第5話:夜明け前のグラサージュ家
ここから第2章になります。
ここでこれまでの登場人物を紹介しようと思います。
マリアンヌ・フォン・グラサージュ
グラサージュ侯爵令嬢でこの物語の主人公。The悪役令嬢みたいな表情のおかげで周囲から『氷の令嬢』と恐れられている。しかし、表情に出ないだけでとっても感情豊か。ノブレスオブリージュの体現者で困っている人を見ると放っておけない。また、少し感性が独特で、それが原因で誤解を与えてしまうことも……。
エドワード王子
この国の第1王子。学園卒業後は帝王学を学ぶため同敷地内に建てられている大学へ進学予定。マリアンヌとは婚約関係にあったが、突然婚約破棄を言い渡し……!?
クラリス・ド・パーヴェニュー
パーヴェニュー子爵令嬢。マリアンヌから嫌がらせを受けたこと、階段で突き落とされたとエドワード王子へ伝える。明るく天真爛漫な様に見えるが裏の顔はそうでもないっぽい……?
一応主要人物はこんな感じです。
パーティ会場を後にしガタゴトと揺れていた馬車がキィッ……と停まりました。わたくしの家、グラサージュ邸に到着した合図です。
扉が開いた瞬間、玄関で今か今かと帰りを待ち構えていた侍女、セレナの姿が見えました。
「おかえりなさいませ! マリアンヌ様……って、ど、どうされましたか!?」
「セレナ……うぅっ……セレナぁ!」
わたくしの心はついに限界を迎え、セレナの胸の中で幼子のようにワンワンと泣いてしまいました。
セレナやメイドたちが整えてくださった髪型も、お兄様が見繕ってくださったドレスも、めちゃくちゃになるまで。
「わだぐじ……、エドワード様とクラリス様から身も心もだぐざん傷づぎまじだのよぉ゙ぉ゙!」
「マリアンヌ様! 何を仰っているのか殆ど聞き取れませんー!」
その騒ぎを聞きつけた家族が、広間へと一斉に集まってきました。
「何事だ、この騒ぎは!」
「マリアンヌ? 一体どうなさったのですか!?」
「おい、顔色が悪いぞ! とにかく早く部屋に運ばないと……!」
現れたのは、厳格な父、慈愛に満ちた母、そしてわたくしを溺愛してやまないアルフォンスお兄様でした。
——自室へ運ばれ、緊張とコルセットの締め付けから解放されようやく気持ちが落ち着いたわたくしは、セレナが淹れてくれたハーブティーを飲みながら、パーティでの顛末を語りました。
婚約破棄を告げられたこと、良かれと思っていた行動がすべて「悪行」に変換されていたこと。そして、一週間のうちに冤罪を証明しなければならないこと……。
話を聞き終えたお父様とお兄様は、怒りで体を小刻みに震わせていました。
「よく……よく耐えましたね。マリアンヌ……」
母様がわたくしの肩をさすって慰めてくれます。
「エドのことは昔から知ってはいるが……ここまでマリーを貶めるとはな。王族でも流石にこれでは品性が……」
普段は冷静沈着なお兄様も、この呆れ様です。
「というか皆さん、マリアンヌ様が良かれと思ってやったことに対して嫌悪感を示し過ぎなんですよ! マリアンヌ様はこんなに健気なのに……! 皆さん見る目がないんです!」
セレナ……。本当にわたくしのことを慕ってくれているのね。
そんな中、お父様が重々しく口を開きました。
「マリアンヌ。今回の件は到底許されない行為だ。我がグラサージュの誇りにかけて、あの王子と子爵令嬢に無実を知らしめねばな」
お父様は、わたくしが逆立ちしても勝てないほどの凄まじい『笑み』を浮かべました。その冷たすぎる覇気に、お部屋の薔薇の花が少し凍りついたような気がしたような…。
「とにかく!明日から証拠を見つけていかないとな。セレナ、お前は学園でもなるべく近くに居てマリーを守ってくれ」
「かしこまりました!アルフォンス様」
「いいかいマリー、証拠を見つけても決して奴らには見つからないようにするんだよ。あの令嬢……何か危険な感じがする」
お兄様の瞳には、わたくしを守ろうとする強い意志が輝いていました。
家族からの愛、そしてセレナのやる気。
冷え切っていたわたくしの心に、勇気が灯ります。
「お兄様、それにセレナまで……。ありがとうございます。わたくし、必ずや潔白を証明してみせます。――このグラサージュの名に懸けて!」
こうして、わたくしの「運命の一週間」が幕を開けたのです。
というわけで第2章スタートです。
マリアンヌの家族が登場しましたね。
次の日から怒涛の一週間が始まるわけですが、マリアンヌは無事に冤罪を証明できるのでしょうか?
尚、今後の更新ですが、第2章までは毎日更新予定です。
時間はなるべくお昼12時頃を目指します。
無理ならごめんなさいってことで……。




