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氷の令嬢は超がつくほどお人好し 〜婚約破棄から始まる本当のわたくし〜 【毎日お昼12時更新!】  作者: 境知屋
第3章 証拠探しのつもりが、なぜか恐怖の救世主!?

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第11話:中庭の怪鳥……?

マリアンヌは今日は証拠を見つけられるのか!?


今日もサクサク進みます

猶予3日目。


わたくしとセレナは事件の現場となった西階段の踊り場に立っていました。


「マリアンヌ様。私が今からここを転げ落ちますので、クラリス様が仰ったマリアンヌ様になりきり全力で私を嘲笑ってください!そうすれば当時の再現が――」

「やりませんわよ! セレナ、あなたは少し落ち着きなさいな」


 大真面目に物騒な提案をしてくる侍女を宥めながら、わたくしは周囲を確認します。


 鋭すぎる眼光のせいか、階段の角度や手すりの傷を凝視するわたくしの姿は、周囲から見れば『獲物を探す暗殺者』そのものだったでしょう。けれど内心は、「どこかに証拠が落ちていませんかしら……」と必死なのです。


「……ふぅっ。隅々まで探しましたが証拠らしきものは見つかりませんでしたね。ですがマリアンヌ様、お互いが怪我なく落ちて且つマリアンヌ様が突き落としたかのように見えるような体勢がわかっただけでも大収穫ですよ!」


——あのあとセレナが転げ落ちるようなことはしなかったけれど、彼女なりの緻密な計算によれば、わたくしが物理的にクラリス様を突き落としたとするならば、あまりにも不自然な体勢になることが判明しました。


あのときのわたくしは一切怪我をせず、クラリス様も翌日から普通に歩けていたので、そこがどうしてなのか頭の中で引っかかっていたのです。


 ですが、問題はわたくしたちが怪我していないことを証言してくれる方がいないこと。階段の近くで目撃者を探しましたが、あの日、あの場所にいたはずの生徒たちは、皆一様に口を閉ざすか、あるいはクラリス様のご友人たちの言葉に同調しているのです。


「……あの方たちの『証言』が、いかに不自然か。それを突きつける材料が必要だわ」


 わたくしが険しい顔でそう呟いた、その時でした。


「誰か! 誰か来て! 危ないわ!」


 中庭から響いた悲鳴に、わたくしとセレナは顔を見合わせ、即座に駆け出しました。

 制服のスカートを翻し、最短距離で中庭へ飛び出すと、そこには一本の大きな木を見上げて立ち尽くす数人の女子生徒の姿がありました。


 視線を追えば、高い木の上。折れそうなほど細い枝の先に、一匹の小さな子猫がしがみついて震えていました。


(放っておけるわけがありませんわ!)


「セレナ、肩を!」

「心得ました!」


 わたくしは阿吽の呼吸で差し出されたセレナの肩をステップにし、一気に木の幹へと飛び移りました。

 淑女教育で叩き込まれた体幹と、バレエのお稽古で培った跳躍力。それらを全投入して枝を這い進み、なんとか子猫を抱き寄せたところで――アクシデントは起きました。


「っ……リボンが……」


 降りようとした拍子に、制服のリボンが複雑に枝に絡まってしまったのです。

 片手で猫を抱え、もう片方の手で枝を解こうとしますが、焦れば焦るほど指先に力が入り、顔は険しさを増していきます。


(……っ取れない!しかも顔がどんどん引きつっていくのが自分でもわかる……!多分今のわたくしの顔、お父様よりも恐ろしいかも……!というかどうしましょう、このまま一生ここで猫と暮らすことになったら……!あばばばば……!)


 内面のパニックとは裏腹に、必死に枝を睨みつけるわたくしの形相は、周りからみればまさに『獲物を定める人食い鳥』。



 ようやくリボンを引きちぎるようにして地面へ降り立った頃には、わたくしは疲労困憊で言葉も出ませんでした。


「…………」


 無言のまま、懐から震える子猫を出し、芝生へ。


(……さあ、早くママのところへお帰りなさい)


 一撫でだけして、わたくしは汚れた制服を恥じるように、足早にその場を去りました。




 嵐が去った後の中庭で、生徒たちは震えながら立ち尽くしていた。


「……信じられない。あんなに怖い顔で、木をなぎ倒す勢いだったわ……」

「今にも、猫を一口で食べてしまいそうな目つきだったもの……」


 恐怖に呑まれる彼女たちの中で、ただ1人、異質な空気を纏った女子生徒がいた。そうセレナだ。

 彼女は、主人が木に登っている間も、降りてきて無言で去った後も、ただの一度も動揺を見せなかったのである。


「……怖くないの? あなたの主人は、あんなに恐ろしい方なのに」


 1人の生徒が、震える声で尋ねる。鍛え抜かれた騎士候補生ですら威圧される『氷の令嬢』の姿を、セレナだけは微笑ましそうに眺めていたのだから。

 すると、セレナは腕を組んだまま、主人が去った方向を見つめて不敵に――いや、誇らしげに口角を上げた。


「恐ろしい? 何をおっしゃるのです!マリアンヌ様は守るべき者のためにしかその力を使われません。あんなにも気高く、お優しい背中が、貴方様方には恐怖に見えるのですか?」


 その言葉に、生徒たちは言葉を失った。

主人が泥だらけになって猫を助けたことも、リボンを引きちぎってまで救出を優先したことも、彼女にとっては「当然の慈悲」であると。


 地面には、マリアンヌが残していった「千切れた制服のリボン」が落ちていた。

 

「……本当に、猫を助けるためだけだったのかしら」


 揺るぎない信頼を体現するセレナの姿を見て、生徒たちの心に芽生えた『氷の令嬢』への恐怖は、少しずつ、形を変え始めたのである。



一週間の猶予:残り4日

ちなみにですが猫ちゃんの柄はサバトラです。

にゃーん。


マリアンヌは犬よりも猫派です。

にゃーん。


明日からはちょっぴりシリアスになります。


そういや、王子とクラリスどうした?ってなると思いますが、ちゃんと補完予定なのでご安心を。

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