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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
990/1056

真名

《サイド:深海優奈》



…い、いやっ!!



「いやあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!」



…栗原さんが。



栗原さんが…死んだ?



その瞬間を見届けてしまったことで、

大声で泣き叫んでしまいました。



「栗原さん…っ!?栗原さんっ!!」



必死に呼び掛けました。


ですが栗原さんはもう2度と目覚めません。



私のせいで…死んでしまったのです。



「いや…っ。いやああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」



栗原さんの胸の上で泣き崩れて。


無意識のうちに発動していた回復魔術で治療を始めていたのですが。


私の魔術では栗原さんの怪我を治すことはできません。



自分自身の怪我ならある程度は何とかできるのですが、

他の人の治療は思うように行きません。



どうすればいいのかが分からない怪我を治すことはできないからです。



そんな都合のいい魔術なんてありません。



魔術師でありながら、

まともに魔術が使えない。



それが私です。



「もっとちゃんと勉強していたらっ!」



今更後悔しても意味がないとしても。


それでも。


どうしても考えてしまうのです。



「もっと…もっと沢山練習していたらっ!」



栗原さんが死んでしまう前に治療が出来ていたかもしれないんです。



「ごめん…なさいっ。」



何度も何度も謝っていると。



「…別れは済んだか?」



背後から誰かが近付いてきました。



………。



話しかけてきたのは陰陽師の人達のようです。



栗原さんを殺した人達です。



すでに地震が止まっていて。


私が栗原さんに意識を向けている間に、

すぐ側にまで接近していたようでした。



「どうして…!!どうしてこんなひどいことが出来るんですか!?」


「ひどい…か。」



泣き叫びながら問いかける私に、

陰陽師の一人が冷たい視線を向けながら答えてくれました。



「これが残酷だと思うのか?ならば言わせてもらうが…全く『同じこと』を、お前もしたはずだ。」



…っ!?



坦々と告げられた言葉に対して、

私は何も反論できませんでした。



事実として。



そのことが原因で意識を失っていたからです。



だから何も言い返せませんでした。



栗原さんの受けた苦しみは、

私が与えた苦しみと同じだったから。


だから何も反論出来なかったのです。



「私がしたから…だから、栗原さんにも同じことをしたんですか?」


「ああ、そうだ。そしてお前にも苦しんでから死んでもらいたい所だが…まだ幼いお前をいたぶり殺しても嫌な思いを残すだけだからな。せめてもの情けとして、一思いに死なせてやろう。」



殺意を護符に込めた陰陽師達が一斉に構えています。



「余計な抵抗をしなければすぐに死ねる。このまま大人しく消え去れ。」



警告した次の瞬間に、

陰陽師の手から護符が放たれました。



「「「急々如律令!!!」」」



私を襲う8枚の護符。



それらを眺めながら、

私は立ち向かう覚悟を決めました。



「いえ…私は死にません!!」



栗原さんに守っていただいたのです。



ここで死ぬことだけは絶対に出来ません!



「今はまだ死ぬわけにはいかないんです!」



栗原さんの死をきっかけとして、

私は私自身の心と向き合う覚悟を決めしました。



「もう逃げません!誰かが傷付くことを恐れて、他の誰かを失うのはもう嫌なんですっ!!」



必死に叫ぶ私に8枚の護符が迫ります。



「「「閻魔煉獄!!!」」」



これが栗原さんを殺した炎でしょうか?



…もしもそうだとしたら。



この術にだけは屈するわけにはいきません。



栗原さんの無念は、

この術を凌ぐことで晴らされるからです!



「私は逃げませんっ!!」



必死に叫ぶ私の体を膨大な炎が包み込みました。



激しく燃え上がる炎。



その中心で。



私は恐れることなく、

陰陽師達を睨みつけました。



「無駄です!」


「ば、馬鹿なっ!!」



はっきりと告げる私の声を聞いた瞬間に、

陰陽師達は戸惑いの声を上げていました。



もちろんその理由は1つしかありません。



私が炎を『吸収』したからです。



『ブワッ…!!』と、

一瞬だけ燃え広がったあとで一瞬にして消え去る炎。



あとに残るのは火傷どころか傷一つない私自身だけです。



「私はもう…逃げません!!」



陰陽師達を睨みつけながら、

ゆっくりと立ち上がりました。



…私も全力で戦います!



