【ホラー】電車の中の怖い音
「夏のホラー2026」参加作品です。テーマは「音」。
オリジナルのホラー小説です。
【登場人物】
私 :語り手。
隣りの人 :途中の駅から乗って隣に座った人。
これはこの前、電車に乗った時の奇妙な出来事です。
友人と飲んだ帰り、電車に乗ってたんですが、途中の駅で少し年配の男が隣に座ったんです。少し痩せた普段着の人でした。
最初は何でも無かったんですが、気付くとその人がブツブツ呟いていたんです。
気になって聞き耳を立てると「うるさい」、「静かにしろ」って言っていました。
うわっと思いましたよ。
だってその時の電車内は静かだったんです。誰も喋っていなかったし、スマホからの音漏れもないし、子供が騒いでるなんて事もなかった。そもそも夜中だったから子供なんていなかったんですが。
だから「関わらない方がいい」って思って、何も聞かなかった事にしてスマホを見てました。
そうしたら、その人の呟きはどんどん大きくなってきて、はっきり聞こえるようになりました。
あっという間にかなりの大声になって、どうしたら良いか分かりませんでした。少しでも反応したらこっちに何か言ってくるんじゃないかって思ったので、とにかくスマホに集中してたんです。
すると遂にその人は怒鳴り出しました。
正直、怖かったですよ。
「静かにしろ!」
「うるさい!」
「黙れ!」
すぐ隣でそう言ってるんですから。
いつ標的になってもおかしくないと思いながら、ただ、じっとスマホの画面だけに集中していました。
でもすぐに、その人は立ち上がって移動を始めたんです。怒鳴り散らしたままでしたけどね。
それで少しホッとしたもので、怖かったんですが、ちらりと様子をうかがったんです。その人は憤怒の表情で大声を出しながら、隣の車両へ歩いていく所でした。
その時、違和感を感じたんですよ。その人じゃなくて別の場所です。
それは車窓でした。
車窓に中が映っていたんですが、そこに大勢の人がいたんです。ギュウギュウに詰め込まれていて、満員電車のようでした。
でも、そんなことは絶対にありえないんです。実際の電車内に立っている人はいなかったんですから。
しかもあの怒鳴っている人には、ニ、三人が異常な感じでまとわりついていました。
それに気付いた途端、何の前触れもなく、騒音に包まれたんです。大勢の話し声や、ガチャガチャと物がぶつかる音、不協和音のような音楽で耳が痛くなりました。
それはとても不快で、思わず「うるさい」って口に出しそうになったくらいです。普段はそんな事はしないので、自分でも驚いて慌てて押し留めました。
そして気付いたんです。もしそれを言ってしまったら、あの人と同じになってしまう、と。
その後は、それまで以上にスマホに集中して、音なんて聞こえないフリをしました。聞こえている事が分かったら、車窓に映っているあいつらに取り憑かれると思ったんです。
話し声は全ての方向から聞こえてきました。車窓に映っている全員が話しているんじゃないかと思えるほどなのに、言葉の断片だけで何を言っているのか分からないし、ガンガンと物を乱暴に叩いているような音とガチャガチャと金属がぶつかり合う音はとても頭に響くし、どこから流れているのか分からない音楽にはイライラとした感情が湧きました。
あの騒音が聞こえていた間は、本当に生きた心地がしませんでしたよ。
そして次の駅に着いた時、目的の駅ではありませんでしたが、すぐに降りました。とにかく逃げ出したかったんです。
幸いな事に、電車から出ると音は聞こえなくなりました。
あの時ほどホッとした事はありません。力が抜けて構内で倒れ込んでしまったほどですから。
あの音はその時以来、聞いていません。あの現象が起きたのが、あの人が居たからなのか、あの電車に乗っていたからなのか分かりません。ですが、もう二度とあんな目に遭いたくありません。
おしまい。
お読み頂きありがとうございます!
時間が無くて短くなってしまいましたが、少しでも怖さを感じて涼しくなって頂けたら幸いです。




