2029年111月
2029年11月26日
今日も何気ない朝を迎えた。
でも、多分朝としか言いようがない。時計が7時を指しているからだ。
ここでは日が当たらないので、時計だけが時間の移り変わりのよりどころとなっている。何とも空しい場所だが、生きていいるだけましと思わなければ罰が当たろうというもんだ。
ディルガはまだ寝ているようだから、ボクはソッと起きて朝飯の支度をしようと、キッチンの方へ向かった。起きたばかりで暗がりに目が慣れていないせいか、ヨチヨチ歩きになってしまい、何かにぶつかって物音がしたので、ハッとしたが、彼女が起きる気配はなかった。
もっとも電灯や電機が無いわけではなかったが、この状況がどれだけ続くのか分からなかったから、電気類はなるべく節約して使って行こうと、二人で決めたことだから、ボクはそれを忠実に守ろうとしているだけだ。
ディルガの欠伸が聞こえた。やはり、さっきの物音で起こしてしまったようだ。
”おはよう、おこしちゃったね、ゴメン”
”ううん、そんなことない、自分で起きたんだヨ”
ディルガはそう言ったが、本音ではない。
”何か食べる?”
”しゃぶしゃぶ!”
”朝からかい~?”
”ダメ?・・・”
”イイけど、胃がもたれても知らないヨ”
ボクはそう言って、台所の棚から肉を出して、<しゃぶしゃぶ>の準備に取り掛かった。