第21話:ロイヤル・ファーストナイト! 独占欲のすべてを注いで
国中からの地鳴りのような大歓声と祝福に包まれた結婚披露宴が終わり、深夜。
私は王宮の奥に新しく用意された、広大な王太子夫妻の寝室へと戻っていた。
「ふぅ……、本当に怒涛の一日だったなぁ」
メイドたちに手伝ってもらい、重厚なウエディングドレスから、シルクで作られた純白のネグリジェへと着替える。
前世のブラック企業で、ボロアパートに一人、コンビニの缶チューハイを片手に終電の時間を気にしていた私が、今や一国の王子の妻として、こんなに豪華な天蓋付きベッドの前に立っているなんて、未だに信じられない。
コンコン、と控えめなノックの音がして、部屋の扉が開いた。
「ユキ。……待たせたな」
入ってきたのは、礼服のジャケットを脱ぎ、白いシャツのボタンを少し緩めたギルバートだった。
眼帯の外れた両のアメジストの瞳が、バルコニーから差し込む月の光を浴びて、いつも以上に熱く、そして妖しく濡れている。
「ギ、ギルバート……。あの、お疲れ様でした」
呼び慣れない旦那様の名前を口にして顔を真っ赤にする私を見て、彼はふっと愛おしそうに口元を緩め、音もなく私の目の前へと歩み寄ってきた。
彼の手が優しく私の頬を包み込み、そのままゆっくりと視線が交わる。至近距離で見つめられるだけで、胸の奥が甘く疼いてしまう。
「今日からお前は、名実ともに俺の妻だ。……ユキ、この日をどれほど待ち望んでいたか、お前には想像もつかないだろう」
「ギルバート……。私も、あなたと本当の家族になれて、すごく嬉しいです」
私が気恥ずかしさを堪えながら精一杯の気持ちを伝えると、彼の瞳の奥に宿る、獣のような独占欲が一気に弾けた。
逞しい腕が私の腰を強引に引き寄せ、そのままベッドへと押し倒される。
「ひゃあっ……!?」
ふわりとしたシーツに沈み込む私を見下ろしながら、ギルバートは私の黒髪を愛おしそうに指で梳いた。彼の呼吸が少しだけ荒くなっているのが、肌越しに伝わってくる。
「もう、お前をアラカルト公爵邸に帰す必要もない。他の男たちの視線から隠すように、夜会を途中で抜け出す必要もない。……ここにいるお前は、髪の毛一本、指先一つ、流れる血の最後の一滴まで、すべて俺だけのものだ」
「ギルバート……、目が、すごく熱いです……っ」
「あぁ、狂いそうだ。二十年間、呪いのせいで孤独だった俺の世界に、お前が光をもたらしてくれた。今夜は、俺の持てるすべての愛でお前を満たし尽くしたい。……もう手加減はしてやれないぞ、ユキ」
その低い、掠れた声が鼓膜を震わせた瞬間、彼の唇が私の唇を塞いだ。
昼間の誓いのキスとは比べものにならないほど、深く、熱く、甘くとろけるような口づけ。
何度も、何度も角度を変えて唇を重ね合わされ、私の頭は一瞬で真っ白になっていく。
彼の熱い手が私の背中を優しく撫で上げ、お互いの肌の温もりがシーツを通じて混ざり合っていく。
「ユキ……愛している。生涯をかけて、お前を溺愛し続ける」
静かな寝室に、トクトクと速くなる二人の心臓の音と、甘い吐息だけが響き渡る。
前世の孤独をすべてかき消すような、情熱的で終わらない、私たちの特別な夜は、ゆっくりと更けていくのだった。




