第20話:あの日の真実
続きです。
クロエから明かされる真実とは一体……?
「……まずは、わたしとクラリス様との関係を語らなくてはいけません。……わたしの家は最近爵位を授かったばかりです。当然、学園の中でも下に見られています。……入学直後だったでしょうか。わたしはクラリス様に目をつけられてしまったのです。……わたしのような男爵家の娘が、クラリス様に逆らうことなどできませんでした。……いえ、わたしだけではありません。他の令嬢の方々も、皆、クラリス様の顔色を窺うばかりでした」
クロエ様は自嘲気味に肩を落としました。
「同じ爵位であっても、家柄や歴史が違えば発言力は天と地ほどの差がありますものね……。ましてや、クロエ様は新興の男爵家。どれほど肩身の狭い思いをなさっていたか……」
わたくしの言葉に、クロエ様はポロポロと涙を零しました。これまで誰にも言えなかった恐怖が、溢れ出したのでしょう……。
「クラリス様は……マリアンヌ様を憎んでおいででした。……いえ、マリアンヌ様が持つ『高潔さ』や『お人好しな性質』そのものを、自分を馬鹿にしていると感じていたようです。だから、クラリス様は常に仰っていました。『あの女の余裕を、絶望に変えてやりたい』と」
「なっ……!!」
セレナが驚いて声を上げます。
それからクロエ様はわたくしの悪行とされてきた行いを数例あげてきました。
その中には3日前の図書室での一件も含まれていました。
(……あの件はわたくしの表情が原因で気絶させてしまっただけなのに……酷い言われようね)
「……でも、どれほど噂を流してもマリアンヌ様と殿下は婚約を破棄なさらなかった。だから、クラリス様は最終手段に出たのです」
「……最終手段?……ってまさか」
わたくしは考えたくありませんでした。
ですが、クロエ様から残酷なまでの真実が語られるのです。
『わたしが殺されそうになればいいのよ!あの女はバカがつくほどお人好しだから、目の前で誰かが転べば必ず助けようとして手を伸ばす。その瞬間を狙って、自分から階段の下に飛べば突き落とされたように見えるわ!』
「……っ!」
わたくしは息を呑みました。
あの日、無我夢中で伸ばしたわたくしの手。
「危ない!」と叫んだわたくしの声。
それら全てが、あの方が描いた「犯罪者に仕立て上げるための舞台装置」だったなんて。
(……だから、あの時のクラリス様は、笑っていたのね)
脳裏に、あの日階段から落ちていく彼女の顔がフラッシュバックします。
あれは……計画が成功したことを確信した、邪悪な歓喜の表情……。
「……クラリス様は、マリアンヌ様がご自分を助けようと身を乗り出すことを確信して笑っておいででした。……そして、この『指示書』の通りに、わたしたちが叫ぶのを待っていたのです」
クロエ様は、震える手でテーブルに置かれた茶封筒をわたくしの方へと押しやりました。
「……あの日、何が起きたのか。どう動き、何をさせたのか……。この中に、すべて記されています」
わたくしとセレナは、吸い寄せられるようにその封筒を見つめました。
これを手に取れば、もう後戻りはできません。
恐怖や怒りで震える指先の震えが止まりませんでしたが、もう片方の手で何とか抑え込みます。
わたくしは覚悟を決め、封筒にそっと手を伸ばしました――。
次回はクロエが大切に持っていた指示書の内容が判明します。
マリアンヌはどう反応するのでしょうか……?
※R8年2月27日現在、累計PV数1,500を突破いたしました!
皆さんのおかげです。ありがとうございます!
※2月26日から始まった「春のチャレンジ」に合わせ、18:00更新で新連載をスタートしました。
「万物の聴手と異世界のガラクタ〜魔力の糸で想いを繋げる再構築師〜」
という作品です。
文字数多いのでちょっぴり敷居は高くなりましたが、こちらも是非お読みいただけたら幸いです。




