈍な破裂音と共に、無数の必殺の弾丸が戦闘ヘリへ飛来し、薄い装甲を正に紙のように貫く…


はずだった。


黒煙を上げ落ちるはずだったヘリから、悠々と反撃の応酬が返ってくる。


ゴンゴンゴンと力強く音を鳴らす銃器は通称「ドアノッカー」

七十口径の怪物は、当たった獲物を食い散らかす。


防衛型の鶴我ともう一人が前へ出て全員をカバーする。

その間隙を縫うようにしてこちらも負けじと応戦するが、一向に破壊される様子がない。



俺は眼前の戦闘ヘリを直視する。


「な、なんで、弾が弾かれるんだ」


辛うじて絞り上げたそんな声に、答えるかのように、オープン通信から声が聞こえる。


《こちらは、中央即応部隊第一強襲中隊である》


心地良い日差しに快適な温度に湿度。


《貴君らは、我らが国の領土を侵犯している》


そんな何事も無い、ただただ地獄の合宿……。


《これより我々は専守防衛に基づき、攻撃を開始する》


死ぬ事はないんじゃないかとそう思っていた。


《貴君らに残された選択肢は二つだけだ》


しかし、考えを改めねばならないようだ。


《Death or Die(死か死)》


駄目かもしれん。


「戦闘ヘリは隠密能力や防御能力に劣る為、来ないという発想、非常に模範的な答えだ正義候補生。だがな、覚えておけ」


我らが愛すべき軍曹はそこで一つ間を置いた。

その表情はどこまでも純粋な笑顔で、それこそが俺たちの恐怖の対象でもあった。


「戦場とは、常に予測不能が起きる物だ。一つ勉強になったな? ゴミ共」


そして、追い討ちをかけるが如く、無線から無慈悲の宣告がなされる。



《さぁ、狩りの時間だ。覚悟はいいか?…新兵の雑魚共》


おはこんにちはmamuです。

主人公達はどうなってしまうのか!?見物ですね。


と、自らハードルをあげていくスタイルでスタイリッシュに書いていきます!


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