第25話:地獄の始まり
今日から6日目です!
おや、なんかタイトルが穏やかじゃない……?
猶予6日目。
本日は土の曜日。本来であれば土の曜日と日の曜日は学園はお休みですが、明日の卒業式に向けてリハーサルを行うとのことで登校しています。
リハーサルはつつがなく進み、午後からはクロエ様も誘って王都で人気のパティスリーでお茶をしようかしら……と考えながらロッカールームに向かっている途中、事件が起こったのです。
「キャーー!!」
ロッカールームから悲鳴が聞こえ、慌てて向かうと、そこには無残な光景が広がっていました。
わたくしのロッカーの扉は歪な形にこじ開けられ、大切に扱っていた教科書や小物が、まるでゴミのように床にぶちまけられています。
「マリアンヌ様! これは……っ」
駆け寄ったセレナが、わたくしを庇うようにして周囲を警戒します。
わたくしは、震える手で床に転がった鞄を拾い上げました。
(……そんな、まさか。ここは伝統ある学び舎ですのよ? 誰かの荷物を盗むなんて、そんな……そんな恥知らずなこと……)
自分に言い聞かせながら、隠しポケットに指を滑り込ませます。
ですが、指先に伝わってきたのは、昨日まで感じていた確かな紙の重みではなく、冷たい空虚さだけでした。
「……ない。……ないわ、セレナ。指示書が、どこにも!」
その時、わたくしの背中を、ゾッとするような冷たい視線が貫きました。
入り口の方で、人混みに紛れるようにしてこちらを覗き、口元を扇で隠しながら立ち去る栗毛の女性。
(クラリス様……!)
「セレナ! 追いますよ!!」
「はい!」
ロッカールームに集まってくる人混みをかき分け廊下を走るわたくしたちの前に、驚いた顔をしたクロエ様の姿が見えました。
「クロエ様! ちょうど良かったわ。クラリス様を見かけませんでしたか!?」
「あ、あの……わたし、見ました! クラリス様が、ロッカールームから出ていって裏庭の方へ走っていくのを……!」
クロエ様の声は震えていましたが、その瞳には逃げない決意が宿っていました。
「わたしも一緒に行きます!」
「ええ、助かりますわ。参りましょう!」
余計な言葉はいりませんでした。わたくしたち3人は、人影のまばらな渡り廊下を駆け抜け、裏庭へ通ずる道へと足を踏み入れました。
冷たい静寂が体を突き抜けてきます。
裏庭を抜けた先は赤錆びた焼却炉でした。
そこには手にした紙束を愛おしそうに眺めるクラリス様の背中が見えました。
「……見つけましたわ、クラリス様」
わたくしの静かな声が、薄暗くなり始めた空に響きました。
く、クラリスー!
さぁてクライマックスに向けてここからとんでも展開が待ち受けております。
どうなるのかお楽しみに!
本日更新予定の「万物の聴手」もよろしくお願いいたします!




