遠足の朝の無茶振り
翌朝
E組みは早朝四時に召集された。
元々一般兵士学校の出である面々はさほど苦労することなく隊列を組みハートマンもとい栗林軍曹を待っていた。
「ふぁああう……くっそ眠いな正義殿」
「そうでありますな。平治殿」
こんな早朝から召集されたE組のその殆どは活性化されていない脳と必死に戦っている有様だ。というか何をするのかどころか、何で召集されたのかすら分かっていない状況である。
装備も何もなし、ただ野戦用の戦闘服を着て来いとのことだ。
困惑も無理もない。
そうこうしている内に栗林軍曹がE組の隊列の前へ出る。
「おはよう。諸君。正義候補生は今日も元気そうで何よりだ」
「平治。俺なんか目を付けられてんだけど」
「むしろ目を付けられない可能性がお前の中にあったことが驚きだよ正義」
周囲の目が正義と平治に降り注ぐ。
この教官から目を付けられた人間というだけで近寄りがたい。というより関わりたくないというのが本音だろう。
隊列を一切乱さず距離をとるという一見矛盾している行動を同時に取っているところから簡単に察する事が出来た。
「おめでとう正義候補生殿。おめでたく孤立だ」
「ありがとう平治候補生殿。だがな平治候補生殿孤立ではない。平治候補生殿がいるではないか」
「HAHA……俺は無実だ」
なんか、正義といたら退屈する事は無さそうだな。良い意味でも悪い意味でもだが。
そんな事を思う平治だった。
「そこ、私語は慎め。次口を開けばパラシュートなしで空挺降下訓練を始めるぞ」
ニッコリと笑いながら注意をしてくるが、目が一切笑っていない。これは注意というより警告だろうな。間違いなく行うだろう。
そう感づいた優秀なE組の面々は早急に表情を消し、軍曹へ注目する。
「よし! ならばこれより訓練内容について説明する。現時刻を持って剣山へ向かう!……予定だったが、諸君らは運が悪い。この広大な基地内にある人工山を使用する事が許可された。つまり、これよりそこまで遠足だ」
喋るなといわれている面々は言葉にこそ出さないが、ほっと安堵のため息をついた。
知らぬ者はピンと来ていないかもしれないが、人工山の距離はここから七十キロ、剣山はおおよそ五百八十キロ。
流石に死ねる。
しかし、その遠足とやらの三途の川を渡る行為が出来なくなった事に非常に残念そうにする軍曹はやはり、恐ろしい。
誰か交代してください。
「もしここが風俗なら即答でチェンジだな」
ボソッと平治候補生が呟くがまさしく其の通りだ。
是非チェンジして欲しいものだ。
そんなことを知ってかしら知らずか、栗林軍曹は適当に挨拶を済ませた後に格納庫前へ俺達を並ばせた。
「貴様らには非常にもったいないものだが、仕方ない。貴様らは機甲兵の候補生なのだからな。つまらぬ事で死なないように徹底的にしごいてやろう」
そういうと、格納倉庫を開く。
中からは素晴らしいほどに整然と並べられた一式機甲がその姿を現した。
場に起こる小さな盛り上がりも、軍曹殿の黙れの一言で一瞬で収まる。
栗林軍曹はこちらを一瞥すると、ゴホンと咳払いをしてこういった。
「貴様らに二時間やる。操作を覚えろ」
どこで文を切るのかとても難しいですね。
もっと精進していきますん!
キャラよ・・・もっとふえろー