もう命の犠牲を恐れません。


もう戦いから目を背けることは出来ないのです。



「これが…これが私の力です!!」



宣言しながらルーンを発動させました。



…って?


…あれ?



何故か以前とは雰囲気が違っているような気がします。



どこが…ということはないのですが。



なんとなく何かが違うような…そんな気がしたんです。



…でも今は。



違いを考えている時間はありません。



私は私の役目を果たさなければいけないからです。



…もう逃げません。



両手に生み出した弓を構えました。



「私の力は吸収です。そして私のルーンの名前は…」



かつて第1検定試験会場で理沙先輩が付けてくれた名前は『ヴァンガード』でした。



…ですが。



それは仮名です。



本当の名前は別にあったからです。



そしてその名前は心の中ですぐに思い浮かび上がりました。



ただ弓を構えただけで、

真名まな』に気付けたんです。



「本当の名前は…」



これ以外には考えられません。



私の力。


私の心。


私の魂の形。



「このルーンが私の想いそのものです!!」



私の手で輝くルーン。



…その名前は。



「『ソウルイーター』。それが私のルーンの名前です!」



総魔さんのルーンと似て非なる存在。



それが私のルーンの名前です。



陰陽師に対して弓を構えた私は、

すでにルーンの使い方を理解していました。



わざわざ確かめなくても分かるからです。



…私自身の力だから。


…私そのものとも言える武器だから。



説明なんて必要ありません。



ただ、感じるだけで分かるんです。



ルーン『ソウルイーター』



これは今までのような魔力を奪うだけの力ではありません。



本来の力は『吸魔』ではないからです。



総魔さんも吸魔は仮の名前だと言っていました。



…私が魔力を奪っていたから。



傷つくことを恐れて魔術を吸収していたから。


だから本当の特性に気づくことができなかったんです。



…ですが。



ずっと目をそらしていた力こそが、

私に隠されていた本当の特性だったのです。



人を傷付けることを恐れて、

誰も傷付けないことを願っていた私が、

自ら押さえ込んでいた吸収という力の本質。



それこそが。


今まで曖昧あいまいだった私の力の秘密でした。



…だから私はもう恐れません。



人を傷つけることを。


誰かを殺めることを。



…決して恐れません!



「私は『命』と向き合います。もう逃げません。私は…いえ、私も戦います!!」



心を解放した私のルーンは真の輝きを放ちました。



煌々(こうこう)と光り輝く『ソウルイーター』



その光は暗くもあって、明るくもあります。



『混沌』と『秩序』というのでしょうか?



まるで両方の特性を合わせ持つかのような不思議な光です。



私はまだ噂でしか知りませんけれど。



きっとこの光こそが総魔さんのソウルイーターと同一の輝きなのだと思います。



「私の力は…私の本当の力は『全てを奪う』力です!」



宣言して放つ光の矢。


放たれた光は陰陽師の体に突き刺さり。



『霊力』


『心』


『生命』


『魂』



何もかもを奪い取りました。


そして同時に。


吸収の能力が発動して、

奪い取った命さえも魔力に変換しました。



…これが真の吸収です。



「………。」



光の矢を受けた陰陽師は声もなく倒れました。



文字通りの即死です。



声も出せないまま。


ただただ表情を恐怖で歪めながら。


全てを奪われて力尽きたのです。



栗原さんを殺した8人の陰陽師の一人が、

たった一撃で死亡したんです。



「「「「「なっ!?」」」」」



予想外の展開に驚く陰陽師達に向けて、

再び弓を引きました。



「私はもう…傷付ける事を恐れません。」



宣言してから光の矢を放ちます。



『ビュンッ!!!』と、

風を切りながら飛び出したのは一本の矢でした。



…ですが。



光の矢は即座に拡散して、

全ての陰陽師達の体を貫きました。



そうして光の矢を受けた瞬間に。


最後まで残っていた7人の陰陽師も。



命を奪われて力尽きました。



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