第37話:マリアンヌの本音
続きです。
話の都合上ビンタからです
二度ビンタしてる訳ではないです。
――バチィィィンッ!!!
右手に、焼けるような衝撃が走りました。
クラリス様の顔が横に飛び、彼女はその場にへたり込みました。
「…………え?」
頬を真っ赤に腫らしたクラリス様が、信じられないものを見るような目でわたくしを見上げます。
わたくしは自分の手が激しく震えているのに気づき、それを胸元でぎゅっと握りしめました。
「……そんな、悲しいこと……仰らないで……っ!」
溢れ出した涙が止まらなくなって頬を伝います。
「貴女は今、陛下の最後の慈悲さえも投げ捨てました! そればかりか、今日まで貴女を信じ、愛し抜こうと決意されたエドワード殿下の想いまで……っ! それらすべてを、ただの『道具』だったと、そう切り捨てるのですか!?」
喉の奥が焼けるように熱い。
でも、言わずにはいられませんでした。
「貴女のしたことは……間違っています! どんなに苦しくても、どんなに羨ましくても……!誰かの真心を……殺していい理由にはならないのです……っ!!」
わたくしの叫びに、講堂は水を打ったような静寂に包まれました。
「マリ……アンヌ……」
エドワード殿下が掠れた声でその名を呼びました。
頬を赤く腫らし泣きじゃくるクラリス様と、その彼女を必死に叱咤するかつての婚約者。その対照的な姿を、殿下はただ呆然と見つめることしかできませんでした。
「……あっ、……ゔぁぁぁああああっ!!」
クラリス様が、顔を覆って泣き崩れました。
それは先ほどまでの激情に任せていた笑いとは違う、自分の犯した罪の重さと、踏みにじってきたものの尊さにようやく気づいてしまった子供のような号泣でした。
陛下は静かに立ち上がり、会場全体を見渡して、短く、けれど確かな重みを持って告げられました
。
「……他には、いないな。では、これにて終わろうか」
その言葉を合図に、兵士たちが二人を促します。
崩れ落ちるように連れて行かれるクラリス様と、最後に一度だけ、わたくしの方を振り返って力なく目を伏せたエドワード殿下。
重厚な扉が閉まり、2人の姿が見えなくなると、わたくしもその場に膝をつきました。
「マリアンヌ様!」
「マリアンヌ様ぁ!」
セレナとクロエ様が駆け寄り、震える背中を抱きしめます。
「ううっ、……ひぐっ、……あ、ああああ……」
講堂に響くのは、わたくしの激しい慟哭。
それは、長く苦しい婚約期間と、今日この日の決断にピリオドを打った証拠なのでした。
その様子を、少し離れた場所から見守る2人の男がいた。
「……次代の子らの手本になるな、グラサージュ」
ハミルトン先生が誇らしげに呟く。
友の言葉に、グラサージュ侯爵はわずかに口角を上げ、確信に満ちた声で返した。
「当たり前だ。……私の子だからな」
これにて決着!
ちゃんとざまぁになったよ!
明日は本編最終回です!




