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ファクトリー  作者: mamu
2/12

お先真っ暗入学式

「うおおおおおおおお!」


 今日は快晴の青天井、湿度良好、日中夜間問わず雨の確率は真実の事実としてゼロ%である。

お散歩日和でお昼寝日和なそんな日。

その日少年は感激していた。街のど真ん中にある提示版の前で、人目もはばからず今にもI can flyしそうな勢いだ。

その少年を見る周りの目は蔑む訳でも、奇異の目で見るわけでもなく、非常に歓迎的な温かい目をしていた。そう、夢を叶えた少年を祝うような……いや祝福しているのは事実だった。

彼の前に張り出されている紙の上側には大きくこう書かれていた。


『一式機甲兵候補生合格発表』


 現在、日本と言う国だったものが保有している一式機甲兵は約三千五百。内旧福岡に拠点を構えるタダンが保有している数は二百五十。零式機甲は一。

勿論全てが戦力と言うわけではなく、二百五十の内教育部隊と訓練兵、実証部隊、未使用機それらを差し引いてその残りが防衛の役割を果たしている。

機甲兵と呼ばれる兵科は、所謂特殊部隊である。絶対的な性能を誇り、前線では常に希望として見られる。強力な兵器を前にしても臆せず勝負を挑める。まさにヒーローだった。一部の特殊な人間に合わせられ作られた零式とよばれる兵器と違い、標準以上の能力があれば就任出来る兵科でもっとも困難な物がこれだ。


「長い、道のりだったなぁ」


 ホロリ、観衆の目線すら気にせず静かに涙する。

思えばこの二年間、防衛予備校で訓練訓練!積み重ねる勉強!

青春も何もかも置き去りにした二年間だった……年齢的に、今年が最後の機会だったのだ。


「……は! こうしてはいられない」


 そう踵を返すと全力で駆け出した。

まだ、試験は残っているのだ。

「合格後、6時間以内に会場へ到着できなければ不合格とする」という物だ。


掲示板から会場までの道のり、およそ40キロ。


……コレ考えたの誰だよ。



 息も絶え絶えの残り10キロ付近

時間は残り30分程度。

あまり余裕があるとは言えないが行けなくはなさそう。そんな距離だ。

そろそろ目的地に近づいてきた事もあるのか、同じ方向へ走っている人間もちらほら数を増やしてきた。


「やっぱり、こう空は夕焼けが綺麗だと思うんだよ。あ、朝日じゃダメだぞ、夕焼けであることが大事なんだと私はそう言いたい」


 取りあえず、静かにしてくれと私はそう言いたい。

チラリと視線を移すと笑顔で語り掛けてくる男が居た。

しかも割りと容姿は悪くない。ぶっちゃけモテるだろう。

少し釣り目気味の奥二重で瞳の色は黒茶色。綺麗に刈り上げられた丸坊主で、黒いタンクトップはその筋肉を誇示するかのように張り詰めている。首周りも例外ではなく丸太の様にどっしりと据わっている。

身長は自分より少し低いくらいだろうから170センチ程度だろう。

何よりも目を引くのがその体格と体力だろうか。先ほどからずっと喋りっぱなしだが、息が荒れることもなく涼しい顔をしている。


「おお、いい観察眼だと思うが、そういう細かい描写は女性にするものだと思うぞ……ああそういう趣味なら構わないけどさ」


 悪戯っぽく男は笑うと軽くウィンクしてきた。ジョークのセンスでも試されているのだろうか……そこまで豊富な語学を身に着けているわけではないのだが。


「……なら、問題ないということか。安心したよ」


 と、こちらも返すようにウィンクをすると、男は苦笑いをしながら若干速度を緩めて距離をとった。

え、なにその反応。何故距離をとるんだ。


「冗談だ。冗談」


 慌てて、自分を自分でフォローするが。


「そうか、ジョーダンという名前なのか。非常にユニークな個性を備えているな。感服する」


 更に距離をとりながら、ワザとらしく胸に手を置きながら感心したようにこちらを見るのは止めて貰いたいものだ。

それ以前にどんどん誤解が深まっているのは何とかしなければならないと即座に判断した。

が、俺の苦悩と裏腹に男と表情が徐々に崩れてきて笑い出した。


「っぷっはっは! いや冗談だ。分かっている。安心してくれよ」


「……勘弁してくれよ」


「いや~面白かったもんでついな」


 辟易とする俺の肩をバンバンと叩きながら、ニヤニヤ笑ってくる。

何コレ殴りたい。


「それでは、ジョーダン君本名を教えて貰っても宜しいかな?因みに私の名前は平治へいじっていう。」


 ニッと明るい笑顔で握手を求めて来る姿は……。

ふむ、人柄は悪くはなさそうだ。ただ走っているときでなければ100点だったのだが。


「俺は正義まさよしだ。宜しく平治」

 

