第33話:式の終わりは唐突に
証拠を見せるマリアンヌ様
だけどその証拠は燃えていないか……?
「……こちらが、その証拠です」
匂いの発生源を特定したわたくしは、鞄の中からハンカチに包まれた焼け焦げた指示書を掲げました。
それは、昨日わたくしたちの目の前でクラリス様が焼却炉に入れた事件の決定的な証拠。紙の殆どが燃え文字は読めず、辛うじて端が残っただけの『燃えカス』。
「えっ……これが証拠なの……?」
「これじゃあ文字が読めないじゃないか……」
講堂内に「まるで期待外れだ」と言わんばかりに困惑と疑念の声が聞こえてきます。セレナもクロエ様も不安そうな表情を見せていました。
一方で壇上のクラリス様の瞳だけがこれ見よがしにパッと輝き、彼女の唇が勝ち誇ったように吊り上がります。
「……っ、ふふっ! あはははは! おかしいわ、おかしいですわマリアンヌ様ぁ! それが証拠? そんな文字も読めないようなゴミが、証拠だと仰るの!?」
クラリス様は、まるで喜劇でも見ているかのように肩を揺らして笑い始めました。
その嘲笑に釣られるように、エドワード殿下も安堵の溜息を吐き、わたくしを冷ややかな目で見据えます。
「見損なったぞ、マリアンヌ。そんな焼け残りの紙切れでクラリスを陥れようとするなど、あまりに浅はかだ。そんなものは証拠にも――」
「だってこれは『偽の指示書』ですわ、エドワード様!あそこにいる男爵令嬢がマリアンヌ様に渡してわたしを貶めようとしていたの!だからわたしは昨日焼却炉で……!……!?」
その瞬間、クラリス様の勝ち誇った表情は一気に曇りはじめ、手で口を覆い隠します。
わたくしはこの機を逃さずにクラリス様へ問いかけます。
「……あら。そうでしたの。……でもねクラリス様。貴女、昨日は『体調が優れない』とのことで1日中お休みしていませんでしたこと?」
「……ぐっ……!?」
クラリス様から苦悶に満ちた声が響きます。
「それと……不思議ですわね。どうしてわたくしが今掲げているこの『燃えカス』を見た瞬間に、『偽の指示書』と言い切れるのかしら? ……わたくし、『証拠』としか皆さまにお伝えしていないのに……。本物の内容を、隅々まで熟知していなければ、そんな断言は不可能ですわよね?」
一歩、また一歩と後退りするクラリス様。その様子はおとぎ話に出てくる魔王に追い詰められた姫のよう。
「そうそう、昨日わたくしのロッカーや鞄が何者かに荒らされていましたの。他の方は卒業式のリハーサルに居たのに……。不思議なことに、わたくしの鞄から、普段は決してつけない『甘いお花の匂い』がいたしますのよ。……ええ、今この場でも貴女から漂っている、その匂いと同じ。……ねえ、どうしてかしら?」
「…………っ!!」
わたくしがパチンと扇を閉じると、クラリス様は言葉を失いまるで空気が足りないかのように喘いでいました。
その隣で、エドワード殿下の顔もまた、土気色に染まっています。
彼も気づいているはずです。わたくしの言葉に、一分の隙もないことに。
ですが、殿下は震える手でクラリス様の肩を抱き寄せました。
それは、自らが選んだ『真実の愛』という幻想にしがみつく、あまりにも無力で、惨めな足掻き。
周りの生徒もシン……と静かになり、重苦しい空気が講堂内を満たします。
誰もが、この後に続く「何か」を待っていた、その時。
「そこまでだ」
外側から扉が開かれると共に、重厚な、けれど鋭利な刃物のような声が講堂内に響き渡り、停滞していた空気を一瞬で切り裂いたのです。
さぁついに追い詰めましたね!
匂いの発生源はマリアンヌの鞄。だから家に帰ってからでも匂っていたんですね。
気になる引きで終わりましたが誰が来たのでしょうか……?
明日もお楽しみに!
※R8.3.11現在、累計PVが2,500を突破しました!ありがとうございます!
本作は本編自体は全34話(外伝含まず)でしたが、投稿用に区切っている話もあるので全40話くらいになる予定です。
残り5話になりましたら後書きでお知らせいたしますね!
本編+本編後の外伝1話で完結予定となります!
最終話までどうかお付き合い頂けると幸いです。




