第7話:沈黙は「怒り」か「絶望」か
7話です。
最悪のタイミングとシチュエーションで会いたくなかった人たちと出会います。
会いたくないなーって時に会うことってあるあるですよね。
「ごきげんよう、マリアンヌ様ぁ。昨日の今日ですもの、本日はお休みなさるのかと思っていましたわ。……ですが登校なさるなんて、流石『氷の悪女』ですわね!」
うふふっ……と口元を隠して笑いながら周りを煽るクラリス様。その表情は、女として、そして次期王太子妃の座を射止めた者として「勝った」と確信しているような、残酷なまでの輝きに満ちていました。
(……っ! 氷の、悪女……!?)
その言葉が、鋭い氷柱のように胸に突き刺さりました。
反射的に顔が強張るのを感じます。視界が歪み、涙が溢れそうになるのを必死に堪え、わたくしはパサリと扇を広げました。
顔の下半分を隠したのは、震える唇を悟られたくなかったからです。ですが、周囲にはそれが「不快な羽虫を追い払うような高慢な動作」に見えたようでした。
「……ごきげんよう。エドワード様、クラリス様」
絞り出した声は、自分でも驚くほど冷たく、低く響きました。本当は震える声で無実を叫びたかったのに、喉が引きつってまともな発声ができなかったのです。
「エドもそう思いませんか? 罪を認めず、こうして平然とわたしたちの前に姿を現すなんて……。本当、恐ろしいほどお心が強い方ですわねぇ!」
クラリス様はエドワード様の腕をギュッと抱きしめ、上目遣いで彼を煽りました。その言葉は、「この女は反省もしていないし、恥も知らない女だ」と、周囲の生徒たちに植え付けているようなものでした。
(ひ、ひどいですわ……! 反省も何も、わたくしは無実ですのに! それに、悪女って……!悪女って……!無駄に悪化していましたわ!心臓だって強いどころか、恐怖で今にも口から心臓が飛び出しそうなのに!)
わたくしはあまりの悲しみと恐怖に、もはや言葉を発することができなくなっていました。ただ、扇の要を握りしめ、必死に涙を堪えるためにエドワード様を真っ直ぐに見つめることしかできません。
……いえ、客観的に見れば、それは扇の向こう側から鋭い眼光で射殺そうとしているように見えるので、クラリス様の言うとおり「悪女」そのものだったのでしょう。
「……ああ、その通りだ。クラリス、君のような清らかな人間には、彼女の冷酷さは理解できないだろうよ」
エドワード様は、隣のクラリス様を庇うように一歩前に出ると、わたくしを蔑むような目で見下ろしました。
「マリアンヌ、君がどれだけ睨みつけたところで、事実は変わらない。……一週間後、君が泣いて謝る姿が目に浮かぶようだ」
(泣いて謝る? 泣きたいのは今、この場所で、わたくしの方ですわぁぁ!)
心の中で叫びましたが、喉は完全に閉じてしまい、指先は氷のように冷たくなっていました。
絶望が全身を支配し、立っていることさえやっとだった、その時です――。
「――殿下。そしてクラリス様。そこまでになさいませ」
氷を張ったような沈黙を、凛とした声が切り裂きました。
凛とした声の主は一体……!?
まぁ、何となくわかりますよね。
危険なときに味方が来てくれるのはありがたいことです。
明日もお楽しみに!
※お仕事の都合上予約投稿できませんでした。スマーン