 握手に答えながら、こちらもフレンドリーに返す。相手もその対応に満足してくれたのか

ウンウンと頷いた。


「随分とイカした名前だな……おっとそうこうしている内に見えてきたぞ」


 指差した先には、かなり広大な敷地を占領している施設が見えてきた。学校と言うより基地と形容するのが正しいといえるだろう

正門の前で止まるともう既に、多くの入学生が集まっていた。

正門には、複数人の警備員がおり、受付らしきモノが検問所のように設置されていた。


「ようこそ! 早速だが、IDを見させてもらうよ。ほらここに合格通知の下にあるバーコードと君の指紋をこの機械に乗せるんだ」


 言われるがままに、せっせと認証を終え、「おめでとう」という言葉と共にパンフレットを受け取った。


「……割とデカイな。まあ当然と言えば当然かもしれないけど」


 設備紹介のページを見ると、外見以上に圧倒的な広さを誇っている。山すらも学校内の施設の一部となっているほどだ。

平治も受付を終えこちらに向かってきた。


「はっはっはーいやはや、中々に壮大な眺めですな正義候補生」


 肩をバンバンと叩きながら、軽快な笑い声を上げている。

というか何故疲れていないのか。


「そうですな平治候補生。実に壮大な眺めだ……ん?」


 適当に返しながらも、会場へ向かっていたがふと耳をすます。

するとッドッドッドという重厚な音が近づいている事に気づいた。


「この音は……ヘリか。ほらみろあれだな」


 平治が指を指した先には、ヘリが近づいてきていた。

ヘリはちょうど自分たちの真上にとまり、扉が開くと同時に、小さな影が躍り出た。

って、あらこれは。


「親方! 空から女のっぐっふお!」


 意味不明なセリフと共に顔面に着地される平治。そのままブリッチのように顔面を地面に突っ込んでいる。柔軟性もあるのだな。

やはり、日々の鍛錬を積んでいるのだろう。尊敬するよ。などと下らない事を考えながらも着地した物に目を移した。

空から降りてきた物は小柄な少女だった。金髪ツインテールと言った所だろうか。容姿は「人形のようだ」の一言につきるだろう


「……着地成功!ててててーてーてーてっててー私はレベルが上がった」


 セルフSEと共に非常に満足そうに体操選手顔負けのポーズを決めているが、やめて差し上げて欲しい。


「おーい平治君? 生きてる?」


「……女性に踏まれると言うのも、貴重な経験だと思うの」


 なるほど、大丈夫なようだ。一先ず入学式が命日という最悪の事態は回避できた。

まあ、もっとも現状彼の名誉を傷つける可能性もあることは確かだ。早急に降りてもらわねばなるまい。

少女はこちらの視線に気づいたのか顔だけこちらに向けた。


「んん~? 誰だねちみは」


「あ、ああ俺は正義だ。君は? というか降りてあげて欲しい」


 下を指差しながら伝える俺に従い、少女は視線を下に落とす。

すると、腕組みをしながらむしろ胸を張って更に満足そうにした。

降りんのかい。


「素晴らしい。思った以上の功績だ。チミは非常に満足であーる・・・うおおお!?」


「いい加減に……せい!」


 流石に耐えかねたのか、平治が少女の足を両手でつかみ、折りたたみ布団よろしく投げ飛ばすと空中で鮮やかな回転をしたのち、綺麗に着地した。

あまりの凄さに感激していたが、平治がズンズンと少女に歩み寄り叫んだ。


「何時まで、他人の顔面に居座るつもりだ! このドチビ! 死ぬかと思ったわ!」


 確かに良く生きてるな。

少女はと言うとドチビの単語と共に、こめかみに血管が浮き出た・・・ような気がした。


「ぬぁ!? ドチビじゃないし! 小柄だし!」


「……それはあんまり変わらなくないか?」


 思わず出た言葉に「しまった」と思ったがもう遅かった。

気づいた頃には顔面に華麗な回し蹴りが飛んできていた。

アゴを正確に打ち抜いてくるとは・・・恐ろしい子だ。



「……えっと、取りあえず名前を聞いても?」


 どうにかこうにか騒動を治める事に成功した俺は平和への第一歩として自己紹介をしていた。


「そんなに知りたければ教えてしんぜよう! 私は隠坂かくれざか 智美ちみっだ!よろしくぅ」


 わざとらしい口調とわざとらしい仕草……ふむ随分とまぁ明るい子だな。というのが率直な第一印象か。


「さっきも言ったと思うけど、俺は正義っていう名前。踏み台にしたのが平治だ」


「よろしく、絶壁」


 さわやかな笑顔と共に毒を吐く平治。

こりゃ根に持ってるな。

 

「絶壁じゃねえし! スレンダーだし! この脳筋!」


「誰が脳筋じゃオラァ!」


 また、つかみ合いになりかけたので、割って入って止める。

仲が悪いなこの二人。


「「……はぁ疲れた。取りあえず会場に向かおう(ぜ)!」」


「「マネすんなよ!」」


「お前ら実は仲が良いだろ」


 素晴らしいシンクロ率に思わずツッコミを入れる始末。

ふむ、割と相性がいいのかもしれないな。

などと考えながら、口喧嘩をし合う二人を尻目に会場へ歩きだした。




いやはや、一日遅れてしまいました。申し訳ない。

どうにも日常というシーンを書くことが苦手でして。今後の課題と言った所でございます。

実は、キャラ同士の絡みというものを今まで書いたことが無く。完全に不安一杯な感じで御座います。

ううむ、経験かぁ。もっと勉強するべ。


自分で読んで満足できる出来にしたいなぁ。とにもかくにも今はコレが限界というやつでしょうか。

何時か、リメイク版を出したい。そんな気が致します。


それではツギまたお会いしましょう。ばあい

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