ああ素晴らしき新クラス
入学式はこれで四回目だ。小中学と一般候補生そしてこれ。
幾ら特別な学校でも入学式はどこも変わらぬようで、端的に言えば眠い。
平治は既に寝てるし、智美もウトウトとしていた。
学校長は割りと普通の「先生」という感じがするのだが、そのほかの教員が一般候補生として学んでいた学校の教員と明らかに一線を画している。
正直どの先生にも目を付けられたくは無いところだ。
そこで、ふと違和感を覚えた。
一人の先生のみ他の先生との距離が離れている気がする。
見た目は明らかに怖そうだ。というか殆ど外国人じゃね。とかそういうレベルの強面。
ハートマン軍曹かな?
ああいう人が担任とかになったら嫌だなぁ。などと感じつつ時間だけが過ぎていく。
学校長の話が終わり、代表生の話へと変わる。
すると新入生達がザワザワと騒ぎ始めた。
壇上へ上った人物は、女性だった。
夕焼けのように繊細で美しい長髪と少しもぶれる事のない凛とした佇まい。
迷いなど一切ない黒曜石のように黒く鋭く、そして艶かしい瞳。
完全に垢が抜けて可愛いというよりも美しい、可憐これらの表現が最適だろう。
そして、何よりこの人がこの国の切り札と言えるべき存在であることが、住む世界の違いを助長させていた。
「皆様、ご入学おめでとうございます。まず一つ、この学校での三年間は過酷な物となるでしょう。それは保障します。血を吐くような思いをするかもしれません。前へ進む事を躊躇う時が来るかもしれません。しかし、それを恥じるのではなくどう向き合うのか。これを学んでください。時には戦友を頼り、時には弱音を吐いても構いません。最終的には前へ進めれば良いのです。貴方方の後ろには大勢の人間が居ることを忘れないでください。自分の命を護り、他人の命を護る為の必要な事を全て、ここで学べるはずです。誠心誠意向上心をもって、取り組んでください。この学園はあなた方を歓迎致します」
スラスラとアナウンサーのような綺麗な発音で読み上げると静かに礼をし壇上から降りていく。
するとたちまち大きな拍手が新入生側から送られた。
その拍手に答えるように、ヒラヒラと手を振ると、会場を立ち去っていった。
入学式終了後、クラスを言い渡される。
クラスに大した差などは無いため、適当に振り分けられるだろう。
まぁここに入学できるだけで、相当に優秀であるのは間違いない。
どんなクラスでも学べる事の方が遥かに多いだろう。
「ふむ、一年E組か」
「お、俺と一緒か」
会場の外で、クラスを確かめていた俺の紙を覗き込みながら現れたのは平治だ。なるほど、彼も同じクラスというのは正直嬉しい限りだ。孤立は避けられるだろうからな。
「それは、よかった。クラスに馴染めるか正直不安だったからな」
「全くだ、俺は恥ずかしがり屋だからな。他人と話すのは苦手だ」
と平治はワザとらしく肩を竦めるが、断言しよう。それはない。
むしろ率先して友人を作りまくるタイプだろ。そう確信できる。
「因みにあちきはC組なのっさ! いやぁ残念ですなぁ寂しくなりますなぁ」
何処からとも無く現われこちらもワザとらしく悲しそうに項垂れて見せている。
絶対お前ら気が合うタイプだろ。
しかし、智美はC組みか。まぁそう運よく全員同じなんて事はないよな。
「いやぁ、残念ですなぁ一緒のクラスであれば毎日お会いできますのに……残念残念」
言葉と裏腹に、物凄く嬉しそうにする平治。お互いすこぶる輝くスマイルだ。目が笑っていないのが惜しいな。
ホームルームなるものがそろそろ始まる為、あまり長居は出来ないことを思い出した俺は、クラスに向かう為に足取りを進めながら、
「……さて、クラスに行って見るかな。じゃあな智美」
と手を振ると、時間が無い事に気づいたのか談笑(?)を止めて同じように、移動を始めた。
「ほいほーい。バァイまーくん。それと脳筋」
「じゃあなドチビ」
「……」
「……」
ッザ!
「待つんだ!」
っと一瞬の間と共に同時に間合いを詰めるがそれを俺が必死に制する。
なるほど、かなり疲れる。
「というかマジで仲が良いよなぁうんうん。良いことは良いことだ。そこで提案だが是非喧嘩をやめて頂くのはどうだろうか。」
ほぼ嘆願するような俺の提案に二人は顔を見合わせ
……一瞬で顰めた。
「「あ? 誰がコイツと仲良くなりたがるんだよ」」
「「は?」」
「あ、もういいです」
中々苦難しそうだなぁ……
まぁ徐々に改善されていくことだろう。たぶん。
そんな具合に俺たちは別れた。
クラスの前までやってきた訳だが……
一つ、違和感があるとすれば、他のクラスは割りとワイワイとしているイメージがあるが、ここはまるで別世界のようだ。
静まり返っている。
もしかして、クラスを間違えたのかもしれないと地図に目を通すが、ここが件のE組みで間違いなさそうだな。
平治と顔を見合わせ、扉に手をかける。
ガラガラ
と引き戸を開くと、目に写った物は。
ハートマン軍曹!?
思わず、口に出しかけた言葉を必死に飲み込み忍者さながらの俊敏さで席につく二人。ハートマン軍曹はゆっくりと教卓に手を置き、ギロっとこちらを睨んだ。
「お前らが最後だ! 馬鹿者! 物事の10分前には集合せよと習わなかったのか? ゴミ共! いいか、貴様らもだ! 卒業するまでの3年間貴様らはゴミほどの価値すらも無い事を肝に銘じておけ! 少なくとも私が担当する限り! 貴様らに安息や安楽はないと思え! ……それではミィーテングを始める。明日から5日間機甲兵器の操縦を学ぶ! その後は楽しいピクニックだ! 存分に遊んでやるから覚悟しておけ!」
少ない時間にこれほど罵倒を入れられる物も少ないだろう。
少なくとも、学級が変わる一年間。地獄であることは確定したのは間違いないだろう。ついてないと考えるべきか、それともついていると考えるべきか。
とにかく、まずはこのホームルームを如何に乗り切るかに専念した。
こんばんわ!mamuでござんす。三話目見ていただき本当にありがとうございます。感謝感激の次第でございます。
いやはや何とか間に合いましたぞ。
最初の方はガンガン新キャラが出てきて大変ですな。管理が難しくなりそうです。
何とか全キャラの味を出していきたいなぁとそんな気が致します。
今後ともどうか宜しくお願いいたします。