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【ホラー】電車の中の怖い音

作者: 屑屋 浪
掲載日:2026/08/27

「夏のホラー2026」参加作品です。テーマは「音」。

 オリジナルのホラー小説です。


【登場人物】

私      :語り手。

隣りの人   :途中の駅から乗って隣に座った人。

 これはこの前、電車に乗った時の奇妙(きみょう)な出来事です。


 友人と飲んだ帰り、電車に乗ってたんですが、途中の駅で少し年配の男が隣(となり)に座ったんです。少し痩(や)せた普段着(ふだんぎ)の人でした。


 最初は何でも無かったんですが、気付くとその人がブツブツ呟(つぶや)いていたんです。


 気になって聞(き)き耳(みみ)を立てると「うるさい」、「静かにしろ」って言っていました。


 うわっと思いましたよ。


 だってその時の電車内は静かだったんです。誰も喋(しゃべ)っていなかったし、スマホからの音漏(おとも)れもないし、子供が騒いでるなんて事もなかった。そもそも夜中だったから子供なんていなかったんですが。


 だから「関(かか)わらない方がいい」って思って、何も聞かなかった事にしてスマホを見てました。


 そうしたら、その人の呟(つぶや)きはどんどん大きくなってきて、はっきり聞こえるようになりました。


 あっという間(ま)にかなりの大声になって、どうしたら良いか分かりませんでした。少しでも反応したらこっちに何か言ってくるんじゃないかって思ったので、とにかくスマホに集中してたんです。


 すると遂(つい)にその人は怒鳴(どな)り出しました。


 正直、怖かったですよ。


「静かにしろ!」

「うるさい!」

「黙れ!」


 すぐ隣(となり)でそう言ってるんですから。


 いつ標的(ひょうてき)になってもおかしくないと思いながら、ただ、じっとスマホの画面だけに集中していました。


 でもすぐに、その人は立ち上がって移動を始めたんです。怒鳴(どな)り散(ち)らしたままでしたけどね。


 それで少しホッとしたもので、怖かったんですが、ちらりと様子をうかがったんです。その人は憤怒(ふんぬ)の表情で大声を出しながら、隣(となり)の車両へ歩いていく所でした。


 その時、違和感(いわかん)を感じたんですよ。その人じゃなくて別の場所です。


 それは車窓(しゃそう)でした。


 車窓(しゃそう)に中が映(うつ)っていたんですが、そこに大勢(おおぜい)の人がいたんです。ギュウギュウに詰(つ)め込まれていて、満員(まんいん)電車のようでした。


 でも、そんなことは絶対にありえないんです。実際の電車内に立っている人はいなかったんですから。


 しかもあの怒鳴(どな)っている人には、ニ、三人が異常(いじょう)な感じでまとわりついていました。


 それに気付いた途端(とたん)、何の前触(まえぶ)れもなく、騒音(そうおん)に包(つつ)まれたんです。大勢(おおぜい)の話し声や、ガチャガチャと物がぶつかる音、不協和音(ふきょうわおん)のような音楽で耳(みみ)が痛(いた)くなりました。


 それはとても不快(ふかい)で、思わず「うるさい」って口(くち)に出しそうになったくらいです。普段はそんな事はしないので、自分でも驚いて慌(あわ)てて押(お)し留(とど)めました。


 そして気付いたんです。もしそれを言ってしまったら、あの人と同じになってしまう、と。


 その後は、それまで以上にスマホに集中して、音なんて聞こえないフリをしました。聞こえている事が分かったら、車窓(しゃそう)に映っているあいつらに取(と)り憑(つ)かれると思ったんです。


 話し声は全ての方向から聞こえてきました。車窓(しゃそう)に映(うつ)っている全員が話しているんじゃないかと思えるほどなのに、言葉の断片(だんぺん)だけで何を言っているのか分からないし、ガンガンと物を乱暴(らんぼう)に叩(たた)いているような音とガチャガチャと金属がぶつかり合う音はとても頭(あたま)に響(ひび)くし、どこから流れているのか分からない音楽にはイライラとした感情が湧(わ)きました。


 あの騒音(そうおん)が聞こえていた間は、本当に生きた心地(ここち)がしませんでしたよ。


 そして次の駅に着いた時、目的の駅ではありませんでしたが、すぐに降(お)りました。とにかく逃げ出したかったんです。


 幸(さいわ)いな事に、電車から出ると音は聞こえなくなりました。


 あの時ほどホッとした事はありません。力(ちから)が抜(ぬ)けて構内(こうない)で倒(たお)れ込(こ)んでしまったほどですから。


 あの音はその時以来、聞いていません。あの現象が起きたのが、あの人が居たからなのか、あの電車に乗っていたからなのか分かりません。ですが、もう二度とあんな目(め)に遭(あ)いたくありません。



おしまい。

お読み頂きありがとうございます!


時間が無くて短くなってしまいましたが、少しでも怖さを感じて涼しくなって頂けたら幸いです。

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