第4話 ジョン
画像はChatGPTで生成しました。
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着いたよ。ネクスト・ミリオン。
それまでの道中は特に話すことはない。成田からサンノゼに行き、タクシーに乗った。
ミリオンは、まあ、ザ・シリコンバレーの企業といった外観だ。
グーグルの本社といえばわかりやすいだろう。
しばらく僕はミリオンの外観を眺め、じゃあ行くかと中へ入った。
エントランスには女性が立っていて、僕に近づいて話しかける。
「ようこそ田中さん、お待ちしていました。ご案内いたします」
よかった。受付どうしようと悩んでいたところだ。
スーツに黒髪、眼鏡。秘書の方かな?
まあ、ジョンと電話番号は交換していたので、いざとなれば、呼び出しただけだけど。
秘書らしき女性は、僕を一室の前に案内し、ノックした後、ドアを開いた。
「どうぞ中へ」
軽く手で促す仕草をし、僕の方を見た。
「ありがとうございます」
僕は答え、部屋に入る。
「それでは」
彼女は静かにドアを閉じた。
僕はキョロキョロと部屋を観察した。
そんなに広くはない、日本の一般的なリビングルームぐらいの広さ。
白い壁に、奥は広い窓。飾り気のない机が1つ、ノートPCが置かれている。
それ以外には何もない。もちろん、社訓が書かれた額縁もない。
ゲーミングチェアのような椅子に、ジョンが嬉しそうな顔で座っている。
まあ、オンラインミーティング通りの印象だ。
にこにこと、しばらく僕を観察するように眺めた後、席を立ち、僕の方に歩いてくる。
「やあ、会いたかったよ。よく来てくれたね、よろしく、田中」
右手を差し出す。
「こちらこそ、よろしく」
僕はジョンの手を取り、握手をした。
何も違和感はない。うん、なるほど。
ひとしきり握手を終え、僕らは手を下ろす。
その瞬間、僕は右足を半歩前へ、右腕でジョンの顔に目掛け、軽くジャブを放った。
拳はジョンの左頬あたりにヒットし、ほんの少し、ジョンがのけぞる。
「……つっ!」
まるで鉄を殴ったような痛みだ。
「い、痛ったぁー」
僕は軽くうずくまり、左手で右拳をそっとさすった。
「あー痛っ!」
僕はジョンの方を見た。
ジョンは呆れた顔でこちらを見ている。
「あのね、それ、本来、僕のセリフなんだけど?」
はい、おっしゃる通り。
まったくもって正しい。でもこれしか思いつかなかった。
ジョンの顔は、腫れてもいないし、あざになってもいない。
「まったく、無茶するよ。キミは本当におもしろいね」
ジョンはまた笑顔に戻る。
「外殻は、カーボン的なやつ?」
「そう、外殻も骨格もね」
ジョンが答える。外殻、骨格だけでかなりの値段になりそうだ。
「まあ、キミなら気づくよね。いつから?」
「飛行機の中で。まあ、暇だったし、考える時間はいくらでもあったよ」
「僕が避けたら?」
まったく、わかってるくせに、こういうやり取りが好きなんだろうね。まあ、僕もそうだけどさ。
「同じでしょ?それ。あ、痛みはないんだよね?」
ジョンは満足そうに笑う。
「ハハッ。キミの想像通り、わかってて聞いてるよ、それも君が知りたがっている理由の一つ」
まあ、想定通りだね。良かったよ。
「で、一応、キミの仮説を聞かせてもらえるかな?こればかりは、僕に直接言ってもらわないとね」
ジョン、うれしそうだね、ホント。楽しそうで何よりだよ。
「一つは、ジョン。君は自我と感情を持つ学習型のAI」
ジョンは満足そうにうんうんと頷く。
「それで?」
「もう一つは、君が次世代型AIと呼んだ存在は、AI上に人間の脳を再現した、非学習型、いや、新しい人類かな」
「オッケー。アハハ。五十近いおっさんから、そんな中二病設定を聞けるなんて嬉しいねぇ」
ジョンは手のひらを上に両手を上げ、やれやれといったポーズを取っている。
う、思わず顔が赤くなる。
「君が言わせたんだよ?何?からかうためにわざわざ言わせたの?」
何なんだろうこの人。それにしても……人間と変わらない存在か。
……
「なにか、いかがわしいこと考えてるね?」
ニヤニヤしているジョン。
「断じて違う。科学技術的な考察をしてるだけだよ」
「ま、わかっていたことだけど、君が想像していることを含めて、全てその通りだよ」
僕の仮説は立証された。でも、僕は喜べばいいのか、驚けばいいのかわからなかった。
しばらくの沈黙の後、ジョンがニヤニヤをやめ、いつもの笑顔に戻った。
「さて、これからの計画について話をしよう」
この時ようやく、もう巻き込まれていることに気づいた。
それでも、自分が当事者だとは、まだ思っていなかった。
そう、いつも僕は間違える。




