第34話:真の「断罪」(前半)
続きです
声の正体は……?
「そこまでだ」
重苦しい空気を切り裂くように、講堂の扉が勢いよく開かれました。
現れたのは、国王陛下、わたくしの父であるグラサージュ侯爵、ハミルトン先生。そして……。
「お父さま……っ!?」
クラリス様が悲鳴に近い声を上げました。
その視線の先には、力なく肩を落とし、見る影もなく縮こまっている男性――パーヴェニュー子爵の姿がありました。子爵はクラリス様を見ることもなく、陛下に怯え、膝をガタガタと震わせています。
陛下たちの放つ圧倒的な威圧感に、それまで騒がしかった生徒たちが一瞬で静まり返りました。
「折角の卒業式が……。これではやり直しですな。……陛下、グラサージュ、ここからどうする?」
ハミルトン先生が陛下とお父様に確認を取っています。……ってうん?今、ハミルトン先生お父様のこと呼び捨てにしていましたわね……。
陛下もそれに対して不快な顔一つせず、「当事者以外は外へ出せ」と事務的に応じていらっしゃいます。
(どういう関係なのかしら……?いえ、今はそれどころではありませんわね)
ハミルトン先生とお父様、そして陛下。
冗談を言い合えるほどに気心の知れた、かつての「学友」あるいは「悪友」のような空気感。
そんな最強の布陣を前に、エドワード殿下の顔からは血の気が引き、クラリス様は言葉を失って震えていました。
「ゴホン。……では、この件に直接関わっているエドワード殿下、わが娘マリアンヌ、パーヴェニュー子爵令嬢殿、クロエ男爵令嬢、そしてセレナ。以上の者以外は、ハミルトン先生の指示に従い今すぐ講堂から退出するように」
お父様のその声は、広大な講堂の隅々まで、拒絶を許さぬ響きを持って届きました。
混乱する生徒たちが先生に促されて去っていく中、重厚な扉が閉まる音がやけに大きく響きます。
(昨日の笑みは初めからこうすることを考えていらしたからなのね……お父様……)
昨夜、わたくしたちに見せたお父様の不敵な笑み。
それは陛下を動かしてこの場を整えるという、静かな宣戦布告だったのでしょう。
広く、がらんとした講堂に残されたのは、審判を下す大人たちと、罪を暴かれた若者たちだけ。
(……いよいよ、始まるのね)
張り詰めた静寂の中、壇上に立つ陛下が、ゆっくりと椅子に腰を下ろしました。
「さて……まずは事の真相をグラサージュ侯爵令嬢、デュラン男爵令嬢、グラサージュ侯爵令嬢のご友人であるセレナ殿に話してもらおうかな」
陛下は芯が通った、それでいて慈しみを感じさせるような声でわたくしたちを呼びました。
その眼差しは、決してわたくしたちを疑うものではなく、「案ずるな、すべてを話しなさい」と背中を押してくださるような温かさを湛えています。
わたくしは深く一礼し、隣に立つクロエ様とセレナと視線を交わしました。
緊張で震えていた2人の肩が、陛下の言葉でわずかに落ち着きを取り戻すのが分かります。
「……畏まりました、陛下。わたくし、マリアンヌ・フォン・グラサージュがご説明申し上げます」
あの日わたくしがクラリス様を突き落としたとされる事件の真相……クロエ様がクラリス様に脅されていたこと、クラリス様が自ら口にした「真実」の矛盾……。
感情を排し、事実だけを1つひとつ、積み上げるように話し始めました。
陛下はわたくしの話に静かに耳を傾けながら、時折クロエ様やセレナへ「……事実かな?」と、穏やかに、しかし逃げを許さぬ口調で尋ねられました。
「はい……。間違い、ございません」
2人の震えながらも芯のある証言が、わたくしの話を補強していく。その度に、講堂内の空気は一段、また一段と冷え込んでいくのを感じました。
ここでちょっと補足
マリアンヌのお父様が当事者を呼ぶ順番は爵位の順番です。この中ではセレナは一般市民や友人だから一番最後に呼ばれてます。
また、クラリスを呼ぶときだけ「パーヴェニュー子爵令嬢殿」と呼んでいましたね。
名前ではなく苗字、しかも殿までつけてるのでお父様は激おこです。(そのあとのクロエが名前呼びだから)
補足終わり。
明日もお楽しみに!
※本日20時、ちょっとした短編を投稿します!ぜひ「お付き合い」くださいね




