第13話:氷の魔女、動く
続きです。
あれ?証拠集めは……?
でも、マリアンヌ様は優しいからね。
「……何度も言わせないで!その紙を早く処分しなさいと言っているの!」
「っ……!で、でも……」
「黙りなさい!アンタは所詮男爵令嬢なんだから、素直に大人しくアタシたちに従っていればいいのよ」
食器が触れ合う賑やかな音の隙間から、ひどく冷淡な声が聞こえてきました。
視線を向けると、食堂の隅で一人の少女が数人に囲まれて立ち尽くしています。
(まぁ……寄って集って問い詰めるなんて……って、あの方たちは確かクラリス様のご友人の方々ですわよね……?)
囲まれているのは下級生と覚しき小柄な少女でした。丁寧に編まれた黒髪の三つ編みは、震えに合わせて頼りなく揺れています。
もともと猫背気味なのでしょうか。数人に詰め寄られている彼女は今にも消えてしまいそうなほど身を丸めていました。
その様子はまるで、以前本で読んだ東の国で親しまれているという「おだんご」なる食べ物のよう。
顔の半分を覆う大きな眼鏡は涙で曇り、その奥にある瞳からは、今にも大粒の雫がこぼれ落ちそうです。
余程大切な物なのでしょう。胸元で必死に茶封筒を抱きしめており、細い肩の震えが遠目からでもはっきりと分かりました。
わたくしたちが気づくのと同時に、周囲の生徒たちも、食堂の隅で起きている不穏な空気に気づいたようでした。
けれど、誰もが食事の手を止めることなく、あるいは小声で「ありゃ関わらないほうがいい」「所詮は男爵令嬢だろう?」と囁き合い、視線を逸らしています。
身分を理由にした無関心。……そんな冷え切った空気が食堂を支配していました。
「セレナ、あの方たちはクラリス様のご友人ですわよね……? なぜあのような形で下級生を追い詰めているのかしら……?」
わたくしが声を潜めて尋ねると、セレナは無表情ながらも、その瞳に冷ややかな光を宿して頷きました。
「わかりません……が、見ていて気持ちの良いものではありませんね。あのやり方は、少々度を越しているようですし」
立場をひけらかして弱者を追い詰め、周囲はそれを「仕方ない」と黙殺する……。それは、わたくしが最も嫌う、誇りなき貴族たちの振る舞い。
冤罪を晴らすことも大切ですけれど、今、目の前で震えているあの方を放っておくことなど、グラサージュ家の者として断じて許せません。
「セレナも同じ考えでよかったわ。……行きますわよ」
わたくしは手にしていたカトラリーを静かに置き愛用の扇を手に取り立ち上がると、周囲の「見て見ぬふり」をしていた生徒たちが一斉に手を止め、氷水を浴びせられたように硬直しました。
(あ、あれっ!?なぜ皆さま一斉に手を止めてわたくしへ視線を向けるの!?目が、目が怖いですわ!)
周りからの視線を集めたことでわたくしの心臓は早鐘を打ち、膝がガクガクと震えそうになりました。
怖いのはわかっている。――けれど。
(……今、わたくしが助けなくては、あの方の心が折れてしまいますわ!)
わたくしは震えそうになる足を叱咤し、周囲を威圧するほど凛とした足取りで、彼女たちの元へと歩み出したのです。
さてさてクラリス嬢の名前が出てきましたね。
明日の更新で証拠集めの進展があるのか!?
R8年2月15日現在、累計700pv超え達成しました!
皆様の応援あってこそです。ありがたいです!
これからどんどん面白くなる(と思っている)ので、よろしくお願いいたします!




