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異国の地で
《サイド:栗原徹》
「栗原さんっ!?」
僕を呼ぶ深海さんの声が聞こえます。
もはや返事を返すだけの力はありませんが、
それでも僕を心配してくれる声は届いていたのです。
…だから、きっと。
僕の口元に耳を近付ける深海さんは、
おそらく僕の最期の言葉を聞き取ったのではないでしょうか?
すでにまともな思考能力さえなくて、
ただ死を待つだけの僕ですが。
それでも僕は。
この命が尽き果てる最後の瞬間まで、
大切な人を想い続けていたいと願っていたのです。
「…愛…里…ちゃん…。今…から…迎えに…行きます…ね。」
…それが。
それが僕の最期の言葉でしょうか。
家族以外でただ一人愛した女性。
僕は最期まで琴平愛里ちゃんを想いながら、
異国の地で生涯を終えました。




