第23話:指示書のおもみ
続きです
とりあえず真相はわかったけれども……?
「さて……書き手はわかりましたが、この指示書は誰が持っていましょうか」
セレナの冷静な問いに、サロンの空気は少しだけ引き締まりました。
テーブルの上には、先程までわたくしたちが囲んでいた指示書が置かれたままです。
「やっぱりわたしが持っていた方がいいと思います!だって、これをマリアンヌ様が持っていたら……!」
「ダメですわ、クロエ様」
食い気味に名乗り出たクロエ様を、わたくしは優しく、けれど断固とした口調で制しました。
「もしこれを貴女がまだ持っていることがクラリス様に知られたら、どんな目に遭わされるか分かりません。……それに、貴女にはまだ、大切な『役割』がありますもの」
「わたしの、役割……?」
クロエ様は不思議そうに首を傾げながら尋ねてきます。
「ええ。もしクラリス様に指示書のことを聞かれたら、『処分した』と嘘をついていただきたいのです。……嘘をつくことはお辛いでしょうけれど、わたくしがこれを大切に保管いたします。……お願い、できるかしら?」
「……わかりました。マリアンヌ様がそう仰るなら、わたし、頑張ります!」
「では決まりですね。マリアンヌ様、責任を持って卒業式までお持ちくださいね?」
セレナが手際よく指示書を畳み、わたくしの鞄の奥底――裏地に隠された小さなポケットへと差し入れました。
「んもう、セレナは心配性ね。流石に、他人の鞄の中身を勝手に探るような「恥知らず」は、この学園にはいらっしゃいませんもの」
セレナからは「もう少し用心すべきです!」と突っ込まれましたが、穏やかな時間がサロンに戻ってきました。
わたくしたちは1つめの講義の時間が終わるまで談笑をしたのち、お互いの講義室に戻ったのです。
――昼休みも終わりに近くなった頃、渡り廊下の向こう、人影のまばらな柱の陰に、見覚えのある黒髪と栗毛の女性の姿が見えました。
(あれは……クロエ様とクラリス様!?)
わたくしはとっさに近くの柱の陰に身を潜めました。
視線の先では、クラリス様が扇子を口元に当てクロエ様を見下ろし、ご友人たちはまるで獲物を囲む蛇のように背後に控えています。
遠目からでも背中は丸みを帯び、肩は小刻みに震えているのがわかります。
クラリス様は何かを問い詰めるように、閉じた扇の先でクロエ様の胸元をトントンと無遠慮に叩いていました。
……すると、クロエ様は。
震えながらも、ゆっくりと、けれど確かな動作で首を縦に振ったのです。
「……はい、昨日の夜に……」
風に乗って、微かにそんな声が聞こえた気がしました。
クラリス様は一瞬、拍子抜けしたような顔を見せましたが、すぐにパッと扇を広げ満面の笑みを浮かばせながら優雅にその場を離れたのです!
(クロエ様……!嘘を貫き通したのね……!)
独り残されたクロエ様が、壁に手をついて、崩れ落ちるように安堵の息を吐くのが見えました。
「クロエ様の勇気にわたくしも応えなくてはね……!」
わたくしは鞄の底に隠している指示書の重みを感じながら午後の講義に臨むのでした。
指示書編、完!
でもまだもうちょっとだけ続くんじゃ
今日も予約してなかったよコンチクショー!
すまん……すまん……
読切短編
「最強の裏ボス(予定)が、Luck1のせいで地域密着型の超ホワイトレジャー施設を経営する羽目になった件」
を昨日投稿しています。
また、18時には
「万物の聴手と異世界のガラクタ〜魔法の針で想いを繋げる再構築師〜」
を更新予定です!
明日はちゃんと予約投稿できるようにします!
※R8.3.1
1日200PV達成しました!読んでいただきありがとうございます!




